岬の植物たち 磯馴れ（そなれ）[後編]

そこで、サカキの代用にヒサカキ（姫榊）が多く使われています。サカキに比べ、葉がギザギザなのですぐにヒサカキと区別できます。

このハマヒサカキは、海岸に生える常緑の低木です。岬の風衝地では、しばしば風を受け流すような濃密な低層樹冠を見ることができます。

ハマヒサカキを見ると、その場所で風がどの方向から吹いているか知ることができます。ハマヒサカキは、ヒサカキが長い時間をかけて海岸縁で形質を変化させた磯馴れ型なのだと思います。

この植物は、夏～秋に花を咲かせ、ワレモコウや背の高い草と共生するために、丈は長く50～80ｃｍ伸びます。この冷涼な高原を好むマツムシソウは、寒冷期に温暖な平地にも進出を果たしたみたいです。

母種のマツムシソウが約80cmも丈を伸ばすのに対し、磯馴れタイプの変種ソナレマツムシソウは、丈が10～20cmと短く葉が比較的固い、そしてクチクラ皮膜が厚いと思いました。

一度生まれ落ちたら、動くことができない植物たち。海岸風衝地という厳しい環境に生き残るため、自らの形を変えて適応する様子を見てきました。自分の境遇への嘆き、不満を植物たちは思いもしません。ひたすらに耐えて、自らを変えることによって不遇に立ち向かうのです。

次回は「擬と騙し（モドキとダマシ）」です。お楽しみに。