2017/01/26
採れたてのみずみずしい野菜を味わえることはもちろん、おいしさと一緒に「安心」を実感できることも、家庭菜園の大きな喜び。
春から準備を始め、夏に収穫を迎える野菜を取り上げ、薬膳料理研究家の北山彩子先生に、野菜の本来備えている働きと、その「チカラ」を効果的に体にとり入れる手軽なレシピを教えていただきました。
自分で作った野菜なら皮まで安心して食べられます
種から自分で育てる家庭菜園は、「安心」な野菜を手にするための何よりの方法。完全無農薬は難しくても、できるだけ農薬を使わないように工夫することは十分可能だと思います。
野菜や果物は、果肉部分だけでなく、皮にも栄養がたっぷり含まれています。例えばスイカ。あの緑の皮の部分は捨てている方も多いかと思いますが、実は赤い部分よりも作用が高く、お茶にすることもできるのです。農薬に頼りすぎず、自分の手で愛情込めて育てたものなら、安心して皮も使えますね。
家庭菜園は究極の「地産地消」。旬には野菜のパワーが高まります
「自分の住んでいる土地で作った農作物を食べる」という地産地消。家庭菜園は、究極の地産地消だといえるでしょう。と同時に家庭菜園では、旬のものを栽培、収穫することになります。今スーパーでは便利なことに旬に限らず年中さまざまな野菜が手に入りますが、旬のものは栄養価が高く、その食材が持つ作用も高いのです。
家庭菜園の野菜の優しい味わいは、注いだ愛情のたまもの
種から育て、収穫し、食べる醍醐味が家庭菜園にはあると思います。自ら育てた野菜や果物のおいしさは格別ですし、毎日お世話をし、愛情を持って育てると、野菜にもその愛情やエネルギーが伝わるもの。それが優しい味わいとなるのです。
また、丹精込めて育て、ご家族やご友人、ご近所の方にお裾分けしたり、食材そのものをそのままいただくことはもちろん、料理の材料にして味わったりと、家庭菜園の恵みを大きく広げられることも体と心にうれしいことですね。
トマトは夏野菜の代表で、暑い夏にはぴったりの食材です。
代表的な働きには、胃腸の働きを活発にして消化を高める作用があり、ヨーロッパでは「トマトのある家に胃腸病なし」ということわざもあるほどです。
夏は冷たいものをとりすぎて胃腸の働きが悪くなり、食欲不振になりがちですが、トマトを食べることで、これを未然に防ぐことができます。
体をやや冷やす性質で、体内にこもった熱を冷ます働きもあるので、鼻血や発熱、口内炎などのほてりを伴う症状の改善にも役立ちます。
また、のどの渇きを癒やし体内の水分を補う働きがあり、ビタミンやミネラルも豊富なため、汗と共に流出しがちなミネラル分も補えます。
トマトの酸味のもととなっているクエン酸は、疲労物質を取り除いて疲労回復にも役立つため、体力を消耗し疲れがちな夏の体を癒やすのにぴったりの食材です。
また、血圧を下げる効果もあり、高血圧予防にも作用します。トマトは一年中見られる食材ですが、体の熱を冷ます作用があるので、体が冷える冬場には、生では食べず、なるべく煮るなど加熱調理をして食べるのがおすすめです。
[材料(4人分)]
- ・ミニトマト … 8~12個
- ・【A】酢 … 100mL
- ・【A】水 … 50mL
- ・【A】砂糖 … 大さじ3
[作り方]
- 1. 【A】を鍋に入れ、ひと煮立ちさせる。
- 2. ヘタを取り、洗ったミニトマトを1が熱いうちに漬ける。
- ※ 大きめのミニトマトを使用する場合は、1の段階で鍋にミニトマトを入れ一緒に煮るとよい。ミニトマトが少し軟らかくなったら火を止める。
ピクルス液に完全に浸る状態で冷蔵室で保存。1週間程度で食べ切って
缶詰や食用油などさまざまな形で、季節を問わず、私たちの口に入るトウモロコシですが、生のものを食べられるのは、旬の夏だけ。
体内の余分な水分を排出する利尿作用に優れているため、湿気が多く、余分な水分が体内に滞りやすい日本の夏にはぴったりの食材です。利尿作用は、慢性的なむくみや体のだるさ、湿疹の改善に効果を発揮するほか、尿路結石にも作用するといわれています。
また、消化を促進し、胃腸の調子を整える作用もあることから、消化不良や食欲不振にも役立ちます。
そして実は、捨ててしまいがちなトウモロコシの「ひげ」は、種実以上に、利尿作用が高く、トウモロコシのひげ部分を日干しにしたものは、「南蛮毛」といわれ、むくみ防止や利尿作用がある生薬として知られています。家庭で採れたトウモロコシは、ひげも捨てずにぜひ活用してみてください。黒い部分はカットし、きれいな部分のみを、さっとゆで細かく切ってサラダに混ぜたり、フライパンで茶色く色づくまでいって、スープやサラダのトッピングにしたり。煎じてお茶にする「トウモロコシのひげ茶」もおすすめです。
