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【第4回】農薬を剤型別に分けて、使い方を知ろう

望田明利

もちだあきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花・花木などを栽培している。

【第4回】農薬を剤型別に分けて、使い方を知ろう

2022/03/15

今回は農薬を剤型別に大きく分けて解説していきます。農薬には、手軽にそのまま使用できる種類と、水で薄めて使用する種類とがあります。それぞれに特徴と欠点がありますので、それらを理解して選ぶことが大切です。

【目次】
1. 薄める手間なくそのまま使用できる剤型
 ●エアゾール剤
 ●ハンドスプレー剤(スプレー剤、AL剤)
 ●シャワー剤
 ●粉剤
 ●粒剤、微粒剤
 【コラム:殺虫粒剤は庭木類には不向き?】
 ●ペレット剤
 ●ペースト剤

2. 水で薄めて使用する剤型
 ●乳剤、液剤
 【コラム:乳剤と液剤はどう違うの?】
 ●水和剤、水溶剤
 ●フロアブル剤、ゾル剤

1. 薄める手間なくそのまま使用できる剤型

水で薄めたりする必要がないので、手軽に使用できるものです。いくつかの形に分かれます。

●エアゾール剤

蓄圧充填物(本体容器内に薬剤と、その薬剤を放射するための圧力源となる気体が含まれているもの)のため、ボタンを押すだけで手軽に使用できる製品です。ボタンを押すとガスと薬剤が一緒に噴霧されます。

【利点】
・水で薄めるなどの手間がなく、すぐに使用できます

【注意点】
・ガスが気化するときに熱を奪うため、急激に温度が下がります
・近距離で噴霧すると、新芽などが冷え過ぎて冷害となり、変色したり枯れたりすることがあるので、植物から一定の距離を離して使用してください
・製品によっては逆さで噴霧すると、ガスだけが出て散布液が残る製品もありますので使用前に確認します

バラに「GFオルトラン(R)C」をまいて、うどんこ病の予防をしている様子
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

●ハンドスプレー剤(スプレー剤、AL剤)

あらかじめ希釈されているので、水で薄めるなどの手間がなく、すぐに使用できるスプレー剤です。

【利点】
・水で薄めるなどの手間がなく、すぐに使用できます
・エアゾール剤のようにガスなどが含まれていないため、冷害の心配がありません
・スプレーを逆さにしても使えるので、葉の裏面散布がしやすいです

【注意点】
・大量に散布すると手が疲れます
・液がすぐになくなりやすいです

寄せ植えに「ベニカXファイン(R)スプレー」をスプレーして、
アブラムシの防除をしているところ
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

●シャワー剤

ハンドスプレー剤同様にあらかじめ希釈されているので、水で薄めるなどの手間がなく、すぐに使用できます。内キャップに穴が開いており、ジョウロのように使用できます。 農薬に該当しませんが、アリ、ヤスデ、ワラジムシなど不快害虫を退治する薬剤や除草剤に使用されています。

【利点】
・水で薄めるなどの手間がなく、すぐに使用できます

【注意点】
・草花や野菜など育てている植物にかからないように散布します

●粉剤

薬剤を粘土などに混ぜた製品です。茎・葉に散布するものと、土に混ぜるものがあります。土壌病原菌や土壌害虫防除に使用する場合は土壌表面に散布後、土の中で1カ所に集中しないように耕します。

なお、後半で紹介する、ネキリムシなど土壌害虫防除のペレット剤は土壌表面にまきますので間違わないでください。農薬に該当しませんが、アリ、ヤスデ、ワラジムシなどの不快害虫退治用の薬剤は粉剤タイプが多く、土の表面など活動場所にまきます。

