2017/07/06
ガーデニングを楽しむ多くの方々が憧れる、四季折々に表情を変える庭。その実現に、大きな存在感を発揮してくれるのが宿根草です。宿根草を主役に「北海道ガーデン」の魅力を発信し続けるガーデナー、上野砂由紀さんに、個性豊かな庭作りの心得を教えていただきました。今回ご紹介する事例を参考に、四季を通じて楽しめる「宿根草の庭」作りに挑戦してみませんか?

約4000坪の庭に咲き誇る草花を愛でるために、上野ファームには全国から数多くのガーデンファンが訪れる。苗やガーデングッズを購入できるショップや、築65年の納屋を改造したカフェ「NAYA cafe」も人気。 所在地:旭川市永山町16丁目186番地



上野 砂由紀(うえの・さゆき) 「上野ファーム」を拠点に富良野「風のガーデン」や上川町「大雪 森のガーデン」などのガーデン監修、植栽デザインを手掛けているガーデナー。北国の環境が作り出す庭を「北海道ガーデン」と考えて、庭作りの魅力を全国に発信している。
北海道旭川市にある上野ファームは、農場の新たな魅力の一つになればという思いで1983年から庭作りを始めました。現在では4000坪ほどの庭に成長し、多くの方々に見ていただけるガーデンになりました。四季折々に開花する宿根草を中心に2000品種以上を植栽しているので、季節によって庭の表情がドラマチックに変化していきます。



6月下旬 初夏の花々の最盛期
ドラマの舞台として庭作りに関わった『風のガーデン』では、365品種を超える宿根草を組み合わせ、どの季節も花が途切れることなく美しく開花し自然に混じり合うような雰囲気を意識しながらデザインしました。人間が植物に包まれるような迫力を出すために、草丈の高い迫力ある植物や北国の野草なども積極的に取り入れて、この土地でしか感じられない「北海道ガーデン」を表現しています。




7月上旬の風景




6月下旬 華やぐ季節の始まり



ガーデンをより魅力的にするためには、さまざまな植物と出合い、分け隔てなく、自分の手で実際に植えて育ててみることがとても大切です。花色だけでなく、開花期、特性、草丈などいろいろな植物の情報を知ることで庭作りはとても面白くなります。組み合わせは何万通りにもなり、どんな花で庭を色づけていくかはガーデナー次第、植物を楽しめば楽しむほど、庭の表情は生き生きしてきます。自分で描く植物が庭で上手に開花したときの喜びはひとしおです。
これまで国内外のガーデンで触れ合った多くの宿根草の中から、丈夫で扱いやすいものをセレクトして、皆さんでもすぐに実践できるおすすめの組み合わせをご紹介いたします。
青色と黄色をテーマカラーとした植栽で、私の庭でとても人気の高かった組み合わせの一つです。シンプルなデザインですが、ひとめ見ただけでも心に残る印象的な風景となります。まるで流れ星のように咲く‘オダマキ イエロークイーン’は美しさと合わせて開花期がとても長いので私もお気に入りの品種です。鮮やかなブルーが特徴の‘ゲラニウム マグニフィカム’を自然風に混ぜ合わせて、イエローとも相性のよい、‘ユーフォルビア ファイヤーグロー’のオレンジをさし色にしています。より立体感を出すなら、個性的な咲き方をする珍種の‘サルビア ヌタンス’がおすすめです。

オダマキ イエロークイーン
ゲラニウム マグニフィカム
サルビア ヌタンス
ユーフォルビア ファイヤーグロー

オダマキには珍しく長い期間咲き続ける新品種
オダマキ イエロークイーン
まるで流れ星のような花姿、美しい色調の黄花が春の庭を爽やかに演出します。

ゲラニウムでは暑さに強い方で花付きがよい
ゲラニウム マグニフィカム
ブルー地にベインが入る印象派で存在感ある美しい品種。種間雑種で強健で見事な大株になりやすいです。

おすすめのもう一品種 枝垂れ咲きの珍品種
サルビア ヌタンス
今までのサルビアにはない、個性的な咲き方で注目度が高い品種。程よい高性種で庭の背景に使いやすいです。

苞葉が鮮やか オレンジ色はガーデンのアクセント
ユーフォルビア ファイヤーグロー
鮮やかな苞葉、茎葉は赤軸で新緑のライムグリーンでコントラストが素晴らしく、暑さや乾燥に強いです。
さまざまな表情を持つ植物たちが、リズミカルに遊ぶような植栽です。固まりで咲く‘カンパニュラ プリカードバラエティ’がシーンを引き締めて、背後の‘ベロニカストラム クピッド’が個性的なラインで立体感を生み出してくれます。‘クナウティア’は、背景の植物が透けるような咲き方をするので、周りの草花となじみやすく、私もよく使う植物です。さらに‘ムスクマロウアップルブロッサム’を‘クナウティア’の背後に入れると華やかさが加わります。ナチュラル感を出したいときのポイントは、高低差のある植物をあえて背丈で並べずランダムに入れるのがコツです。