[材料(4人分)]
- ・トウモロコシ(生) … 300g
- ・ズッキーニ … 240g
- ・塩 … 分量の1%
- ・パセリ … 20g
- ・オリーブオイル … 適量
- ・【A】パン粉 … 大さじ4
- ・【A】オリーブオイル …大さじ1
[作り方]
- 1. トウモロコシのひげを取り、皮をむき、ズッキーニを洗う。
- 2. ズッキーニとトウモロコシは5cmの長さのくし形に切る。
- 3. 1の重さの1%の塩を、ズッキーニ、トウモロコシそれぞれにまぶす。
- 4. パセリを洗い水気を切り、みじん切りにして【A】と合わせる。
- 5. 3を耐熱容器に入れ、4を散らし、オリーブオイルを適量まわしかける。
- 6. 200℃に余熱したオーブンまたはグリルで焼き色がつくまで焼く。
生のトウモロコシとズッキーニは、焼く前に塩をもみ込むのがポイント
キュウリの成分の90%以上は水分。このみずみずしさこそが、夏にふさわしい薬効といえます。キュウリの水分には、渇きを止めて体を潤す作用があるため、汗で失われた水分を補うのに最適です。また体の余分な熱を冷まし、熱を取り除く作用、喉の渇きを癒やす作用もあるので、夏にはぜひとりたい食材です。昔から、日焼けややけどをしたときには、キュウリで湿布をするとほてりが落ち着くといわれていますが、これもキュウリの作用を考えれば理にかなった対応法。その他、のぼせやほてりに効果的です。
キュウリは、体の余分な水分を排出する利尿作用にも優れているので、体のむくみ解消にも役立ち、水の代謝を改善してくれます。
[材料(4人分)]
- ・キュウリ … 1本(130g)
- ・キウイフルーツ … 2個(200g)
- ・レモン汁 … 小さじ1
- ・氷砂糖(または砂糖) … 40g
- ・お湯 … 1カップ
- ・ミント … 適量
[作り方]
- 1. キュウリとキウイフルーツは皮をむき、小さく切る。
- 2. 氷砂糖とお湯を合わせて弱火にかけ、氷砂糖を溶かす。溶けたら火を止め、冷ます。
- 3. 1・2とレモン汁を合わせてミキサーにかける。滑らかになったら完成。仕上げにミントを飾る。
包丁あるいはピーラーで皮をむくことで、キュウリの青臭さが抑えられます
ナスは、体の過剰な熱を冷まし、炎症を鎮め、腫れを抑える働きがあり、口内炎や目の充血、ほてり、イライラなどの熱が引き起こす症状の改善に効果があります。
血の巡りを促し、解熱作用もあるため、熱を持った吹き出物にも作用し、血行不良の改善にも効果的です。
また、ナスニンというナスの紫色の色素はポリフェノールの一種で、抗がん作用、抗血栓作用、コレステロール低下作用、老化防止作用があるとされています。
ナスは、体の熱を冷ます性質が強いため、暑い時期にとりたい食材ですが、冷え性の方や胃腸が弱い方は、加熱して食べるようにし、食べ過ぎには注意が必要です。ショウガやネギ、ニンニク、シソなど体を温める食材と一緒に、組み合わせて食べるのがおすすめです。
[材料(4人分)]
- ・ナス … 4~5本(400g)
- ・塩 … 3つまみ
- ・豚ひき肉 … 300g
- ・ピーマン(赤) … 3個
- ・シシトウ … 6本
- ・バジル(生) …(あれば)適量
- ・ニンニク … 2かけ
- ・【A】酒 … 大さじ4
- ・【A】しょうゆ … 小さじ2
- ・【A】オイスターソース … 小さじ2
- ・【A】砂糖 … 小さじ2
[作り方]
- 1. ナスを洗い、ヘタを取る。縦半分に切り、1cmの厚さの半月に切り、塩をまぶしておく。水気が出たらよく絞る。
- 2. ピーマンを乱切り、シシトウは千切り、ニンニクはみじん切りにする。
- 3. フライパンに油とニンニクを入れて、弱火で炒める。香りが出てきたら豚ひき肉を入れる。中火〜強火で肉の色が変わり、肉から出た脂がなくなるまでしっかり炒めたら、ナスとピーマンを加えて炒める。
- 4. ナスがしんなりしてきたら、【A】を加え、炒める。
- 5. 全体に【A】が絡んだら、シシトウとちぎったバジルを加え、全体を混ぜて完成
野菜はカットして準備。シシトウとバジルは最後に加え、食感と香りを残します