【利点】
・散布された場所が確認できるので散布むらが防げます
・土に混和することにより土壌病害の被害を軽減できます

【注意点】
・葉に散布する場合は葉や茎が薬剤のため白くなり美観が損なわれます
・粉末なので、薬剤の飛散・吸入に注意し、室内では使用しないように気をつけます

粉剤をまいたあとに耕して、土の中の害虫対策

●粒剤、微粒剤

直径が1mm程度で長さ2~5mm程度の細かい粒の製品です。微粒剤は粒剤よりさらに細かくした粒の製品です。浸透移行性(根や葉から薬の成分が吸収され、葉自体が殺虫効果を持ち、その葉を加害した害虫を退治できるもの) の薬剤が多いです。薬剤の成分を根が吸収して効果を発揮します。土が湿っている方が吸収しやすいので、乾燥している水やり前に散布して、その後に水やりをすると効果的です。

【利点】
・面積が狭いところだけでなく、面積が広いところでも使用しやすいです
・葉にまく薬剤に比べて効き目は遅いが、長期間効果が持続します

【注意点】
・まき過ぎないように注意します

散布後に水やりすると効果的

株元に粒剤をまいて、アブラムシの寄生を防ぐ
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

「ベニカX(R)ガード粒剤」を植物の苗を植えるために
掘った穴にまいているところ
(写真提供:住友化学園芸株式会社)

【コラム:殺虫粒剤は庭木類には不向き?】

草花や野菜は比較的根が浅いため、殺虫粒剤の薬剤を吸収しやすいのですが、庭木類は根が深くまで伸びているため、吸収するまでに時間がかかります。吸収するまでの間に薬剤の効果がなくなってしまうのです。

また、庭木の場合は葉の枚数が多いことが多いので、どの葉にも薬剤を効かせるためには大量に使用することが必要になります。そのため、庭木などには殺虫粒剤は向いていません。庭木類の防除は、乳剤や水和剤などを水に薄めてまいたり、薬剤を茎や葉に散布して退治します。

草花は根が浅いから殺虫粒剤が効きやすい、庭木は根が深くて薬剤がこないので吸収できない

●ペレット剤

直径が3mm程度、長さ5~10mm程度の円筒形の製品です。ナメクジやネキリムシといった害虫退治用に使用されます。それら害虫の好きな食べ物に薬剤を入れ、食べさせて退治します。土の表面にパラパラとまくことにより、植物を加害する前に好物の餌と勘違いして食べて退治しますので被害を回避できます。それら害虫は夜間に活動するため、夕方まくのが効果的です。

【利点】
・植物を加害する前に退治できます
・ナメクジやネキリムシなどの害虫は夜間に活動するため、夕方まくのが効果的です

【注意点】
・ペレット剤が水分を含んで柔らかくなると誘引力が減少するので、乾燥時に使用します
・ペットフードで飼育している犬や猫などのペットが餌と勘違いして拾って食べる場合があるので、飼育している場合は注意します

ペレット剤

円筒形で細かい

ダイコンのネキリムシ予防に「ネキリベイト」をまいている様子

ペレット剤を株元にまいた後

●ペースト剤

ペンキのように塗るタイプの薬剤で、多くはチューブに入っています。庭木などの枝を切ったときに切り口から病原菌が入り込まないよう、切り口に塗布する製品です。

【利点】
・塗った切り口が着色するため、塗った枝と塗らない枝が一目で区別できます

【注意点】
・殺菌成分が入っているため、直接素手で触らず、刷毛で切口に塗るか、ビニール手袋をして塗ってください

「トップジン(R)Mペースト」を切り口に塗布した様子

2. 水で薄めて使用する剤型

そのまま使用するのではなく、水で薄めて使うタイプの薬剤について解説していきます(詳細は第7回でも解説)。このタイプは希釈する手間が必要ですが、経済的です。いくつかの形に分けられます。

水で薄めて使用する剤型のイラスト

●乳剤、液剤

原液を水で薄めて希釈した散布液を噴霧器などで茎・葉に散布するタイプの製品です。製品によって薄める濃度はまちまちですので、使用方法をよく読んで使用してください。

【利点】
・少量で大量の薬液が作れるので経済的です

【注意点】
・希釈に手間がかかる、散布器具が必要になるので、手軽に使いたい方には不向きです
・水で薄めた散布液は保存ができないので必要な分だけ作ります

「スミチオン(R)乳剤」(写真提供:住友化学園芸株式会社)

