2018/01/11
黒潮うねる紀伊半島の中央部海岸に接し、熊野街道の要衝として知られた和歌山県・印南町が誇るブランドミニトマトです。1990年代初頭、世には空前のミニトマトブームが到来し、雨後のたけのこのごとく全国に新たな産地が生まれていました。そのころ、当地でもともと大玉トマトや切り花を作っていた農協生産者の有志が、ミニトマトの産地化を計画、「どうせやるなら、なにか特色のあるものを」との考えから、当時発表間もないキャロル7の導入に踏み切りました。
高糖度で食味が非常によく、またきれいな色、果梗が短く裂果に強いという品種の特性を生かし、実を2~3個枝に付けたまま収穫する「房採りミニトマト」に取り組みました。この部会は当初から形態、食味による差別化でブランドを確立することを意識し、青果出荷に当たっては、和歌山県農協連合と共同で、当時ミニトマトでは珍しい糖度検査を実施しました。
一方、栽培面でも研究会を立ち上げ、栽培に使用する資材や肥料の研究にも余念がなく、新規参入者については1年間のテスト期間が課せられ、その品質が部会の出荷基準に達したことを確認して初めてブランド名の使用を許可するなど、厳しい基準と徹底した管理でブランドを守り続けています。
「赤糖房」と命名されたブランドは、全国的に引っ張りだこのミニトマトとして、今日に至っています。
抜群に育てやすい品種です。実は割れにくく、皮も柔らかくて口当たりも申し分なし。
- 花梗*が短く、裂果に強いため、房採り出荷が可能なミニトマト。
- 果実の糖度が高く、果肉は独特のジューシーさがあり非常においしい。
- 果実の色は深みのある赤色、鮮やかでテリがある。
- 葉や茎も色が濃い黒葉種。
- 特に高温時のリコピン生成能力が高く、着色はすこぶるよい。
- 葉や茎の節間短く全体にコンパクトな草姿。
- 葉かび病、萎ちょう病などの抵抗性、青枯病にも強い。
*花梗:主軸から分枝して、それぞれの花を支える枝のこと。
- 苗のときから草姿はコンパクト。若苗定植できる。
- 育苗中の肥料切れによる下葉の黄化に注意し、水やりは液肥を織り込む。
- 着果はよいが花の数は少なめなのでトマトトーンや振動で交配する。
- 4段目の花が咲きだしたころ、1回目の追肥を確実に施す。
- 裂果には強いので、果実にしっかり色が回ってから収穫する。
- 肥料が多過ぎると果実の表面がでこぼこするので注意する。
向井 岳彦 (むかい・たけひこ)
研究農場でさまざまな野菜や花の品種栽培に携わる中で、仕事を通し、野菜や花の消費を拡大させることで、国民の心身の健康増進に貢献できればと考えている。自称、野菜料理研究家。