株式会社河野自然園代表。造園施工管理、ガーデンデザイン、球根と多肉植物の生産・販売、ガーデニング講座、イベント企画等幅広く活動。『小さな球根で楽しむナチュラルガーデニング』(家の光協会)等、著書多数。
── 対談前編ではコンテナガーデニングの基本的なことを教わりました。後編ではステップアップして、ワンシーズンではなくて、長いスパンで楽しむ寄せ植えについてうかがいたいと思います。
※ 前編はこちらから読むことができます。
井上そうですね。ビギナーの方はワンシーズンで終わる一年草の寄せ植えからスタートすると思いますが、ワンランク上げるとすれば、枝ぶりの美しい低木を主役にして、その足元に一年草を植えて模様替えを楽しむといいと思います。次のステップは毎年花を咲かせる宿根草との組み合わせ。一年中、葉が美しいヒューケラは使いやすいですね。宿根草や枝ぶりの美しい低木が入ると、一年草のみで作った寄せ植えよりも風格が出てきますよ。
城後寄せ植えに低木やヒューケラなどの葉ものを取り入れると、グッと印象が変わりますね。
私自身いつも悩むのですが、さあ寄せ植えを始めよう、という時にどんなことに気をつけたらよいですか。
井上草丈や株張りが最終的にどのくらいになるのかを見定めて、配置のバランスを取ることが大切です。ただし、宿根草は植えっ放しにしていいわけではなく、株分けなどの手入れが必要になります。
城後なるほど、植物の成長を想定しながら作ることがポイントになってきますね。ほかにも、球根植物を組み合わせたりすると鉢植えの変化を長く楽しめますよね。
井上ビギナーの方には、チューリップ、ムスカリ、ヒヤシンス、スイセン、クロッカスなどの球根植物がおすすめです。これらはパンジーやビオラなど、春先に活躍する草花とよく合います。チューリップひとつとっても、品種がバラエティーに富んでいて奥が深いんです。球根植物は何が楽しいって、3~4ヵ月土に埋まっていた球根が春先に芽を出し、茎葉を伸ばしてきれいな花を咲かせる…そんなドラマチックな変化が見て取れること。その生命力を見ていると、力をもらえます!
球根について語ったら熱くなっちゃう(笑)
城後球根植物の魅力は株張りが大きくなりやすい一年草や宿根草とは違って、コンパクトなので限られたスペースでもたくさん植えられるのがいいですね。また開花期も短いので季節性を感じやすいのも魅力です。サクラのようにパッと咲いてサッと散る潔さが、日本人には好まれるんじゃないでしょうか。
井上ところがね、アイスチューリップができましたからね(笑)
城後ああ、そうでした(笑) アイスチューリップは花もちがよく、12~1月頃に1ヵ月くらいは同じ花が咲き続けます。
井上まだ「この時期にチューリップが咲くの!?」と驚かれる段階ですが、冬も楽しめるチューリップをもっと普及していきたいなと思います。
── 確かに一年草のほかにライフサイクルの長い植物を組み合わせると、楽しみ方の幅が広がりそうですね。では、コンテナ栽培に向く植物の中でも、最近、井上先生が注目している品種を教えてください。
井上ペチュニアだと「恋べに」。寄せ植えに合わせやすく、主役にも脇役にもなる優しい色合いです。
城後「恋べに」は今シーズン新登場の品種です。さっそくご紹介いただきありがとうございます(笑)
井上花弁の先がほんのりピンクに色づいて、控えめな中にも個性が感じられますね。
城後ペチュニアは鮮やかな色や華やかな印象の主役級が多いですが、淡くてかわいらしい花色の「恋べに」はぜひ寄せ植えに取り入れていただきたいです。
井上落ち着いた色合いが新鮮な「和・ペチュニア(R)」シリーズの、「キナココア」、「あずき」、「紫水晶」もおすすめです。
紹介するふたつの鉢植えは私が実際に寄せ植えをしたものなのですが、写真1は和・ペチュニアの「あずき」を主役にしました。淡いニュアンスカラーを生かすため、引き締め効果のある紫のトレニア、和・ペチュニアの「八重紫」とブロンズ色の葉をもつコリウスなどを脇役にして引き立てています。これらは「あずき」の花芯の色ともマッチしてシックな雰囲気に仕上がりました。
中央のシルバーリーフをもつヘリクリサム シアンスチャニカムは全体を調和させる役割があります。ライフサイクルの長い宿根草なので、このヘリクリサム シアンスチャニカムのみ残して観賞期が終わった一年草を植え替えれば模様替えを楽しめます。
井上写真2は和・ペチュニア「紫水晶」が主役。光が当たると色が明るく濃く出て、日陰だとニュアンスカラーが際立つミステリアスな花です。脇役にプレクトランサス「ピンククリッカー」、ピンク系の斑が入るニューサイランを入れ、同系色の落ち着いた雰囲気にまとめました。アクセントに黄色い葉をもつジャスミン「フィオナサンライズ」を、調和役としてクッションブッシュをプラスして変化をつけています。
写真1のヘリクリサム シアンスチャニカムと同様にニューサイランは宿根草なので、季節が進んで一年草の開花期が終わったらニューサイランだけ残して模様替えを楽しめますよ。それから、ピンクはグレー系の色と相性がいいので、コンテナはクラシカルなイメージのトロフィーポットを選んで花色を引き立てました。
── 実際の寄せ植えを見させていただくと、色の組み合わせ、葉の質感の組み合わせ方など、具体的にイメージできました!ペチュニアは花色が豊富なうえに開花期が長いので重宝しますね。ほかにはどんな植物がおすすめですか?
