2017年03月02日
おいしくて健康にもよいといわれ、家庭菜園でも人気のブルーベリー。すでに育てている方も多いのではないでしょうか。
しかし、収穫はできたけど味はいまひとつだった経験はありませんか。
そんな悩みを解消すべく、約30年間ブルーベリーを育てている小尾さんに品種選びと栽培のコツを伺いました。
住む地域に合わせて品種を選ぼう
いまや日本で育てられるブルーベリーは約150品種もあり、私たちが購入できる品種も数多くなりました。
品種選びの極意は「作りたい品種ではなく、作りやすい品種を選ぶこと」。自分の住む土地の適地適作を知り、地域に合わせて極早生種、早生種、中生種、晩生種を選んでしっかり樹上で完熟させることがポイントになります。
夏、冷涼な地域では早生種、中生種を育てよう
小尾流でおすすめする適地適作は、熱帯夜がないような夏が冷涼な地域では早生種、中生種を育て、完熟果を収穫する栽培です。一般にハイブッシュ系の早生種は酸味が少なく、食べやすいという特徴があります。中生種は昼夜の温度差が大きいと甘みが増し、最高においしい実が収穫できます。これら品種の特徴を最大限に生かすため、熱帯夜がない、夏に冷涼な地域での栽培をおすすめします。
一方、夜温が30℃を超え、熱帯夜が何日も続く地域では、果実の糖が消耗して糖度が下がるのを防ぐため、熱帯夜がくる前に収穫できる極早生種、早生種の栽培をおすすめします。
ハイブッシュ系ブルーベリーの品種の選び方
地域 | 熱帯夜のない地域 | 熱帯夜のある地域 |
---|---|---|
系統 | ハイブッシュ系 早生種、中生種 |
ハイブッシュ系 極早生種、早生種 |
推奨品種 | 「トロ」 「サンライズ」 「ブルーヘブン」 「デューク」 「ハナンズチョイス」 「エチョータ」 |
「デューク」 「ハナンズチョイス」 「エチョータ」 |
- ※熱帯夜のない地域:昼は25℃、夜は15℃以内の地域
- ※栽培地の適地表現について:栽培地の適地はその土地の標高や平地、山間地であるか、周りの樹林の多少により異なる
鉢栽培なら度調整が簡単
ブルーベリーを育てるには土壌の酸度調整が必要とご存じの方も多いでしょう。ブルーベリーはツツジ科の植物で酸性土壌を好むため、地植えとなるとpH5程度まで下げる必要があり、酸度調整が難しくなります。また、多湿にも乾燥にも弱いため、水分管理も必要です。
一方で、鉢栽培であればこれらの条件を全て克服できます。ブルーベリーに適した鉢土を用意するだけで手軽に始められるので、まずは鉢栽培から始めてみませんか。その際、鉢は容量60L程度の大きめの鉢を使用します。pHを低くし、水やりを行い、乾燥防止のためのマルチング材を利用するため、苗木の状態からこのサイズの鉢に植え付けることで、段階的に鉢サイズを大きくしなくても済みます。
ピートモスを使わずに育てよう
小尾流栽培ではピートモスを使用しません。ピートモスは有機質を含んでいるのでコガネムシの幼虫がすみ着き、根を食害される恐れがあるからです。また、乾燥させると水分を吸いにくくなるため水分管理が難しくなります。ブルーベリーは酸性土壌を好むので、ピートモスを使用する方は多いと思いますが、小尾流はここが違います。
鉢土は赤玉土2:鹿沼土4:腐葉土4の混合に、元肥として鉢土60L当たり魚粉、油かす各200g施すことをおすすめします。そして、鉢土60L当たり酸度調整に硫黄華500gとカルシウム補給に硫酸カルシウムを200g 程度、3年に1回の頻度で混ぜ込みます。
剪定で元気のよい徒長枝を育てよう
小尾流剪定は、1~2月ごろの強剪定。ブルーベリーは今年伸びた枝に花芽が付きます。短果枝よりも徒長枝によい花芽を付けるため、細く短い枝は思い切って剪定しましょう。一般的な果樹栽培には向きませんが、徒長枝がどんどん出てくるように強剪定を行います。
強い枝と多くの葉を付けさせることで、葉の量に比例して果実も大きく、多くなり、収穫量が増すのです。苗木を購入した場合は、2、3年収穫を我慢して剪定を行い、骨格となる枝を作るとよいです。
水を切らさないようにマルチングは必須
水やりは栽培成功の大きなポイントです。根が細かく浅いブルーベリーは極端な過湿と乾燥に弱く、定期的な水やりと乾燥防止のマルチングは必須となります。 水やりの目安は表土が乾いたら、水が鉢の下から出るくらいに与えることです。
追肥は速効性のある液肥を1000倍に薄めて3~8月に月2~3回与えます。「ネイチャーエイド 有機の液肥」のような肥効が穏やかな液肥がおすすめです。
樹上で完熟させた果実を食べる裏ワザ
おいしい果実を収穫するためには完熟果を収穫することがポイントです。しかし完熟すると果実が落ちやすくなり、落ちる前に収穫しようとすると未熟果を収穫してしまいおいしくないことも…。
小尾流栽培では完熟しても軸から果実が落ちません。それはブルーベリー栽培で不足しがちなカルシウムを植え付け時に補給しているからです。カルシウムをブルーベリーに与えると細胞壁が強化され、軸から外れにくくなり、完熟果が落ちにくくなります。小尾さんの畑でもカルシウムを入れる前は大量に完熟果が落下していたのですが、カルシウムを与えてから完熟果の落下がほぼゼロになったそうです。
おいしい完熟果の見極めポイント
熟度の見極めにより全く食味が変わります。一般的には、果実の果柄痕が完全に開いた姿が完熟の印※となります。
- ※完熟の印(果柄痕)は品種により 若干異なります。
小尾 能敏 (おび・よしとし)
株式会社O-B-iベリー代表取締役。
日本ブルーベリー協会理事。
日本ブルーベリー協会認定栽培士。
昭和60年にブルーベリーの栽培を開始、45アールの面積に地植えで約550本育てているほか、鉢植えでも300鉢程度を育てる。
収穫した全ての果実は宅配によって販売。