カンパニュラ プリカードバラエティ
ベロニカストラム クピッド
クナウティア
ムスクマロウ アップルブロッサム

ダイナミックな花姿で爽やかな初夏を演出
カンパニュラ プリカードバラエティ
草丈が大型でも、花房が優しい風合いのカンパニュラ。立派に咲かせるには、水はけよく植え込むのがおすすめ。

強健な西洋クガイソウ 花穂の変化が面白い
ベロニカストラム クピッド
クガイソウの仲間ではコンパクトタイプで長く咲き、ライラックブルーのグラデーションが美しい品種です。

背景の花と溶け込むように調和する宿根草
クナウティア 2種セット
風になびき、次々に花を咲かせ、庭では多用しやすいおすすめ品種です。

おすすめのもう一品種 華やかさをアップ
ムスクマロウ アップルブロッサム
花付きよく、長く咲きます。自然な雰囲気を壊さないので、宿根草ガーデンに必須。ハーブとしても利用できます。
華やかなバラの魅力を楽しみながら、他の草花の個性も味わえるコンビネーションです。
柔らかい表情を持つイングリッシュローズ‘ジェントルハーマイオニー’の手前にはバラのピンクとも相性のよい‘ゲラニウム オリオン’をまぜ合わせ、ふんわりとした花姿に変化を与えるために直線的なラインを持つ‘バーバスカム’たちを隙間に入れ込んでいきます。さらに華やかさが欲しいときは、ゲラニウムの隣にコンパクトにまとまり開花期も長い‘エロディウム’がおすすめです。たとえバラが主役でも、ストーリーを盛り上げる脇役的存在は庭作りにおいてとても重要です。バラに合う花色とあわせて花姿の形で変化を付けることで、バラと宿根草がお互いのよさを引き立て合い魅力あふれるワンシーンが完成します。

バーバスカム
イングリッシュローズ
ジェントル ハーマイオニーゲラニウム オリオン
エロディウム マネスカウィ

宿根草ガーデンに欠かせないスリム花穂タイプ
バーバスカム 2種セット
紫芯のホワイトとレモンイエローは自然な風合い、日当たりと水はけよく植えます。

オールドローズタイプ 柔らかい表情の名花
イングリッシュローズ ジェントル ハーマイオニー
透き通るようなピンクの花弁が美しく、自然樹形でまとまりやすいシュラブタイプ。初心者向きの強健で、寒冷地にも適します。

強健で巨大輪のスカイブルーのゲラニウム
ゲラニウム オリオン
高性タイプでふんわりバラに絡み咲きます。ブルー系の中では花付きよく、花径は時には5cm弱になる、おすすめのゲラニウムです。

おすすめのもう一品種 花期が長いのが魅力
エロディウム マネスカウィ
ゲラニウムのようなピンクの花ブロッチが入ります。優しい緑の葉はシダのようで美しいです。
私が大好きな花の一つであるエキナセアを2種類使ったデザインです。見た目も色もインパクトのある八重咲きの‘エキナセア ホットパパイヤ’をポイントに、シンプルな‘エキナセアパープレア’を組み合わせました。エキナセアのボリュームが出にくいときは、同じ品種を数株固まりで植えることで華やかさが簡単に調節できます。さらに2種のエキナセアの間に淡い紫の‘ロシアンセージ リトルスパイアー’を入れることで柔らかい雰囲気が生まれます。個性を加えるなら花姿に特徴のある‘エキノプス スターフロスト’を背後に見せることでワンランクアップのデザインになります。

エキノプス スターフロスト
エキナセア パープレア
ロシアンセージ リトルスパイアー
エキナセア ホットパパイヤ

個性的なフォルムで人気の高いルリタマアザミ
エキノプス スターフロスト
エキノプスを背景に加えると、庭の印象が大きく変わります。庭でも、切り花やドライフラワーでも楽しめる定番種。

ナチュラルガーデンの強健定番種
エキナセア パープレア
シングル咲きの端正な花は、飽きのこない定番種です。初夏から秋まで強健に咲き続けるエキナセアの原種です。

爽やかな雰囲気 いつも人気の定番宿根草
ロシアンセージ リトルスパイアー
他の草花とのクッション材として、柔らかさを生み出します。芽出し時切り戻しや、春の刈り込み具合で草丈を調整。

見た目の色もインパクトのある八重咲き品種
エキナセア ホットパパイヤ
近年多くの八重咲き種が登場しても全く引けを取らない、よく咲き栽培しやすい名花。夏の強光に色あせず、いつも鮮やかな花を咲かせます。