ヤマイモは、漢方薬では「山薬(さんやく)」という名で、「八味地黄丸(はちみじおうがん)」などの原材料の一部ともなっているほど、優れた薬効が高い食材です。
その働きは、生命エネルギーを補って消化吸収を高め、胃腸の働きを整え丈夫にします。これにより、スタミナ不足を解消し、疲労回復や滋養強壮に効果を発揮するので、食欲がない、疲れやすい、下痢をしやすい、風邪をひきやすい、そんな症状をお持ちの方にはおすすめです。
のぼせやほてり、頻尿や尿漏れ、足腰のだるさや痛み、夜間尿などの解消にも効果があるといわれ、健康維持にも役立ちます。
また、血糖を下げる働きの他、老化防止にも良いので、ぜひ毎日とりたい食材です。
ヤマイモは、長イモや大和イモなどに大別されますが、薬効は同じとされています。ついついむいてしまうヤマイモの皮ですが、丸ごと食べる方が特に薬効が高いといわれているので、皮ごと調理することをおすすめします。
効果は緩やかですが、毎日少しずつでも食卓に取り入れることで、体調の変化に気づくことができるでしょう。
[材料(4人分)]
- ・ヤマイモ … 400g
- ・油 … 適量
- ・白ごま … 適量
- ・黒ごま … 適量
- ・【A】白ごまペースト … 大さじ1
- ・【A】オイスターソース … 大さじ1
[作り方]
- 1. ヤマイモを直火またはフライパンで焼き、ひげを取り(直火の場合は、フォークで刺して焼くとやりやすい。IHの場合は、フライパンで転がすように焼く)、5cmの長さの拍子木切りにする。
- 2. 【A】を合わせておく。
- 3. フライパンに油を熱し、1を入れて炒める。
- 4. 両面に焼き色がついたら弱火にし、2を加えて絡ませる。全体に2がなじんだら完成。
- 5. 盛り付けたらお好みで白ごま・黒ごまを振る。
皮の表面のひげは焼き切ってからカット。サクっとした歯触りを楽しむため拍子木切りに
皮付きのまま炒めることで、素材の働きを余さず吸収。風味も濃厚です
夏が旬のエダマメ・茶豆は、余分な水分を排出し、体内の水分量を調節するため、梅雨時の疲労やむくみを解消するのに最適な食材です。消化吸収を高めることで滋養を付ける働きがあるため、特に食欲不振を伴う夏バテやスタミナ不足、疲労回復に効果的です。
血液の栄養を補う作用もあるため、めまいやかすみ目といった血液不足の症状にも効果的。
また、メチオニンという成分がエダマメにはあり、ビタミンB1、ビタミンCとともに、アルコールの分解を促進し、肝臓の働きを助けてくれます。肝機能の働きを助けアルコールの分解を促すため、お酒のおつまみに食べたいもの。
エダマメの中でも黒豆は、若さを保つ老化防止の効果も。白髪や抜け毛が気になる方に特におすすめ。老化防止は一日で達成できるものではないので、こまめにとることをおすすめします。
夏の風物詩であるスイカは、体の熱を冷ます働きに優れています。
体内にこもった熱を和らげる作用があるため、熱中症予防や暑気払いにおすすめの食材です。夏バテで食欲がないときにとるのが特に効果的。喉を潤す作用もあるので、汗をたくさんかいたとき、運動をした後など、水を飲んでも喉の渇きが収まらないときに有効です。一方で利尿作用もありむくみに良く、果実よりも白い部分や皮にはより優れた利尿作用があります。またトマトの1.4倍ものリコペンを含んでおり、動脈硬化の予防や美容にも良いといわれています。
胃腸を活性化する働きを持っているので、食欲が低下しがちで元気がないときにぜひ食べたい食材です。消化吸収を促進しながら元気を補うので、食欲不振によるスタミナ不足、体力低下の解消に効果的です。
ビタミンCはコラーゲン生成を助け、血管や神経を強くする効果があり、ジャガイモにはこれが含まれています。ビタミンCは加熱調理に弱いとされていますが、ジャガイモのビタミンCは加熱しても壊れにくいのでしっかりと摂取できます。
北山 彩子 きたやま さいこ
薬膳料理研究家。薬膳フードデザイナー
学習院女子短期大学家庭生活学科食物専攻 卒業後、多忙な会社員生活を送る中で、食の大切さを認識し、薬膳に興味を持つ。国立北京中医薬大学日本校中医薬膳専科および中医中薬専攻科を卒業し、同中医臨床研究科に所属。国際中医師、国際中医薬膳師、中医薬膳師の資格を持つ。東京・自由が丘にて主宰する薬膳料理教室「FOOD and LIFE」やテレビ・雑誌出演を通じ、誰にでもできる身近で家庭的な薬膳料理を提案している。
ホームページ:http://foodandlife.co.jp/