2017/05/25
今ではどこでもいろいろなパンジーが手に入る時代ですが、うまく育たなかったことや、あまり花が付かなかったことはありませんか?「よく咲くスミレ」はそんな方にぜひおすすめしたい品種です。
今回はサカタのタネ「よく咲くスミレ」のブリーダーにその魅力を聞きました。ブリーダーの「よく咲くスミレ」に対する熱い思いをご紹介します。
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は数百にも及びます。
――「よく咲くスミレ」開発の経緯を聞かせてください。
森
パンジーは本来春に咲く植物ですが、品種改良が進んでいる今ではまだ暑さが残る初秋から春まで花を咲かせ、長い期間開花を楽しめるようになっています。なるべく早く開花を楽しむために夏場に種まきをされる方も多いと思いますが、初秋のまだ暑い時期に、寄せ植えや花壇で株や花首が伸びていたり、花があまり付いていないパンジーを見かけたことはありませんか? その点を克服したのが「よく咲くスミレ」です。暑い時期に伸び過ぎないように、暑い中でもよく咲いて元気にかつコンパクトに育つものを目標に選抜しました。
また通常パンジーというのは短日になると花が咲きにくくなりますが、短日条件でも花芽をたくさん付けてよく咲くように改良しています。「キープコンパクト! そしてよく咲く」が「よく咲くスミレ」育種の合言葉です。
――「よく咲くスミレ」は販売開始から10周年になりますが、長く愛され続ける理由はどこにあると思いますか?
森
今でもパンジーは大輪系が人気です。大輪系は一つの花に見応えがあるのですが、花数が少ないため、時々花が傷んで株に新鮮な花がない状態になることがあります。花というのは常に、咲き続けている方がいいと思っています。
ビオラのような小輪系なら次々と咲きますがパンジーのような見応えがない。大きさも花付きもバランスが取れているのが「よく咲くスミレ」だと思います。適度な大きさの中大輪で次々と花を咲かせる、このバランスが人気の理由ではないでしょうか。
――栽培において注意する点は?
森
毎日観察すると生育が悪いかな、と感じることがあります。そのときは何か原因がないか探してみてください。花や葉の色が悪いと思ったらアブラムシが付いていた、ということがよくあります。その場合は早めの駆除をおすすめします。
後は、よい土で育てること。パンジーは弱酸性土壌を好みます。市販の培養土によってはうまく育たないことがありますので、パンジーの栽培に適した品質のよい培養土を購入することをおすすめします。
毎日見ていれば、肥料が足りなかったなど、原因がきっと見つかると思います。
――実はこんなところがおすすめという点はどこでしょうか?
森
どんな植物にも共通すると思いますが、「よく咲くスミレ」は適度な温度と昼夜の寒暖差がよい条件になると、本当に鮮やかなきれいな色になります。
逆に暑かったり、寒過ぎたりすると発色が悪くなったりします。夜温が十分に下がってくるとよい色が出やすいです。一般地では11月ごろでしょうか。よい色をしているときは元気な証拠。「よく咲くスミレ」にとって最高の条件をつくって、一番よい表情を見てほしいです。よい条件になればイキイキとするのは植物でも人間でも一緒ですね(笑)。
――最後に『園芸通信』の読者の方へメッセージをお願いします。
森
身近なところにいつも花がある、または自分で花を育てている方は、それほど多くないのではないかと思います。これまで花が身近でなかった方にこそ、今一度、生きている花をじっくり観察してほしいです。生きている本物の花だけが持つ生命力や表情は、「本当にきれいだな」と感じると思います。
種から育てる喜びは格別です。芽が出て、少しずつ成長して、元気に花をどんどん咲かせる喜びを皆さまに感じてほしいです。「よく咲くスミレ」は種まきからなるべく簡単に栽培できるように作り上げた品種です。ぜひ一度育ててみてください。
いろいろな色が出て楽しい、パンジーの育種
趣味としてパンジーの育種をすることは、とても楽しいですよ。興味のある方は「この色とこの色を交配させるとどんな色になるのだろう?」と想像しながらお試しください。仕事になると大変ですけどね(苦笑)。