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世界球果図鑑[その13]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その13]

2019/10/23

栄養塩類の少ない大地でもマツの仲間は地中の菌類と共生関係を持ち生育することを前に述べました。アカマツは、皆さんが大好きなマツタケと菌根を作り、共生関係を持つと樹勢が強くなり、長寿になることが知られています。

No.27 アカマツPinus densiflora(ピヌス デンシフローラ)マツ科マツ属。種形容語のdensifloraは、densus(密集した)と flora(花)の合成語です。アカマツの幹は直線的でよく伸び、高さは30mほどに成長します。樹冠は不規則に開いた傘型で樹皮が赤くなります。

アカマツは、クロマツと同じ2針葉であり複維管束亜属になります。葉は細く柔軟であり10cmほどの長さがあります。球果は2年を経て成熟し枝上で開き1.5cmほどの羽が付いた小さな種子を飛ばします。

写真の下段はアカマツの球果です。クロマツと形状の区別は難しいのですが、上段のクロマツに比べ一回りも二回りも小さい球果です。長さは3.5~5cmで卵形をしています。

アカマツは、世界で最も広範囲に分布するのはヨーロッパアカマツPinus sylvestris(ピヌス シルベストリス)の近縁種とされていますが、本種は日本が分布域の中心であり、東アジアの朝鮮半島、中国などに原生します。このマツは通常、山地の尾根筋、痩せ地など乾燥している場所を好み生息しています。

アカマツは樹姿や樹皮がきれいなので、世界中で庭園樹として利用されます。そして、より観賞価値の高い株が選抜された品種が幾つか固定されています。

No.28 タギョウショウ(多行松)Pinus densiflora f. umbraculifera(ピヌス デンシフローラ アンブラキュリフェラ)マツ科マツ属。品種名のumbraculiferaは、頭が平らになり傘状になることにちなみます。タギョウショウは、株元で分枝し枝が密に出る矮性品種です。

No.29 テンモクショウ(天目松)Pinus densiflora f. pendula(ピヌス デンシフローラ ペンデュラ)マツ科マツ属。品種名のpendulaとは下垂性を表します。写真のように枝が強いしだれ性を呈します。このマツは、アカマツとは程遠い植物に見える不思議なマツです。

テンモクショウの球果は独特で種鱗の数が少ない扁平な姿をしています。長さが3~5cmぐらいです。

No.30 リュウキュウマツPinus luchuensis(ピヌス ルチュエンシス)マツ科マツ属。種形容語のluchuensisは、琉球を意味しています。それは、日本の南西諸島に固有のマツです。トカラ列島以南の海岸沿いに生息し琉球赤松とも呼ばれます。

リュウキュウマツは、クロマツやアカマツが原生しない南西諸島で種として成立しました。タギョウショウのように枝が密で樹冠が平らになりますが、株元で分岐しません。葉2枚で束生する2針葉で長さは10cm程度です。このマツは、樹高は高くならないで横に広がるマツです。台風の通り道になっている南西諸島では強風から身を守るために、背が高くなるリスクを避けることが遺伝子に刻み込まれたのだと思います。

リュウキュウマツの林の下には、小さな球果がたくさん落ちていました。アカマツよりさらに一回り小型で3~4cmです。球果の周りには不思議な形をした球果の残骸がありました。

球果の世界ではそれをエビフライといいます。お皿にのせてみましたが、まさにちょっと揚げ過ぎのエビフライに見えます。種を食べるため堅牢な球果の種鱗を誰かがかじった跡がエビフライです。現行犯でないので、その動物を知るよしもありませんが、齧歯(げっし)類の動物たちでしょう。

最後に奇妙な球果を紹介します。 私が球果が好きだということを知って、知人が届けてくれました。このアカマツの木には、枝のところどころに球果がまとまって付いているのだといいます。こんなマツボックリ今まで听不懂、看不懂(tīngbùdǒng, kànbùdǒng 見たことも聞いたことも無い)摩訶不思議です。

※中国語 听不懂,看不懂 チンプトン、カンプトン。それが、チンプンカンプンの語源です。

次回は「世界球果図鑑[その14]」です。お楽しみに。

JADMA

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