草花を育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
今回はシックな色合いで冬の庭を彩るハボタンをご紹介します。
寄せ植えや切り花もおすすめ。
花の少ない冬に咲くハボタンの姿を思い浮かべ、タネまきから始めましょう。
秋も深まり寒さが身にしみてくる頃に、ますます葉色が鮮やかに輝くハボタンは、古くから切り花や花壇などに利用されてきました。今では彩りの乏しい冬を明るくしてくれる貴重な観賞植物として、関東以西の冬の花壇には欠かせないものになっています。
ハボタンはヨーロッパで野菜として食べられていたケールがルーツとされています。それが江戸時代にオランダよりもたらされ、貝原益軒の『大和本草』にはオランダ菜として"味佳し"という記述があります。当時はきっとキャベツのような味でおいしかったのだと思いますが、現在のハボタンは苦みがあり、残念ながら食用にはなりません。
ハボタンはキャベツが原種とされているため、その生態的特性はキャベツに近いものがあり、比較的低温の方がよく生育し、10~15℃が適温です。花芽は低温で分化し、長日で開花が促進されます。また、ハボタンの葉色は品種によって差がありますが、大体15℃以下の低温にあうことで発色し始めます。その後さらに低温にあうことで、より濃さを増していきます。
ハボタンは色づいた葉を観賞しますが、春の到来を告げてくれるかのように、最後に淡い黄色の花を咲かせます。その淡い花は野草のような優しい趣きがあり、ハボタンのフィナーレを飾るにふさわしい美しさです。
そんなハボタンは、とても丈夫で育てやすい植物です。来年のお正月は、タネから育てたハボタンで玄関を華やかに彩ってみましょう。
一般的によく知られている、草丈が低く、地面を覆うように葉を広げる印象のハボタンです。パンジーやビオラ、プリムラなど同じような草丈の花と組み合わせて寄せ植えにするととてもかわいらしいです。
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シックな彩りのセミドワーフピンクパラソルとの寄せ植えにもおすすめ小鉢で仕立てると、わい化剤を使用しなくてもコンパクトになる品種です。セミドワーフタイプの丸葉種。花壇はもちろん、寄せ植えでも輝きます。
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寄せ植えにおすすめのわい性種大阪丸葉系華シリーズ。白や赤に色づく部分が大きく、ほどよいウェーブがかかります。
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3色そろって大活躍!多粒まきにも!東京丸葉系 つづみシリーズ。葉の枚数が多く、葉が立ち上がるタイプなので、バランスのよい形になります。
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寄せ植えや花壇に大活躍!大阪丸葉系、東京丸葉系、名古屋ちりめん系など、代表的な形と色をそろえたミックスです。
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存在感たっぷりの密なフリンジタイプ名古屋ちりめん系衣シリーズ。葉の縮れ方が密で、葉柄も短く、まとまりのよい品種です。
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縮れた葉形がキュート 寄せ植えや多粒まきに小鉢で仕立てると、わい化剤を使用しなくてもコンパクトになります。ちりめん系で、寄せ植えにもかわいらしく使えます。
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細かい切れ葉は芸術的葉の切れ込みが従来のものより細かく、ほかの花とも合わせやすいので寄せ植えにおすすめです。薄ピンクから濃い赤まで色幅があり、白もわずかに入ります。
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葉色が寒さにつれて変化 葉の形も新鮮な印象珍しい葉形の切れ葉タイプ。中心部が白く発色し、寒さが深まると色づきます。花壇の縁どりに使いたい品種です。
草丈がよく伸びるタイプのハボタン。切り花向けや踊りハボタン作りに向いていますが、草丈の低い花と組み合わせて高低差を楽しむ寄せ植えにしてもすてきです。
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冬のバラのように整う草姿を切り花で茎がかたくまっすぐ伸びて寄せ植え、切り花におすすめな一代交配種です。