井上ユーフォルビア「ダイアモンドスター」はすごく花つきがいいのでおすすめですよ。
城後八重咲きの品種ですよね。同じユーフォルビアの「ダイアモンドフロスト」はよく寄せ植えに使われますが、「ダイアモンドスター」はこんもりと咲いてまた違うよさがありますね。
井上そうそう、密になって咲くから本当にきれい。長く咲き続けるのもいいですね。エキナセア「ストロベリーショートケーキ」は八重咲きで微妙な色合いが好き。それとコンボルブルス「アルサエオイデス」はシルバーリーフにピンクのかわいい花が栄えてすてきで、開花期も長いんです。ギレニア「ピンクプロフュージョン」は、ミツバシモツケなんですがピンクの花で、葉がブロンズ色。花だけでなく、葉も美しい植物は重宝します。
城後明るい黄色い小花のメカルドニア イエロークロサイト(R)もおすすめです。
井上ああ、いいですね。こんもり茂って小花がよく咲きます。ニュアンスカラーのエキナセア「カンタローブ」もきれい。アカンサス「ホワイトウォーター」もいいですよ、葉に白い斑が入るんです。
── たくさんの品種をセレクトいただき、ありがとうございます。植物の組み合わせを考えるのは楽しくもありますが、一方で植物の特性がまだよくわからないビギナーにとってはハードルが高い…という声も耳にします。そのような方に向けて発信する、井上先生とサカタのタネのコラボ企画も進んでいるそうですね。
城後「プラスガーデン青の庭」というテーマで、チューリップの球根とネモフィラの種をセットにした販売企画です。幅約65cmの一般的なサイズのプランターを目安に、適切な球根数や種の粒数を井上先生にプランニングしてもらいました。お客さまから「植物の組み合わせ方がわからない」という声が多いので、こちらから相性のよい球根と草花の組み合わせを提案していく商品です。今後もチューリップを中心とした草花との組み合わせのセット販売のラインアップを増やしていく予定で、井上先生にはプランニングと実験をお願いしています。
井上色の組み合わせとか、花形の違いの組み合わせとか、背丈の違うものの組み合わせとか、球根の球数や種の粒数など、商品開発に向けてさまざまな実験をしています。
城後初心者でも、より組み合わせの楽しみ方が広がると思います。今後も楽しみにしてほしいです。
── 相性のよい植物を組み合わせて寄せ植えが美しく仕上がったら、庭の主役として見栄えよく飾りたくなります。コンテナを上手にディスプレイするコツをぜひ教えてください。
井上コンテナを生かすような、シンプルな背景を作るといいと思います。例えばマンションのバルコニーの場合、コンクリートがそのまま見えると味気ないので、ウッドパネルやフェイクのブリック、タイルなどでカバーすると、コンテナがよく栄えますよ。それから、同じ鉢をたくさん並べると平坦になってしまうので、大きさや形の異なる鉢を選ぶと変化が生まれます。スタンドを使うのもひとつの方法です。縁に枝垂れる植物を植えると、流れるような動きが出ます。
城後ガーデン雑貨を加えるとしたら、どんなアレンジがおすすめですか?
井上コンテナをバードケージに入れて飾ったりとか、かわいいクマのオーナメントをあしらったりとか、ガーデン雑貨を取り入れるだけで、またコンテナの見栄えが変わってきますが、統一感をもたせることは意識しておきたいですね。ジャンクやロマンチック、ファンシーなどテーマを決めて素材やテイストなどを統一すると、うまくまとまりますよ。
── コンテナガーデニングの魅力や工夫のポイント、メンテナンス、飾り方など全般にわたってわかりやすく教えてくださり、 ありがとうございました。最後に、これからコンテナ栽培を始める方へメッセージをお願いします。
井上植物がひとつあることによって、暮らしの潤いが全然違ってくると思います。植物も生き物ですから手入れが必要ですが、穏やかな気持ちになれるという意味では、なくてはならない存在だと思うので、ぜひ植物を暮らしに取り入れてもらいたいです。そのためにも、「ガーデニングっていいな」「植物っていいな」ってわかってもらえるように、ガーデニング人口をもっと増やしていく提案を続けていきたいなと思っています。植物好きな仲間を増やしたいですね。
城後若い世代だと仕事などに追われて毎日忙しいと思います。でも時間を見つけてガーデニングをすると、現実とは少し離れることができ、日々の疲れの癒しになると思います。私も植物の蕾が上がってきたのを見つけて、「おっ、きた!!」と気分が上がったりしますし。気分転換として安らぎを得るためにも、ガーデニングに目を向けていただきたいなと思っています。
植物が新芽を出し、蕾をつけてすくすくと育っていく健やかな生命力にふれると、心が動かされるもの。ガーデニングの醍醐味はまさにそこにあり、植物と一緒に暮らすことは心を豊かにすることにつながります。
サカタのタネも、育てやすく、流行を敏感に察知した品種の開発に励み、植物のラインアップを充実させて皆さまのガーデニングライフをサポートしていきたいと思います。おふたりとも、ありがとうございました。
取材・撮影:サカタのタネ
2016年2月4日 更新
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2009年にサカタのタネに入社。通信販売部に所属し、苗の発送担当を経て現在は球根の販売企画を担当。私生活では貸農園で野菜を栽培し、自宅では多肉植物やプランターで花も育てている。好きな植物はチューリップ。