タネから広がる園芸ライフ / 園芸のプロが選んだ情報満載

連載

ユリの王国[その7] タカサゴユリとテッポウユリ

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

ユリの王国[その7] タカサゴユリとテッポウユリ

2020/09/01

日本各地の、日当たりのよい空間に花を咲かせる白ユリを、私はシンテッポウユリだと考えています。それを、タカサゴユリだという人もいます。そのユリの遺伝子を調べないと分からないという意見もあります。正論だと思いますが、タカサゴユリにはそのユリなりの特徴があります。大学の研究室に、種(タネ)から育てた正真正銘のタカサゴユリがあるというので見せてもらいました。

タカサゴユリLilium formosanum(リリウム フォルモサヌム)ユリ科ユリ属。種形容語のformosanumは、「台湾の」という意味です。葉は細く繊細で密に生えています。実生1年目の開花は8月中旬でした。

タカサゴユリの最大の特徴は、花被の内側は白く無地であり、外側に赤紫の筋があることです。このように、外側が色づくことがタカサゴユリの姿です。花は漏斗(ろうと)状で、テッポウユリに比べ細長く急につぼみ、花被片の長さは15~18cmほどあります。

タカサゴユリは、実生1年で開花に至ります。タカサゴユリとテッポウユリの交配には成長が早く、8月に開花し、純白のユリであることが求められたのです。ちまたに咲くシンテッポウユリが純白なのは人為的選抜があったのだと思われます。世間には、赤い筋のある個体も散見されますが、後代に祖先の形質が表れたのか、タカサゴユリなのかどうかは、遺伝子の検査が必要なのかもしれません。

南西諸島は、九州南方と台湾の間に約198もの島々が連なります。黒潮の影響を強く受け暖かく、植生は台湾を通じて東南アジアや南洋の島々につながっています。この地域は、ユリ属のホットスポットの一つであり、固有の白ユリが3種類あります。

テッポウユリLilium longiflorum(リリウム ロンギフローラム)ユリ科ユリ属。種形容語のlongiflorumは、長い花という意味です。草丈は50cm~1mほど、花の形が中世の散弾銃の一種であるラッパ銃に似ていることからテッポウユリといわれます。葉は肉厚で葉幅が3cmほどあり幅広です。花被の長さは約15cm。このユリの最大の特徴は、花被片の外側基部は緑色を帯びるのですが、全体にそれが純白に見えるということです。

純白は純潔や貞節のシンボルであり、西洋では聖母マリアの象徴でもあります。テッポウユリはその純白さによって欧米の宗教的行事に多用されるようになり、その球根は、明治時代から大変な量が日本から輸出されました。今ではテッポウユリは、イースターリリーともいわれ、現地で種苗の生産が行われています。

テッポウユリの原生地は、南西諸島の海岸の岸壁です。そこでは隆起したサンゴ礁や石灰岩の割れ目などにテッポウユリを見ることができます。潮風が吹きつけ、熱い太陽が容赦なく照りつける岩場に生えるテッポウユリの性質は強健剛直、葉にはクチクラ層が発達してツヤツヤしていて肉厚です。

南西諸島の固有種である、もう2つの白ユリは、あまりにも希少過ぎておいそれとは見ることができません。

1つ目は、タモトユリLilium nobilissimum(リリウム ノビリシシヌム)ユリ科ユリ属。種形容語のnobilissimumは、最も高貴な、非常に気品のあるという意味です。トカラ列島の口之島の断崖のみに原生する純白で受け咲きのユリです。

2つ目は、ウケユリLilium alexandrae(リリウム アレクサンドラエ)ユリ科ユリ属。種形容語のalexandraeは、イギリスの国王だったエドワード7世の妻、アレクサンドラ王妃にちなみます。ウケユリも純白のユリで奄美群島の海岸の岸壁や山地の岩場に点在します。

どちらも、絶滅危惧IA類Critically Endangered(深刻に絶滅寸前)(CR)に指定され種の存続が危ぶまれています。

南西諸島から遠く離れた、中国四川省の高地にテッポウユリの近縁種があります。

リーガルリリーLilium regale(リリウム リーガレ)ユリ科ユリ属。種形容語のregaleは、王者を表します。

リーガルリリーの花被片は、14cmと若干短く寸の詰まったラッパ状です。特徴は花被の内側が白く、基部付近が黄色く色づき、花被の外側には濃淡のある赤い筋があることです。リーガルリリーは純白ではありませんが、ウイルス耐性があり丈夫で、観賞価値が高いユリです。

次回は「ユリの王国[その8] ササユリとヒメサユリ」です。お楽しみに。

JADMA

Copyright (C) SAKATA SEED CORPORATION All Rights Reserved.