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世界球果図鑑[その15]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その15]

2019/11/12

世界のマツ属が集まりオリンピックがあったとしたら、北アメリカ西岸勢が球果の大きさや背の高さなど、各種目の金、銀、銅メダルを独占するのかもしれません。今回は、マツ属の背の高さで銀メダルを取る大きなマツのお話から始まります。

No.34 ポンデローザマツPinus ponderosa(ピヌス ポンデローサ)マツ科マツ属。種形容語のponderosaとは重量のある、材が重いということを意味します。名前の通りポンデローサマツは高さ60m以上になる巨大なマツです。最大の記録は81mといわれ、最も大きいとされるサトウマツPinus lambertianaにわずかに足りないだけです。

ポンデローザマツはカナダ西南部からアメリカ西部、中部と北アメリカ産マツの中では最も分布域が広く5つの亜種が知られています。樹皮は黒褐色をしていて、うろこ状に剥がれます。どっしりとした材質感を持ち、木材として利用されます。

ポンデローザマツは、3枚で束生する3針葉で、葉の長さは20cmほどありフサフサしていて柔軟です。球果は鋭いとげを持ち外側に向いています。大きさは10~15cmです。このマツは、山火事への優れた適応力があり、北アメリカ西部の厳しい自然環境の中で生き抜いてきました。

No.35 ジェフリーマツPinus jeffreyi(ピヌス ジェフリー)マツ科マツ属。種形容語jeffreyiとは、スコットランドにあるエジンバラ王立植物園の園丁であり、北アメリカの植物調査でPinus jeffreyiを発見したJohn Jeffrey (ジョン ジェフリー、1826~1854)に献名されています。彼はコロラド砂漠からサンディエゴへ向かう植物調査の途中で消息を立ち、二度と姿を現すことがありませんでした。弱冠28歳でした。

ジェフリーマツとポンデローザマツは、外観はよく似ていて区別が難しいといいます。ジェフリーマツは、カリフォルニア西部シエラネバダ山脈を主な分布域にすること。両者の樹脂の香りが明らかに違い、科学的に異質であること。両者の球果の大きさと形状が違うことなどで区別されています。ポンデローザマツの球果のとげは鋭く外側に向いており、ジェフリーマツの球果のとげは完全に下向きで内側に向いているのです。

ジェフリーマツの球果はなぜかしらよい香りがします。近縁種のポンデローザマツの球果10~15cmよりはるかに大きく、この球果は23cm、重さは292gあります。形のよい円錐(すい)形で鱗片(りんぺん)の数が大きくガッチリとした球果です。

北アメリカ東岸に生息するマツを一つ忘れていました。

No.36 スナチマツPinus clausa(ピヌス クラウサ)、別名サンド パイン マツ科マツ属。種形容語のclausaは、closed(閉じた)のラテン語です。スナチマツは、亜熱帯気候に生える暖地性のマツです。酸性から強い酸性砂質土壌に生育し、高温乾燥するフロリダ半島とアラバマに生息しています。特にハリケーンの影響を受ける場所でよく見られるといいます。

球果は赤褐色をしていて扁平(へんぺい)で、4~7cmほど下向きに小さなとげを生じますが握っても痛くはありません。種子は、黒色で長さは5mmほど、翼は15mm、全体で20mmの大きさになります。葉は、2枚で束生する2針葉であり、どこかバージニアマツPinus virginianaに似ています。

スナチマツは短命のマツとして知られ、大きさは20mほどにしかなりません。球果も脱落しないで枝に付きます。球果の形状や大きさの違い、生息する生態系や生息地域に違いはありますが、植物学者の中には、アパラチア山脈周辺に産するバージニアマツの変種Pinus virginiana var. clausaと考える人もいます。球果の形状から私は変種説を支持します。

次回は「世界球果図鑑[その16]」です。お楽しみに。

JADMA

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