株式会社河野自然園代表。造園施工管理、ガーデンデザイン、球根と多肉植物の生産・販売、ガーデニング講座、イベント企画等幅広く活動。『小さな球根で楽しむナチュラルガーデニング』(家の光協会)等、著書多数。
── お祝いのメッセージをいただき、ありがとうございます。早速ですが、おふたりが草花に携わるお仕事に就かれたきっかけやエピソードを教えてください。
井上小学1年生の時に園芸に目覚めて、アズキの種をまいて育てたのが最初です。当時は園芸のおたく少女で(笑)、植物図鑑を毎日読みあさっていました。小学5年生の時には「園芸研究家になりたい」という夢を持ち、高校進学は東京農業大学第一高等学校を希望したんですが両親に反対されたこともあり、その後は遠のいていました。大人になって自然食品のお店をオープンした時に、コンテナやハンギングでお店の周りをきれいに飾ったところ、話題になりまして。要望があってコンテナのワークショップを開くうちに、そちらのニーズの方が高くなってきたので、屋号をつけてガーデニング講師として活動し始めました。5年前からは法人化して、植物の生産や造園、ネットショップ、講習活動などを行っています。自分の好きなことを仕事にできて、幸せだなと思いますね。
城後私は小さい頃から幅広く生き物に興味があり、大学では畜産の勉強をしていました。就職には生き物に関係する企業や業種全般で探した結果、サカタのタネに出合い、この業界に入りました。
── 井上先生は子どもの頃の夢がかなったのですね。では、ガーデニングの世界に再び呼び戻してくれた、コンテナガーデニングの魅力を教えてください。
井上お庭がなくてもコンテナさえあればどこででもガーデニングを楽しめること、移動が可能なところですね。
城後そうですね、季節によって日当たりがよくなる場所、わるくなる場所もあるかもしれませんが、気軽に飾る場所を変えられるのがメリットですね。
井上数種類の草花を組み合わせて寄せ植えすれば、コーディネートする楽しみがあります。咲いた花や蕾などを摘んで、テーブルフラワーにもできますし。それからフラワーアレンジは飾ったらそこが完成形で、あとは衰えていきますが、コンテナガーデニングでは草花が育っていく喜びがありますね。
城後寄せ植えにすると一層華やぎますよね。寒さや暑さに弱い植物は、花壇に植えっ放しにはできず、苦手な季節を迎える前に鉢上げして養生させる必要があります。けれども、季節ごとに適した環境に移動できるコンテナ栽培なら、そういう植物も植えられて組み合わせの幅が広がるのも魅力です。
── コンテナでの草花の組み合わせで、注意すべきことはありますか?
井上日当たりが好きなもの、乾燥を好むもの、耐暑性や耐寒性など、植物の性質に注目して組み合わせることがまずひとつ。それからデザイン的なことをいえば、カラー、草丈、フォルム、テクスチャーが大事な要素になります。
── カラーは特に、パッと目に飛び込んでくる重要な要素になりますね。
井上そうですね。色合わせには大きく分けて2通りあって、上品で穏やかなイメージになる同系色か、派手ではっきりと目立つ反対色か、どちらかに決めるとうまくまとまります。
城後間に葉ものを入れると、全体的にやわらかい印象になりますね。
井上そうですね、カラーリーフを入れると調和しますね。
城後引き立て役も大事ですよね。
井上ええ、組み合わせを考える時には主役、準主役、脇役の役割づけをすることが大事です。つい好きな花ばかり植えると、主役のお姫さまばかりがいっぱいいて暑苦しくなった!なんてこともあります(笑)。 ひとつひとつはかわいくてもまとめて寄せ植えすると、まとまりがわるくなることもあるんです。
── 草丈、フォルム、テクスチャーはどういう工夫をしたらいいですか?
井上草丈は、植物によっては背が高くなるものや、つる性のもの、枝垂れるものなどがあるので、コンテナのどこに配置するか考える必要があります。フォルムは花や葉の大きさや形に注目してみてください。大きな葉、小さな葉、ギザギザの葉、プクプクした葉、いろいろありますよね。これらを面や線、点の組み合わせとして考えます。テクスチャーは花や葉の質感です。ツヤのある葉、ザラザラした葉、産毛をもつフワフワの葉など、こちらもさまざまにそろいますよ。寄せ植えは草花を使ってデザインする、コーディネートの楽しみが魅力なんです。
城後私は球根植物の分野を得意としているのでひと言添えるなら、コンテナの寄せ植えではぜひキルタンサスなどの小球根類に注目してもらいたいです。丈が短くて小輪のかわいらしい花は、花壇に植えるとほかの植物に隠れてしまうことが多いので、コンテナで見栄えよく使ってもらえたらなと思います。
── コンテナで寄せ植えする場合、植えつけ方の工夫のポイントはありますか?
井上今、2つの流れがあります。少し余白を残して植えて、成長していくことで完成形を迎える方法です。株間をあけて植えるので使う苗が少なくて済むし、じっくり長く成長していく姿を楽しむ利点がありますが、見ようによっては最初の見栄えがよくないデメリットもあります。
もうひとつは植えつけ時に完成形の見栄えにする方法です。作った時点で見栄えがよいのですが、かなりの数の苗を植え込まなくてはいけなくなりますし、育てる喜びは小さいかもしれませんね。
城後メンテナンスの仕方も変わってきそうですね。
井上ええ、そうです。成長していく過程を楽しむ寄せ植えは、肥料をやって生育を促すメンテナンスをします。一方で最初から完成形にした寄せ植えは、花がらや枯れ葉をまめに摘んで蒸れを防ぐなど、手をかけることが大事になります。
── メンテナンスの話が出たので、土や肥料、薬剤の使い方のコツを教えてください。
城後市販の培養土が手軽ですね。水はけと水もちのバランスがとれて、元肥も十分に配合された「花三昧」が使いやすいですよ。幅広く花全般に使えるので、初心者でも安心です。
井上「花三昧」は失敗なくなんでも育つので、おすすめですね。それから、3月になるとアブラムシが発生しやすいので、殺虫剤「オルトラン粒剤」を土に混ぜておくと、防除できますよ。
城後肥料の場合は、緩効性の化成肥料「マグァンプK」と有機質配合肥料「マイガーデン」、有機の液肥「ネイチャーエイド」、高機能液肥「ホスカル」が便利ですね。
井上植えつけ後の追肥は、ゆっくり長く効くタイプの緩効性肥料を置肥します。液肥は持続性はないのですが、速効性があるのですぐに効果を得たい時に便利です。花の状態を見て、使い分けられるようになるといいですね。
取材・撮影:サカタのタネ
2016年1月7日 更新
※ スペシャル対談は後編に続きます
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2009年にサカタのタネに入社。通信販売部に所属し、苗の発送担当を経て現在は球根の販売企画を担当。私生活では貸農園で野菜を栽培し、自宅では多肉植物やプランターで花も育てている。好きな植物はチューリップ。