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たねダンゴ(R)の来た道[その4]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

たねダンゴ(R)の来た道[その4]

2021/04/27

「たねダンゴ」は、東日本大震災の被災地で生まれ育ちました。そして、その技法はさらに東京のお台場「おもてなし花壇」で磨かれ、多くの人に知られるようになったのです。そのおもてなし花壇とは、昨年、東京オリンピックに来られるお客様を、お花でおもてなしをするために企画されました。[その4]では、その様子を伝えながら、「たねダンゴ」を成功させる秘訣についてまとめておきます。重要な事柄は赤字で表記しました。

「たねダンゴ」には、適期があります。関東以西の平暖地標準において、秋まきのものでは10月上旬~11月中旬、春まきのものでは5月中旬~6月末までが最適の時期です。それぞれの地域の特性に応じて植え時期を設定してください。

このときは、5月21日が「たねダンゴ」を植えた日でした。7月20日にほとんどの花が咲き始める予定です。

秋まきのものでは、10月に「たねダンゴ」を植えると、早いものでは翌年2月の下旬に開花が始まり、4月下旬~5月下旬が開花盛期となります。

春まきのものの成長はとても早く、「たねダンゴ」を植えてから1カ月もすると開花が始まる種(タネ)もあります。ほとんどの株が開花を始めるのは2カ月を待ちません。55日程度で花壇映えを迎えますので、いつ咲かせたいかを考えて「たねダンゴ」を植えてください

「たねダンゴ」作りのイベントは、いつも、どこでもわいわいとにぎやかです。この作業で一番大切なことは何でしょう?

それは、種を付け忘れないことです。笑い話と思われるかもしれませんが、種の付け忘れは結構あることなのです。「何忘れても種付け忘れるな」です。 

「たねダンゴ」ができたら、すぐに植えましょう。「たねダンゴ」の状態で取っておくことはできません。3日もすれば根が出ます。

「たねダンゴ」に付いている種は小さいので埋める深さが重要です。「たねダンゴ」を深く埋めると、「種のお墓」になります。団子状に広げた「たねダンゴ」の上に2~5mm程度の土がかぶるくらいがよいので、深植えにならないように注意しましょう。植える間隔は、秋まきのもので30cm、春まきのもので40cmが妥当です

「たねダンゴ」には、お茶っ子が付きものです。特に春まきの「たねダンゴ」の作業は、暑い最中に行いますので休憩は不可欠です。1時間に一度は強制的に休みを入れます。参加者の健康状態に気を配るのは、主催者の最も重要な仕事でもあります。

「たねダンゴ」作りを行うときは、日和を見る必要があります。雨の翌日や、雨が降る前日などに行うと水やりの手間が軽減できます。雨の降らない場合は、水やりは必須です。春まきのものの場合、6月に行い梅雨を利用するのもよいでしょう。

「たねダンゴ」を植えてからは、見守りが始まります。この見守りが決定的に重要です。芽が出たか、雑草が生えていないか、肥料は効いているか、よく観察して対応していきます。種をまいて2週間でこのように「たねダンゴ」の芽は地表に出現してきます。同時に雑草の芽生えも2週間後に目立ちます。この2週間後の除草は重要です。

「たねダンゴ」を植えてから1カ月程度で、このような状態になります。早くも開花を始めてきます。2週間前にきれいに草むしりをしても、このように雑草は生えます。1カ月後、再び除草に力を入れましょう。

「たねダンゴ」を植えてから2カ月後の状態です。ほとんどの「たねダンゴ」は開花を始めました。春まきのものの場合、2カ月未満で観賞可能な状態になります。

3カ月後の状態です。「たねダンゴ」は満開を迎えます。

熱中症注意報発令! 8月のお盆ごろでも「たねダンゴ」の子どもたちは、このように元気です。ポット苗を植えた花壇では、夏バテを起こしてしまうかもしれません。「たねダンゴ」は、直根を地中に深く伸ばしますので、元気に育つのは検証済みです。

「たねダンゴ」を植えてから3カ月後ごろになると、1番花が枯れてくる時期です。見守りを継続して咲き終わった花の切り戻しも行います。

9月を迎えました。「たねダンゴ」には、一年草の種を使いますので植えてから3.5~4カ月で終盤を迎えます。秋花壇の準備もありますので早めの撤収を心掛けます。

撤収期を迎えても、まだまだ、花たちは咲き続けます。ただ、撤収期を迎えたからといって切り倒すのはかわいそうです。せっかくですからお花摘みをして、「たねダンゴ」を最後まで楽しみ尽くしてあげましょう。「たねダンゴ」を作り、見守りをしてきた方々も、お花摘みで達成感が得られると思います。

「たねダンゴ」にどのような種が向くのか、さまざまな種をまいてその適性を検討しました。秋まきの種の結果は、すでに述べました。

春まきでは、ヒャクニチソウ小輪と大輪、コスモス、フレンチタイプ マリーゴールド、ハゲイトウ、クレオメ、センニチコウ、ユーフォルビア「氷河」がよい結果を得られました。

それらの種をそれぞれ用意すると、労力的、経済的に大ごとです。そこで秋と春にまく「たねダンゴ ミックス」種子をサカタのタネで用意しました。種の混合比も調整し、量もたくさん入っていてお得です。それぞれ、30~50個ほどの「たねダンゴ」が作れます。

4週にわたり、「たねダンゴ」について経緯とその技術、その効能についてまとめました。

「たねダンゴ」は、新しい種まきの手法です。誰でも、簡単に楽しく園芸作業ができます。そして、人と人が触れ合うコミュニケーションづくりに大変有効なのです。「たねダンゴ」作りは楽しいです。ぜひ、体験してみてください。

次回は「ユズリハの歳時記」です。お楽しみに。

注釈

「たねダンゴ」は公益社団法人 日本家庭園芸普及協会が、皆さんのために何の制約もなく楽しめるように商標登録をしたものです。
より詳しく知りたい方は、下記へご連絡ください。

公益社団法人 日本家庭園芸普及協会 TEL:03-3249-0681

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