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都市河川とミズキンバイ[後編]

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。

都市河川とミズキンバイ[後編]

2021/09/28

微妙なバランスの上に成り立つ生態系を破壊してしまうと、なかなか元に戻すのは大変です。それでも、光と水、空気がある環境は、すぐに緑で覆われます。でも、そこには、昔からあった植物ではなく、どこかよそよそしい振りをした植物たちが多いものです。

日本の高度成長期のころは、急速な人口増や経済の発展に都市インフラが追い付かず、各地の都市河川は、ドブ川のようでした。その後、下水処理技術の進歩もあり、都市を流れる河川も、それなりに浄化されて自然が回復してきたのはうれしいことです。

あまりきれいとはいえない神奈川県を流れる柏尾川ですが、絶滅が危惧されるミズキンバイLudwigia stipulaceaたちは、そんな都市河川で幸せに生きているように見えました。

それでも、自然環境は、絶えず変遷していきます。ミズキンバイの生息に適した岸辺には、ガマやアシが生えていきます。強壮な抽水植物が茂り、岸辺に太陽光線が届かなくなるとミズキンバイの天国もなくなってしまうかもしれません。自然の環境変化も、ミズキンバイたちにとって死活問題なのです。

チョウジタデ属Ludwigiaは、中南米に分布の中心があり、世界に82種を分布させると資料にあります。それらは、水辺の植物であり、水中でも生活できる種があり、アクアリウム用の植物としていろいろな種が日本に移入されてきました。ミズキンバイは、日本、台湾、中国に原生する東アジアの植物ですが、今、世界のミズキンバイ類や水草が水槽から移動し、日本に新しい生活の場を広げています。

オオバナミズキンバイLudwigia grandiflora(ルートヴィヒア グランディフローラ)アカバナ科チョウジタデ属。種形容語のgrandifloraは、大きな花という意味です。北アメリカ南部~中南米に原生とされる植物ですが、観賞用として世界中に導入され、1800年代にヨーロッパ各地で野生化が報告され、2000年に日本において外来種として定着しました。

オオバナミズキンバイは、名前の通りに花が大きいので見応えがします。それ故に導入されたのですが、環境耐性がとても強く、移入した国において瞬く間に野生化しました。日本においては、琵琶湖などの岸辺に茂り、水路をふさいだり、生態系を変える恐れが指摘されて、侵略的外来水生植物と見なされています。

アメリカ大陸のオオバナミズキンバイと東アジアのミズキンバイの一番の違いは、花の大きさです。オオバナミズキンバイは4cm、ミズキンバイは2.5cmほどです。オオバナミズキンバイの方が、葉が細く全体に細かな毛が生えています。写真では産毛が確認できると思います。ミズキンバイは無毛です。両者とも親和性があり、将来、雑種が誕生するかもしれません。

これも、南北アメリカ大陸からの外来種です。すっかり水田の雑草として定着し、在来種みたいな和名が付けられました。

ヒレタゴボウLudwigia decurrens(ルートヴィヒア デカレンス)アカバナ科チョウジタデ属。種形容語のdecurrensは、沿下(えんか)した、沿着する、着点より下に伸びたという意味です。葉が細く、基部がヒレ状に茎に伸びることによります。

ヒレタゴボウは、背が高く1m程度になり、葉も細く全体にスリムに見えます。最大の特徴は、4枚花弁なことです。ミズキンバイは基本花弁が5枚、ヒレタゴボウは4枚です。たまにそれぞれ、1枚程度花弁が多い個体があるのはご愛嬌(あいきょう)です。

もう一つ、チョウジタデ属ではありませんが、中南米原生の水生外来種を紹介します。それは、流れの緩やかな利根川の岸辺から茎を伸ばし水の中に生息していました。

ミズヒマワリGymnocoronis spilanthoides(ギムノコロニス スピランソイデス)キク科ミズヒマワリ属。これも、アクアリウム用の水草として導入された経緯があります。水中以外にも、湿ったところで生息する性質があり、わずかな根や茎からも再生する強壮な多年草なので、退治が困難とされ世界中で厄介な外来生物とされています。

南米には、アマゾン川があります。流域面積では2位以下の追随を許さない水の王国です。そこにはどれだけの水生植物が生えているのか想像もできません。外来種の水草に中南米産が多い理由はそれ故かもしれません。今、多くの国で水辺の環境が整備され、生態系が変わろうとしているのでした。

次回は「コウヤボウキ」です。お楽しみに。

JADMA

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