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世界球果図鑑[その14]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その14]

2019/11/05

マツ科マツ属は、地球の北半球植物であるといっても過言ではありません。赤道をまたいで分布するマツ属があるといわれますが例外だと思います。いよいよ、世界球果図鑑 マツ科マツ属編は北半球を一周して、北アメリカ大陸の西岸に分布する巨大で世にも奇妙でおかしな球果を紹介していきます。最もマツ属の多様性が見られる地域ではありますが、いまだその地域の原生調査はできていません。しかし、さまざまな手段を講じて収集した球果とその横顔を紹介していきます。

北アメリカ西岸は、世界的な巨木の宝庫です。なぜ、とんでもない大きな木がそこにあるのでしょうか? いずれ考察してみたいと思います。この地には世界一長い球果と重たい球果があります。比較対象がないとその大きさが実感できないでしょうから、猫を置いてみました。その球果は、猫の存在感に負けません。

No.31 オオミマツPinus coulteri(ピヌス コールテリー)マツ科マツ属。英語ではコールターパインと呼ばれ、日本ではシシマツともいいます。種形容語のcoulteriとは、アイルランドの植物学者で北アメリカ西南部の植物探査をした探検家であるThomas Coulter(トーマス・コールター)に献名されています。

オオミマツは世界一重い球果を付けるマツとして有名です。その形状も大変ユニークで私たちが松ぼっくりに抱くイメージとかけ離れ宇宙人的です。2つとも球果の長さは、それぞれ30cm、重さは1kg以上です。種としての最大は長さ40cm、重さ5kgというのだからあきれるほどです。下に標準的なクロマツを置いてあるので比べてみてください。

オオミマツは北アメリカ西岸の南カリフォルニアとメキシコのバハカリフォルニア半島に生息しています。分布状況を調べると個体数は多くなく、点在して分布していて南向きの乾燥した岩石斜面に他のマツと混生して生えているらしいのです。3針葉であり、葉の長さ30cm、樹高は24mほどというのでマツとしては中型です。でもその高さから1kgを超える球果が落ちてくるのは恐ろしいことだと思います。

オオミマツの球果には種があります。長さ18mmほどあり、大きな球果の割に小ぶりで種には翼が付いています。新鮮な球果は松やにがたくさん付いていて体温で溶けます。手にまとわりつくと洗剤で洗っても取れませんが、アルコールに溶ける性質があるので、エチルアルコールで拭き取ります。

皆さんはパイナップルという果物をご存じだと思います。英語でpineappleと書きますが、松ぼっくりに外見が似ているので、pine(マツ)から作られた造語だったのでしょう。果物のパイナップルと球果を並べてみました。大きさや形がよく似ています。

No.32 サビンマツPinus sabiniana(ピヌス サビニアナ)マツ科マツ属。種形容語のsabinianaはJoseph Sabine(ジョセフ・サビン)に献名された名です。彼は博物に興味がありロンドン園芸協会の事務局長でした。サビンマツは、3針葉でオオミマツ(コールターパイン)と近縁です。このような大きな球果を付けることで知られますが、一回り小さく球果のとげの発達が弱いこと、そして全体として軽量で重さ1kgを超えないことが特徴といわれています。

サビンマツは、Digger pine(ディガーパイン)とかGray pine(グレイパイン)と呼ばれます。北アメリカカリフォルニア州に固有のマツで、葉の長さは最大で30cm、樹高も最大で30m程度になるといいます。原生地は、カリフォルニア州の内陸部丘陵地域、夏に乾燥する地域に生息します。分布域はオオミマツより広く生息数も多そうです。

北アメリカ西岸には、さまざまな巨大球果を付けるマツがあります。次は世界一大きな球果を付けるマツのお話です。

左にある細長い球果は、北アメリカのオレゴン州からバハカリフォルニアの広い範囲に生息するマツで、その中の一つは知人が北アメリカで拾ってきたというのです。

No.33 サトウマツPinus lambertiana(ピヌス ランベルティアナ)マツ科マツ属。種形容語のlambertianaは、ロンドン・リンネソサエティーの副会長、当時のマツ属のオーソリティーAylmer Bourke Lambert(エルマー・バーク・ランバート、1761~1842)に献名されています。和名は、ネイティブアメリカンが利用したこのマツの甘い樹脂によるとされています。左下の平均的クロマツの球果と比べてみてください。

サトウマツは、葉が5本で束生する単維管束(sutrobus)亜属、ゴヨウマツの仲間です。私が持っているサトウマツの球果は、長さ43cm、重さ346gほどあります。そして最大の大きさは60cmというのですから球果植物の中で最大の大きさです。

大きいのは球果だけでなく樹木も巨大で樹高60mを超え、最も大きい個体の樹高は82mとされています。「世界球果図鑑[その3]」でダイオウショウ(大王松)の最高樹高は47m、マツの大王といってしまいました。今は“しまった”感でいっぱいです。あらゆるマツの中で、サトウマツの球果の大きさと樹高は破格の存在といわざるを得ません。

そして、巨大なマツが生い茂る北アメリカ西岸の山岳地帯には、もう一つ背の高さで破格のマツが生えています。それは次のお話です。

次回は「世界球果図鑑[その15]」です。お楽しみに。

JADMA

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