2017/09/21
初夏の風物詩「ソラマメ」。ソラマメは旬の時期が短く、長く楽しむことができませんが、旬が短いからこそ、どうしても食べたくなる旬野菜の一つかもしれません。
梅雨入り前、千葉県袖ケ浦市打越地方ではソラマメの収穫が始まります。この打越地方で収穫されるソラマメが「打越一寸」です。「打越一寸」はサカタのタネで長年品質、性質を維持してきた品種です。この品質を受け継ぎ守り続けている、ソラマメブリーダーに「打越一寸」について話を聞きました。
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は数百にも及びます。
――「打越一寸」のおすすめポイントは何ですか。
小堀
何といっても3粒莢率が高く、一寸(3㎝ほど)のマメが安定してできることです。家庭菜園でもスーパーなどで売られている形の整った「ソラマメ」が次々と収穫できます。昔から味も形も変わらないソラマメということで、プロの農家の方からも長年ご愛用いただいている品種です。
――「打越一寸」栽培のコツを教えてください。
小堀
お客様からのお問い合わせによると、種まきで失敗される方が多いようです。種一粒が高価なので、種まきでなるべく失敗してほしくないですね。ソラマメは種が大きいため腐りやすいので、育苗の際は乾燥と過湿に注意が必要です。育苗が心配だという方は直まきでもOKです。ソラマメは移植を嫌うので、直まきの方がおすすめなのですが、直まきの欠点は不発芽のときに欠株ができ、スペースが空いてしまうことです。そこで直まきとポットまきを両方行い、直まきで不発芽の部分に定植するとスペースを無駄にすることなく栽培できます。直まきの際は鳥に食べられないように、不織布などで鳥よけ対策をしてください。
――ソラマメ栽培の注意点は何ですか?
小堀
栽培期間が長く、栽培が難しいと思われがちなソラマメですが、実はそんなことありません。植え付けさえ完了してしまえば後は摘芯・誘引・アブラムシ対策、これだけで大丈夫です。
具体的な作業としては、側枝が見えてきたら主枝を2〜3節残して摘芯し、側枝の生育を促してください。後は倒れないように誘引し、春先にアブラムシ対策をしていただければOKです。アブラムシ対策として、花が咲き終わったころに成長点を摘芯してください。アブラムシは柔らかい成長点に付きやすいため、そこを摘芯すればアブラムシが減ります。花が咲き終わったころは栄養成長から生殖成長になっているので、摘芯することによって実の生育も促されます。それでもアブラムシが気になるようでしたら農薬散布が必要ですが、農薬が気になる方は木酢液などでも効果があると思います。
――ソラマメブリーダーとして苦労したことは?
小堀
プロの農家の方のようにこだわって栽培をすると、かなり高品質な「打越一寸」が栽培できます。農家の方は毎年気候の変化に対応したり、肥料設計などを変えたりと日々高品質な「打越一寸」を目指し栽培しています。そのため、「打越一寸」の種自体の品質がよくも悪くもぶれてしまうと、それに農家の方も振り回されてしまいます。だから常に品質は「一定」でなくてはいけないのです。その品質を守り続けることが一番大切なことであり、大変なことですね。
――「打越一寸」のおすすめの食べ方は?
小堀
ゆでソラマメもおいしいですが、素材の味を楽しんでいただくため、莢のまま焼く「焼きソラマメ」もおいしいですよ。個人的にはソラマメご飯が大好きです。豪華な豆ご飯みたいな感じでしょうか。その時期しか食べられないのでありがたみを感じます。
――最後に『園芸通信』読者の方へメッセージをお願いします。
小堀
ソラマメはお店で買うと高い、栽培期間が長くて難しい、などハードルが高い野菜と思われがちですが、実はそうではないのです。家庭菜園の片手間に栽培してもできてしまう作物なのです。家庭菜園の醍醐味(だいごみ)は、おいしくて新鮮な野菜を味わうことだと思っています。それを簡単にかなえることができるものの一つが「打越一寸」だと思います。ぜひ「打越一寸」で家庭菜園を楽しんでください。
ある切り花農家の方が、育てている花の風よけとして防風林のようにソラマメを栽培していたことがあり、衝撃を受けたことがあります(苦笑)。話を聞いたところ、「品質は若干落ちてしまいますが、自分たちで食べる程度は十分できますよ。風よけになるし、手間がかからずおいしいソラマメができるし、一石二鳥です」とのことでした。