![どんぐり ころころ[その6] ミヤマナラとミズナラ](../../image-cms/header_kosugi.png)

小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
どんぐり ころころ[その6] ミヤマナラとミズナラ
2020/11/10
春は里から、秋は山からやってきます。里で秋の深まりを感じるころ、山の草花はすでに店じまい。落葉広葉樹たちは、冬支度に余念がありません。今回は、山地型で寒冷な気候を好むナラ類である、ミヤマナラとミズナラ、そしてそのどんぐりについての紹介です。
10月下旬、亜高山帯の落葉広葉樹の森や湿原では、草木が赤や黄色に色づく季節を迎えていました。
草木の生い茂る亜高山帯の夏は足早に過ぎ、10月には、早くも紅葉のシーズンを迎えていました。上の写真の、手前に生えている灌木がミズナラの高山型である、ミヤマナラです。
ミヤマナラQuercus crispula var. horikawae(クエルクス クリスプラ var. ホリカワエ)ブナ科コナラ属。ミズナラの高山型の変種です。種形容語のcrispulaとは、やや、縮みのあるという意味。変種名のhorikawaeは、植物学者の名前にちなみます。
ミヤマナラは、Quercus mongolica var. undulatifolia と表記される場合もありますが、現在では、synonym(シノニム、正しい学名ではない)とされます。この樹種は、母種のミズナラに比べより高い山や豪雪地帯、湿原など生育条件の厳しい環境下に生え、高さ20mにもなるミズナラに比べ1/10程度にしか成長しない矮性小型の種です。日本の固有種とされ、本州中北部の日本海側などの亜高山帯に生息しています。
ミヤマナラの紅葉を見ていると、同じような環境下でも、黄色からオレンジに色づく個体群、赤く染まる個体群があり、アントシアン色素を合成する量が、それぞれに違うことが分かります。
ミヤマナラは、亜高山帯の雪が積もる湿原や斜面に見られ、枝が斜上したり明らかに雪の圧力を受けています。そのためにミヤマナラは灌木程度にしか成長できないのだと思います。葉やどんぐりもミズナラより小型です。
山中でどんぐりを集めて観察することは、草木に紛れ結構難しいのですが、運よく木道に落ちているミヤマナラのどんぐりを見つけることができました。寸足らずのコナラのどんぐりのようですが、ミズナラ類の特徴を明確に持っています。それは、よく発達したおわん状の殻斗です。
大きく育たないミヤマナラに対し、20m、時には30mの高木になるのが母種のミズナラです。ミズナラは、里山では見られませんが、山地の落葉広葉樹林の主要な樹種です。