岬の植物たち 磯馴れ（そなれ）[後編]

• 岬の植物たち 磯馴れ（そなれ）[前編]

日本の本州を南限に東アジアに原生するイブキ（ビャクシン）Juniperus chinensis（ビャクシン シネンシス）ヒノキ科ネズミサシ属。最大樹高が約20mになる高木です。

イブキという樹木に、海岸風衝地適応型の変種があります。それは、ハイビャクシン Juniperus chinensis var. procumbens（ジュニパー シネンシス バラエティ プロカンベンス）ヒノキ科ネズミサシ属です。変種名はプロカンベンス。意味は平伏した、倒臥したという意味です。この変種は、風衝地以外に植えても、風衝地のように育ち、別名をソナレ（磯馴れ）といいます。

山地に生えるネズ Juniperus rigida（ジュニパー リギダ）ヒノキ科ネズミザシ属の磯馴れ適応型が、ハイネズ Juniperus conferta（ジュニパー コンフェルタ）ヒノキ科ネズミサシ属だと思います。サイドバイサイドで比較しました。

神道で使うサカキ（榊）をご存じだと思います。サカキ（榊）Cleyera japonica（クレイヤ ジャポニカ）サカキ科サカキ属（モッコク科ともいいます）。暖地の照葉樹林帯に生息して葉の縁は丸く全縁、関東では生息数が少なく、あまり生えていません。

ヒサカキ Eurya japonica（エウリヤ ジャポニカ）サカキ科ヒサカキ属。このヒサカキは、照葉樹が生える林にはどこにでも生えている樹木。山地に普遍的に生息していますので、資源量が豊富です。

このヒサカキの海浜型とみられるのが、ハマヒサカキ Eurya emarginata（エウリヤ エマルギナタ）サカキ科ヒサカキ属です。種形容語のemarginataは、先端がへこんだと言う意味です。

これは、秋の高原に咲くマツムシソウです。マツムシソウ Scabiosa japonica（スカビオサ ジャポニカ）マツムシソウ科マツムシソウ属。この植物は、北海道～九州の山地草原に生息する日本の固有種です。

その生き残り（遺存種）が、関東地方や伊豆の海岸縁にわずかに生息しています。ソナレマツムシソウ Scabiosa japonica var littoralis（スカビオサ ジャポニカ バラエティ リットラリス）マツムシソウ科マツムシソウ属。変種名のittoralisは海岸性を表します。冷涼な気候を好むマツムシソウですが、海岸風衝地によって生き残っています。