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世界球果図鑑[その20] トガサワラ属ほか

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後も嘱託として勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

世界球果図鑑[その20] トガサワラ属ほか

2019/12/17

モミ属やツガ属は、同じような線状葉を持っていますが球果の形状は全く違いました。トガサワラ属(Pseudotsuga)は、ツガ属(Tsuga)に似ていますが、付ける球果がやはり異なります。球果の形状は、その属や種に特有のものです。

トガサワラ属は世界に4種があり、1種は北アメリカに、3種は東アジアに希少種として生息しています。北アメリカと東アジアに隔絶分布し、ヨーロッパなどでは化石種として発見されるので、この属は古い昔の残存種だと考えられます。

No.47 トガサワラPseudotsuga japonica(プセウドツガ ジャポニカ)マツ科トガサワラ属。種形容語のjaponicaは日本を表します。トガサワラは、和歌山と四国の一部に固有する常緑の高木であり線状葉を持ちます。生息数が少なく絶滅危惧種に指定されています。Pseudoとは、「似た」 、「偽」という意味で、属名のPseudotsuga を直訳すると偽ツゲとなります。

トガサワラの球果です。長さ4~5cm、幅4cm程度で丸くコロコロしています。鱗片(りんぺん)は革質のようであり、木質のようでもあります。トガサワラ属球果の最大の特徴は、苞鱗(ほうりん)と呼ばれる薄い膜状の付属体が鱗片の外側から飛び出ていることです。

No.48 タイワントガサワラPseudotsuga wilsoniana(プセウドツガ ウィルソニアナ)マツ科トガサワラ属。種形容語は、著名なイギリスのプラントハンターであるErnest Henry Wilson(アーネスト・ヘンリー・ウィルソン)に献名されています。他に彼の名は、屋久島スギのウィルソン株としても知られています。

タイワントガサワラは、日本のトガサワラに似ています。葉身は長く4~5cmほどあります。葉と葉の間は、モミやツガと違い離れていて短いながら葉柄があります。葉先は尖っているのですが、柔らかく優しい触感がありました。

No.49 黄杉(huang shan)Pseudotsuga sinensis(プセウドツガ シネンシス)マツ科トガサワラ属。別名を黄帝杉ともいいます。それは中華民族の始祖といわれる古い伝説上の皇帝「黄帝」にちなみます。トガサワラは、珍しい樹木なので黄杉の存在もあまり知られていないと思います。黄杉は常緑の高木で50mくらいに大きくなります。

背の高い黄杉を見上げると、望遠レンズの範囲内に球果を見つけました。黄杉は、トガサワラ属独特の球果を下向きに付けていました。この樹木は、中国に固有の種で雲南省周辺の温暖で湿潤な環境に生育します。

東アジアのトガサワラは、どれも生息数が少なく広い林の中に遺存分布している状況です。それは、黄杉も同じで人の手の届きにくい深山でしか見ることができません。

黄杉の球果が、梢の下に落ちていました。 黄杉の球果は、トガサワラに比べ細長く長さ6~8cm、幅3.5cmほどです。種は、濃い茶色で翼を入れて2cmほどあり球果鱗片から散布されます。

東アジアの各地で希少なトガサワラですが、北アメリカのトガサワラは違います。

No.50 アメリカトガサワラPseudotsuga menziesii(プセウドツガ メンジィエシー)マツ科トガサワラ属。種形容語はスコットランドの植物学者であるArchibald Menzies(アーチボルド・メンジーズ)に献名されています。

北アメリカの太平洋岸には別名ベイマツ、またはダグラスファーと呼ばれるアメリカトガサワラが大森林を作り生息しています。樹高も100m近くなる大高木で木材資源として産業に使われています。東アジアでは絶滅危惧種のトガサワラですが、北アメリカでは木材として輸出されているのです。この植物の球果の最大の特徴は、球果の鱗片の外側にある皮膜のような苞鱗が長く飛び出ていることです。

線状葉を持つマツ科植物の中で最も珍しいのは、銀杉でしょう。

No.51 銀杉(yin shan)Cathaya argyrophylla(カタヤ アルギロフィラ)マツ科ギンスギ属。種形容語のargyrophyllaは銀色の葉という意味です。幻の植物を取り上げた本の中では、植物のシーラカンスと書いてありました。木を見上げると葉の裏にある気孔帯が銀色に見えました。

銀杉は、1956年に発見されたマツ科一属一種の植物です。幅広で先端が楕円(だえん)の葉を付け長さは5~6cmほど、短い葉と長い葉が、らせん状に付いていました。この植物は中国に固有で四川省南部など温暖で霧が発生する山懐の酸性土に点在します。どんな球果を付けるのか、考えるだけでわくわくします。

このほか、中国の広東省などにはノトツガNothotsuga longibracteata マツ科ノトツガ属という植物があると聞きます。それは、どんな植物でどんな球果を付けるのでしょうか、私も分かりません。

次回は「世界球果図鑑[その21] 」です。お楽しみに。

JADMA

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