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【第6回】農薬を選ぶときのポイント

望田明利

もちだあきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花・花木などを栽培している。

【第6回】農薬を選ぶときのポイント

2022/05/17

これまで、農薬の種類や安全性について学んできました。では、実際に農薬を使ってみましょう。園芸店やホームセンターには、多くの殺虫剤や殺菌剤などの農薬が販売されています。どの製品を購入したらよいのかと売り場で悩んでいる人もいると思います。そこで、今回は農薬を選ぶ際の4つのポイントを説明します。

【目次】
1. 防除したい病害虫をはっきりさせる

2. どんな種類の植物に農薬を使いたいのか

3. 農薬を散布する面積や鉢数はどのくらいか

4. 病害虫に対する抵抗性にも注意しよう
 【コラム:薬剤が効かない病害虫が増える未来にしないために】

さまざまな農薬の中から、自分にあった農薬を選びましょう。

1. 防除したい病害虫をはっきりさせる

第1回目で病害虫の種類の解説をしました。一つの農薬で全ての病害虫が退治できれば問題ありませんが、残念ながらそのような製品はありません。本やインターネットなどで調べるか、販売店やメーカーなどに症状を伝えて、病害虫の種類を特定します。次に退治したい病害虫に効果のある農薬を選びましょう。

2. どんな種類の植物に農薬を使いたいのか

植物の種類は、野菜や果樹のように食用にするものと、草花や庭木のように食用にしないものに分けて考えます。特に収穫物を口にする野菜や果樹に散布する場合は、ラベルの「適用病害虫と使用方法」の表に、使用したい野菜や果樹が記載されている農薬を選ぶことが大切です(詳細は第10回「農薬のラベルの見方」で解説)。

注意したいことは容器のラベルや箱のデザイン面に「野菜や果樹の病害虫退治に」、「野菜に使用できる殺虫剤」と記載されていると、どの野菜にも使用できると勘違いして購入する人が見受けられます。ラベルの一覧表に「野菜類」という記載があったらハーブを含め、全ての野菜に使えます。しかし、トマト、キュウリ、ナス、リンゴなど特定の野菜や果樹のみが記載されている場合、記載されていない野菜や果樹に対しては食の安全性の観点から使用しないでください。必ず、自分が使いたいと思っている野菜や果樹が農薬のラベルにしっかり記載されているかを確認しましょう。

「スミチオン(R)乳剤」の適用内容の一部

3. 農薬を散布する面積や鉢数はどのくらいか

散布量は、庭や畑の面積、鉢やプランターの数によって異なります。小面積や鉢数が少ないときは散布量が少ないため、薄める手間がなく、そのまま手軽に使用できるハンドスプレー剤などが便利です。面積が広い、鉢数が多いときは散布量が多いため、水で希釈して使用する乳剤や水和剤を噴霧器で散布するのがおすすめです。殺虫粒剤や誘殺剤のペレット剤は面積にかかわらずスポット的に使用できます。

4. 病害虫に対する抵抗性にも注意しよう

効果がよいからと同じ農薬を連続して使用すると、病害虫が農薬に対して強くなる「抵抗性」が付いて、農薬が効かなくなってきます。そこで、殺菌剤、殺虫剤とも成分や作用の異なる薬剤を2~3種類そろえて順番に使用(輪番)することで、抵抗性が付きにくくなり、いつまでも効果を期待できます。

ただし、商品名や一般名が異なっても成分や作用が同じものがたくさんあります。この場合は、農薬を2~3種類用意したとしても、成分や作用が同じものをそろえたのでは輪番になりません。

たとえば、バラのうどんこ病・黒星病に使われる下の3製品は、商品名や成分の一般名が異なりますが、殺菌作用が同じなので同じ製品として取り扱います。つまり、輪番使用に適さないということになります。

・「STサプロール(R)乳剤(一般名:トリホリン)」
・「サルバトーレ(R)ME(一般名:テトラコナゾール)」
・「マイローズ(R)殺菌スプレー(一般名:ミクロブタニル)」

また、殺虫剤では、ダニの専門薬「殺ダニ剤」は特に抵抗性が付きやすいので、同じ作物には1回のみにとどめるようにしてください。汎用性の高い有機リン系殺虫剤、ピレスロイド系殺虫剤、ネオニコチノイド系殺虫剤はいずれも神経に影響を及ぼして害虫を退治しますが、それぞれ作用性が異なります。ネットで調べるかメーカーに問い合わせてなどして、輪番に適した製品を選ぶとよいでしょう。

【コラム:薬剤が効かない病害虫が増える未来にしないために】

作物を食べる、生育を阻害する、枯らすなどする病害虫も生きていて、逃げたり、抵抗性を付けるため、それらを全て防除することはできません。農薬の使用者、出来上がった作物を食する消費者に対して、より安全な農薬の開発が今後も続くと思います。病害虫に抵抗性が付いて効果が減少し、使用できない状態を避けるためには、効果の優れた薬剤を連続して使用しないことです。一人一人が輪番使用を心掛けることが大切です。

病害虫を退治する作用も、一部の薬剤を除き解明されています。同じ作用で病害虫を退治する農薬は、一般名や商品名が異なっても同じ農薬として考えます。

作用は殺菌剤ではFRAC※1コード、殺虫剤ではIRAC※2コード、除草剤ではHRAC※3コードに分けられています。興味のある人は「農薬の作用機構」で検索してください。残念ながら家庭園芸用に販売されている農薬の種類は少なく、このような表示はされていませんが、いずれは表示されるのではないかと思います。

※1 FRAC:Fungicide Resistance Action Committee(殺菌剤耐性菌対策委員会)の略
※2 IRAC:Insecticide Resistance Action Committee(殺虫剤抵抗性対策委員会)の略
※3 HRAC:Herbicide Resistance Action Committee(除草剤抵抗性対策委員会)の略

家庭園芸用よりも容量の多い農業用製品のパッケージには殺虫剤分類の表示

家庭園芸用よりも容量の多い農業用製品のパッケージには殺菌剤分類の表示

以上、実際に農薬を選ぶときにポイントとなる、4つのステップについて紹介しました。ぜひお役立てください。

次回は、農薬散布前の希釈方法など、準備段階において気を付けたい事項について解説します。

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