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連載

たねダンゴ(R)の来た道[その2]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

たねダンゴ(R)の来た道[その2]

2021/04/13

日本家庭園芸普及協会は、園芸の指導者としてグリーンアドバイザー(GA)という花と緑の指導員を育て、その資格認定を行っています。その数は、日本全国でおよそ1万2000人です。

今から10年前、東日本大震災がありました。未曽有の被害を出したその地にも、グリーンアドバイザー(GA)はいました。「困っている人を見ると、黙っていられない」と被災地支援に立ち上がったのは現地のGAでした。

岩手県宮古市赤前は、宮古湾の近くの低地です。写真は、仮設住宅から通ってくる子どもたちもいる赤前保育園です。宮古生まれのGAは、津波で恐怖の体験をした子どもたちの、心の安定のために花を植えたのでした。

当時、協会は被災地の直接支援と、現地で活動するGAを応援していました。やがて、花の種を被災地に提供するようになったのですが、種から花壇を作るのは難しいことでした。現地で活動するGAは、園児とともにできる種まきを思いつき実践したのです。

それは、園庭の土を掘り出し、泥団子を作り、種を混ぜたのです。泥遊びなら子どもたちは大人に負けない天才。楽しく園芸作業ができたに違いありません。活動報告を受けた協会では、そのアイデアを元に、早速レシピを作り普及に乗り出しました。

新たに考えられた「たねダンゴ」レシピで、1000個ほど福島県南相馬の方々とともに「たねダンゴ」を作りました。

「たねダンゴ」を植える土地の面積は約1000㎡。海岸から程近くにある津波をかぶった田んぼです。畝間は100cm、株間は30cmにしました。

前年の10月、住民の方たちとともに仕込んだ「たねダンゴ」は、翌年の5月、それは見事に花を咲かせたのです。

「たねダンゴレシピ」が、見事な花畑を作ることは折り込み済みでした。しかし、その検証ができた達成感は、今でも忘れることはできません。難しい言葉で言えばエビデンスを確保したということでしょうね。

種をまいた花壇。まばらな芽生

「たねダンゴ」に仕込んだものと同じ種をまいた、三陸の海岸縁を走る、国道45号線の沿線花壇です。海岸縁は風が強く、種が風で飛ばされ、雨で流されることもありました。

「たねダンゴ」は、重さがあります。風で飛ばされず、雨で流されませんでした。花壇を作る方法として、過酷な環境において通常の種まきより、確実な方法であることが分かりました。おまけに傾斜地にも対応できる工法でもあります。

「たねダンゴ」は、種の揺りかごのように、種や幼い苗を守る技法でもありました。

このように「たねダンゴ」は、被災地支援に立ち上がったGAのアイデアから生まれ、レシピが開発されました。そして、そこで実践と検証が行われてきたのです。

それからは、いつでも、どこでも、お茶の時間でも「たねダンゴ」を教え、広めました。

「たねダンゴ」を作ることは、年齢を問わず楽しくできます。この共同作業においては、話も弾み、見ず知らずの方とも仲良くなれました。「たねダンゴ」は、実際に花を咲かせる技術以外に、人と人をつなぐコミュニケーション手段として有効だと強く思います。

次回は「たねダンゴ(R)の来た道[その3]」です。「たねダンゴ」のレシピを公開します。お楽しみに。

注釈

「たねダンゴ」は公益社団法人 日本家庭園芸普及協会が、皆さんのために何の制約もなく楽しめるように商標登録をしたものです。
より詳しく知りたい方は、下記へご連絡ください。

公益社団法人 日本家庭園芸普及協会 TEL:03-3249-0681

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