2017/05/25
北から冷たい風が吹くころがダイコンの季節。
皆さまがよく食べているダイコンはどんな味でしょうか。「そういえば、ダイコンそのものの味についてあまり考えたことがない……」という方も多いのでは?
サカタのタネが育成したダイコン「冬自慢」は「本当においしいダイコン」です。生でのみずみずしさ、甘みはもちろん、肉質が緻密なので煮ても味の染み込みが早く、料理もラクラク、しかも煮崩れしにくい。そんな、味が自慢の「冬自慢」は、家庭菜園でもとても作りやすい品種です。今回はサカタのタネのブリーダーに「冬自慢」の魅力を聞きました。ブリーダーの「冬自慢」に対する熱い思いをご紹介します。
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は数百にも及びます。
――「冬自慢」の一番のおすすめポイントは何ですか。
高山
「冬自慢」をおすすめする点は、なんといっても「作りやすさ」にあります。なぜ作りやすいかというと、とにかく「鈍感」なのです。温度、土質、肥料について他の品種よりも鈍いんですね。だから「冬自慢」は初心者でも作りやすく、自慢できるダイコンが収穫できます。
――「鈍感」とは栽培にとってはよい意味で、環境の変化に対応できるということですね。
高山
ダイコンの産地でたくさん栽培されているのでプロの方からも「作りやすい」とお墨付きです。近年、暑かったり、寒かったり、雨が降ればどしゃ降り、また乾燥が続いたりと天候不順が当たり前となり、作物を栽培する上でとても作りづらい状況となっています。
ダイコンは他の作物と違って種まきできる期間が短く、種まき時期を逸してしまうと品種によっては、長過ぎたり、短過ぎたり、また全然育たなかったりすることがあります。皆さまの中にはそのようながっかりした経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「冬自慢」は比較的種まきできる期間が長く、失敗しにくいのでぜひ試していただきたいです。
――その他に、栽培のポイントはありますか?
岡田
「大根十耕」という言葉があるように、まずよく畑を耕します。生育初期の管理が大切で、特に本葉4、5枚のころに間引きをして1本立ちにしますが、その時期に雨風にたたかれると立派なダイコンに育ちません。このタイミングで病害虫の予防を行い、株元を土寄せしてやると丈夫なダイコンに育ちます。
また、「冬自慢」は葉の色が淡い黄緑色の品種なので肥料が切れたと勘違いして肥料をやり過ぎないようにしましょう。葉の色が黄色っぽくなったときが肥料切れのサインです。
――プロの方が行っているような栽培におけるコツやテクニックを教えてください。
岡田
「冬自慢」は育ちの早い品種です。作業効率を考えると一度にたくさん種をまきたいところですが、そうすると一斉に収穫期を迎え、採り遅れてしまうことがあります。そこでプロの方は植える間隔(株間や畝間など)や肥料の量を変えたりしながら「冬自慢」を栽培しています。間隔が狭かったり、肥料が少なかったりするとゆっくり育ち、その反対だと早く育ちます。家庭菜園で長く収穫を楽しみたい方にもおすすめです。
――ブリーダーとして苦労したことは?
高山
ダイコンはいろいろな会社からたくさんの品種が売り出されています。「冬自慢」を発売した当初は、そのよさをなかなか伝えられず、数あるダイコン品種のひとつとして埋もれていました。今となっては「驚異の鈍感さ」でダイコン産地の主力品種として栽培されていますが、何年も作り続けてもらわないと品種のよさが分かりません。年によって違う気候の変化にも耐えられる「鈍感さ」が売りですから。
「冬自慢」は発売してから今年で16年がたちます。通常の品種であれば、10年もたつと売り上げが下がっていきますが、「冬自慢」はリピーターが増え、じわじわシェアが拡大しています。
――味が自慢の「冬自慢」ですが、おすすめの食べ方は?
高山
「冬自慢」のおすすめの食べ方はなんといっても煮物です。「冬自慢」はえぐみや青くささがなく肉質が緻密でとってもジューシーなダイコンなので、火の通りが早く、味も染み込みやすいのです。おでんや、ぶりダイコンはもう最高ですよ!そのジューシーさはまさに「食べるスープ」です。
岡田
「冬自慢」とイカの煮物がおすすめですね。濃いめの味付けでも薄味でも「冬自慢」のジューシーさが実感できます。
――最後に『園芸通信』読者の方へメッセージをお願いします。
高山
ダイコンは冬の食卓に欠かすことのできない野菜です。「冬自慢」は作ってよし、見てよし、食べてよしの三拍子そろった自慢できるダイコンなのでぜひ試していただきたいです。ご自宅用だけでなく、ご近所さんにもお裾分けしていただいてその喜びを皆さまで分かち合っていただけたら、ブリーダー冥利(みょうり)に尽きます。
[材料]
- ・ダイコン「冬自慢」…500~600g程度
- ・イカ … 1パイ
- ・かつおだし(顆粒) … 適量
- ・水 …「冬自慢」が浸るくらい
- ・砂糖 … 大さじ3
- ・しょうゆ … 大さじ2
- ・みりん … 大さじ1
- ・ネギ … お好みで適量
[作り方]
- 「冬自慢」は味が染みやすいように乱切りがおすすめ。
- イカは下処理をして輪切りに。ゲソも使います。
- 「冬自慢」を鍋に入れたら、水と調味料を入れます。
- 「冬自慢」に火が通ったらイカを入れてサッと煮ます。
- お皿に盛ってお好みでネギなどを散らせば出来上がり!
「冬自慢」からジュワーッと染み出る水分が、煮汁とイカのうまみによく絡んでとてもおいしいんです! 昔はもっと濃い味で作っていたのですが、この味付けだと素材本来の味を堪能できます。健康志向で最近は薄めの味付けになってきました。「冬自慢」は濃い味も薄味でも受けとめてくれる懐の深いダイコンです。お好みの味付けを探してみてください。
[材料]
- ・ダイコン「冬自慢」…15cm分程度
- ・塩昆布 … 適量
- ・トウガラシ … お好みで
[作り方]
- 「冬自慢」は薄めの短冊切りにします。
- 食品保存用袋に「冬自慢」と塩昆布を入れて、混ぜます。
- これで出来上がり。
- お好みでトウガラシも一緒に入れるとピリッとした辛さがアクセントになります。
生で「冬自慢」のジューシーさを味わうならこれ!とにかく簡単に作れておいしいので、われわれブリーダーもよく食べています。シャキシャキしてみずみずしい「冬自慢」と塩昆布の組み合わせは、やみつきになりますよ。