

小杉 波留夫
こすぎ はるお
サカタのタネ花統括部において、虹色スミレ、よく咲くスミレ、サンパチェンスなどの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを展開。2015年1月の定年退職後もアドバイザーとして勤務しながら、花とガーデニングの普及に努めている。
趣味は自宅でのガーデニングで、自ら交配したクリスマスローズやフォーチュンベゴニアなどを見学しに、シーズン中は多くの方がその庭へ足を運ぶほど。
アカメガシワ
2022/05/24
アカメガシワを観察していると、アリがウロウロしていることに気が付きます。よく見ると腺から蜜が出ていて、アリがなめているのです。アリは餌場をテリトリーとして守る性質があります。結果的にアカメガシワは、アリに蜜を提供して、自らをむしばむ害虫を排除してもらっているのです。
初夏になると、アカメガシワは奇妙な花を咲かせます。この植物は雌雄異株。オスとメスでは違う花が咲きます。手前が雌株で奥が雄株です。
雄株は黄色い花房。雄しべが、丸く展開しています。雌株の花房は褐色や赤色。雌しべの先端が鳥のくちばしのように尖り、3裂しています。
夏になると雌株には、鳥のひなが餌をせがむようなおかしな姿をした若い果実ができます。
秋になりました。アカメガシワの果実が熟し、中から黒い種子が顔を出します。その種子は油脂を多く含んでいて、鳥たちが好んで食べている様子。アカメガシワは、「どうぞたくさんお食べなさい」とでもいうように、種をうまい具合に露出するのでした。
暖かい日本の全土に広く原生し、厚かましいほどどこでも顔を出すアカメガシワ。繁栄には繁栄の理由がありました。アリをガードマンにして、次世代を鳥たちに運ばせます。寒い冬は、葉を落とし、寝て暮らす(寝技)も身につけました。それは見事な処世術。アカメガシワは、世渡り上手な知恵者なのでした。
次回は「キンギョソウ‘ソネット’」です。お楽しみに。