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美しい色の葉をたっぷり楽しみたい葉の色は鮮やかな濃紅色で、枚数も多く赤いバラのようにも見え、とても存在感のある葉ぼたんです。
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上品なフリルタイプ高性桃色フリルタイプの品種です。やや遅めに発色し、中心部は淡い桃色になります。
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細かいフリンジがゴージャスに彩る寄せ植えや切り花に向く名古屋ちりめん系の品種。細かなフリンジが特長です。
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繊細で優美な葉の切れ込みと葉色の幅も魅力華やかな切り花向きタイプ。切れ葉系の高性種。白から赤まで色幅があります。ピンチ(摘心)をすると踊り作りにも利用できます。
秋の低温で発色するため、それまでに株作りをします。寒地では6月下旬~8月上旬までに、暖地では7月下旬~9 月上旬までにタネをまきます。タネをまく時期が高温期なので、タネまき用土は新しい土を用います。赤玉土(小粒)と腐葉土を半々に混合した用土がまきやすいです。タネ袋(大袋を除く)に入っているタネの量は10.5cmの素焼鉢の大きさが適しているようです。
鉢に8分目ほど土を入れ、表面を平らにならしたあと、タネを鉢内にまんべんなくばらまき、3mmくらい覆土し、たっぷり水を与えます。鉢は風通しのよい半日陰の涼しい場所で、水を切らさぬよう管理します。発芽がそろったら速やかによく日の当たる場所に移動します。
タネをまく時期が高温期で乾きやすいので、発芽させるまでは乾かさぬよう気をつけます。
発芽後の生長は早く、10日前後で葉と葉が触れ合うほどになり、徒長しやすくなるので、本葉が2~3枚出た頃に6~7.5cmポットに鉢上げします。鉢上げ後の水やりは徒長を防ぐためやや水を控えぎみにし、週に一度、液肥を水やり代わりに与えます。
ハボタンはキャベツの一種。ヨトウムシやアオムシなどの害虫がねらっています。葉の食害を見つけたら、直ちに食害された葉の裏や鉢土の表面とその周辺を探してください。きっと近くにいますので見つけ次第、捕殺しましょう。
育苗期の水のやりすぎは徒長の原因になりますが、乾かしすぎは老化し葉の枚数が減少します。苗がややしおれかけている頃にたっぷり水を与えるのが徒長を防ぐコツです。肥料不足は、水不足同様老化を引き起こすので、定期的に液肥を与えてください。
鉢上げした苗は約1カ月で鉢内に根が回るので、鉢替えか、花壇などに定植します。小鉢作りは9~10.5cm鉢に、大鉢作りは15~18cm鉢に植えま す。花壇やプランターなら20~25cm間隔に植えるようにします。鉢上げ用土は赤玉土(中粒)と腐葉土を半々に混合したものにピートモスを3割加えます。定植2~3週間後に大粒の緩効性肥料を9~10.5cm鉢なら2~3粒、15~18cm鉢なら5~6粒程度与えます。それ以後は化成肥料の追肥は与えません。
チッ素肥料が効きすぎると発色が遅れるので、肥料のやりすぎに注意し、化成肥料の追肥は1回のみにとどめます。なお、発色し始めてからは週に1度、3~4 回ほどカリ分の多い液肥を与えると、耐寒性が増すようです。きれいな発色を促すには戸外の日当たりのよい場所で管理します。
タネまき適期の早い時期にまくと草丈が高く、株張りも大柄になります。反対にタネまきを遅くすると、切り花用品種でも草丈が低く小柄になります。そんな性質を利用して、時期をずらしてタネをまくことで、高低差をつけた立体的な花壇や寄せ植えができます。
切り花にする場合は鉢上げ後より、草丈の半分より下の葉を月に1~2度取り除き、発色後は生長が止まるので、草姿を整えて仕上げます。育苗中、風で倒伏したり茎が曲がらないように支柱を立てましょう。
発色後のハボタンはほとんど生長しないので、寄せ植えをする場合は、隙間なく密に植えることが、きれいに仕上げるコツ。ハボタンは春に向かって淡い黄色の花を咲かせるので、鉢のままで観賞できますが、切り花にして部屋に春を呼んでみましょう。
2016年7月14日更新
菅野政夫(かんの・まさお)
1952年山形県生まれ。神奈川県立相模原公園副園長、サカタのタネグリーンハウス館長。1973年坂田種苗株式会社(現(株)サカタのタネ)入社後、試験場勤務20年以上、オステオスペルマムなど栄養系植物の栽培・育種に携わる。