「スミチオン(R)乳剤」のパッケージ裏面。使用する前にラベルをよく読みましょう

【コラム:乳剤と液剤はどう違うの?】

乳剤と液剤、どちらも水で薄めて使うものですが、どんな違いがあるのでしょうか。液剤とは、薬の有効成分が水と相性がよくて水に溶ける製品を指します。水に薄めても透明です(水と間違わないように着色剤を入れている製品もあります)。乳剤とは薬の有効成分が水と相性が悪くて水に溶けない製品を指します。

ではそんな水と相性の悪い乳剤はどうやって溶かすのでしょうか? それは、水と成分の両方と相性がよい乳化剤の助けを借りて、水の中に均一に混ざるようにしているのです。乳化剤を使用した製品は、水に溶かした液が乳白色になります。油の食器を洗剤で洗うときれいになりますが、洗剤の成分が水と油の両方に相性がよいため、水と一緒に流れてしまう理由と同じです。

液剤は水と相性がよく、水に溶ける。水に薄めても透明。乳剤は水に溶けないため、乳化剤の助けを借りて、水の中に均一に混ざるようにしている。水に混ぜた液は乳白色。

●水和剤、水溶剤

粉末タイプで水に溶かして使用する製品で、はかりで計量して使用します。粉末タイプの製品は、アルミ袋入りの包装のものが多いです。空気中の水分にも反応して有効成分が分解して効果が減少することもあります。殺虫剤だと害虫が退治されますので効果の有無が分かりやすいですが、殺菌剤では病原菌を肉眼では見えませんので効果が分かりにくいです。

最近の製剤技術は優れており、水に混ざりやすくなりましたが、水の中で成分を分散して均一にする作用もある「ダイン」などの展着剤が必要です。詳しい展着剤のお話は第7回にて紹介します。

【利点】
・家庭園芸用はメーカーが計量の手間をかけないように始めから1袋を1リットルの水に薄めるなどの分包された製品があり、希釈しやすいです

【注意点】
・散布量が少ないと0.1g単位で量れるはかりが必要になります
・農業用の大袋の製品から小出しで使用する場合は、湿気を吸収しないように密閉して保管します

ダコニール1000

「マイローズ(R) GFベンレート(R)水和剤」(写真提供:住友化学園芸株式会社)

●フロアブル剤、ゾル剤

水和剤の一種で、固形の有効成分を細かい微粒子にして水に分散させた製品で、会社によってフロアブル剤あるいはゾル剤と呼んでいます。乳剤などのようにサラサラした液体ではなく白く濁った液体状の製品です。

【利点】
・粉末タイプの水和剤に比べ、乳剤などのようにスポイト(ピペット)などで必要な分を手軽に計量できます

【注意点】
・静置しておくと成分が沈んで水と分離した状態になるので、使用の際は瓶をよく振って均一に混ぜてから計量します
・使用したスポイト(ピペット)などに白い液が付着するので、使用後はよく洗って保管します

ダコニール1000

「家庭園芸用トップジン(R)Mゾル」(写真提供:住友化学園芸株式会社)

今回は、農薬を剤型別に見ていきました。少し違いが理解できたでしょうか?

次回は「農薬は使用しても安全なの?」です。安全性の評価は読者の皆さまの判断にお任せしますが、農薬の登録を取るために行う際の試験について詳しく見ていきましょう。お楽しみに。

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薄める手間なくそのまま使用できる剤型

●ハンドスプレー剤(スプレー剤、AL剤)

●粉剤

●粒剤、微粒剤

●ペレット剤

●ペースト剤

水で薄めて使用する剤型

●乳剤、液剤

●水和剤、水溶剤

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