2018/01/25
うーっ、暑い!
昨今、夏の暑さは厳しさを増すばかりです。まるで熱帯を思わせる日差しとスコール、プロ生産者も品種や作型を見直し、ましてやアマチュア菜園家にとって夏野菜作りは年々難しくなっているのではないでしょうか。そこで今回は夏野菜の代表格、カボチャの中でも特に暑さや病気に強く作りやすい「モスカータ種(しゅ)」の中で注目を集めるバターナッツと韓国カボチャに焦点を合わせ、その特徴と栽培方法をサカタのタネの販売品種を例にご紹介いたします。
バターナッツには1玉3kgを優に超える大玉種もありますが、この品種は1kgくらいで収まり、家庭でも扱いやすい小型種です。草勢は比較的旺盛ですが着果はすこぶるよく、果実もよくそろいます。
またうどんこ病に非常に強く、最後までつるが持ちます。
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早まきしないことが大事です。バターナッツは熱帯性のカボチャです。低温下では生育が滞り、本来の生育が損なわれます。温暖地(一般地)では4月下旬~の播種がおすすめです。この時期ですと温度は十分なので、直接「Yポット」や「バーゲンガーデン」などにまくのがよいでしょう。
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地温が確保できていれば完全な露地でよいですが、土壌の保水、雑草を抑えることを考えればマルチ栽培がよいでしょう。ポットまきでは20日育苗で本葉3~4枚が植えどきです。株間は80cm、あらかじめ施肥して肥料が土となじんだ畝に植えましょう。
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基本的に放任栽培が可能ですが、周辺の作物、通路を考慮し、つる先を一方向に向けて誘引するとその後の作業がしやすくなります。この場合、圃場で本葉4~5枚のころ、親づるを摘芯、子づる3本仕立てで放任するのがよいでしょう。第1節の子づるは伸びない場合があるので除去します。
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放任で栽培するため、雌花がどこに付くのか確認できず手交配は少々大変なので、ぜひミツバチなど自然の昆虫を利用しましょう。
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通常の春まき作型であれば、着果後40日前後で果実は完熟します。放任栽培では着果日が分かりにくいので、果皮の色で判断します。肥大中は白っぽいですが、やや桃色がさした濃い肌色になれば収穫可能です。
バターナッツは煮崩れしやすいので煮物に向きません。果肉の色のよさを生かした、スープやグリルなどにするのがおすすめ。1個でちょうど2人前の分量が目安です。
定番のポタージュスープ
未熟果は、漬物におすすめ
オーブンでそのままグリルに。ハーブで香り付け
幼果(未熟果)を利用するモスカータ種です。暑さに強いだけでなく、うどんこ病などの病気にも強く、大変作りやすい品種です。幼果を連続的に収穫するのでつるが衰えることなく長期にわたり栽培することができます。完熟させると大型果実になり、やや種子部が大きいですがバターナッツのように利用できます。
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露地栽培の場合、早まきは避け、バターナッツ同様、温暖地で4月下旬~まきが標準です。マッチャンはモスカータ種の中では低温伸長性があるので温床育苗で3月中旬まきが可能です。
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基本的に放任栽培です。幼果を収穫するため、キュウリのように立体でネットに這わせる栽培もおすすめです。この場合は親づるを4~5節で摘芯して、子づる3本仕立てであとは放任です。
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雌雄同株ですが、キュウリと異なり、交配しないと結実しません。雄花をちぎって、雌花に花粉を付ける手交配が確実ですが、ミツバチなどの訪花昆虫にゆだねる方がよいでしょう。
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皮は白緑色のうち、長さ20cm、太さ5cm程度を目安に幼果を収穫します。収穫時期の果皮は柔らかいので丁寧に扱います。この果実は完熟すると長さ40cm以上、太さ10cm以上に達し、果皮にリブ(太いしわ状)が入り、濃い肌色となります。やや種子部が大きく果肉は薄めになりますが、バターナッツなどの完熟果のように利用することもできます。
クセがなく、柔らかい中にもコリコリした食感が特徴です。ズッキーニより緻密な肉質で歯応えがあります。
クセがないため、食感を楽しめる漬物のほか、幅広い料理に利用できます。
炒めてもおいしい!
歯応えを生かして漬物に
日本の猛暑が
大好きなカボチャ!
「モスカータ」
普段目にする「カボチャ」は植物分類上「マキシマ種」「モスカータ種」「ペポ種」の3つのグループ(種)に分けることができます。
カボチャのグループ分け
(園芸品種)
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マキシマ種(西洋カボチャ)
原産地:南米寒冷地
日本で最もポピュラーなカボチャ。ホクホクとした肉質で甘みが強い。やや暑さに弱く、定植時の地温も考慮に入れ、列島各地で作型が決められている。つるが疲れると、うどんこ病がでやすい。
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モスカータ種(日本カボチャ)
原産地:中米熱帯地域
バターナッツ、菊カボチャなど。さっぱりとした肉質。暑さに強く、温暖化の中で栽培しやすいことなどから注目され、メニュー開発も進んできている。未熟果実もおいしく食べることができる。うどんこ病やウイルスなどの病気に強い。
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ペポ種(ペポカボチャ)
原産地:北米南部乾燥地
おもちゃカボチャからハロウィーンカボチャなど、主に観賞用として利用される。未熟果を利用するズッキーニはこのグループ。
「モスカータ」の起源は中央アメリカの熱帯です。一般的なカボチャである「マキシマ」(西洋カボャ)に比べ、熱帯由来の非常に頑健な性質を持っているため、問題の夏の露地においてもびっくりするほどよく育ちます。つまり裏を返せばこの猛暑こそが「モスカータ」に本来の順調な生育をもたらすというわけです。
日本でモスカータといえば「日本カボチャ=菊カボチャ」が知られていますが、カボチャといえばホクホクという風潮に反して、その肉質は完熟してもさっぱりとした粘質であることから、これまでその利用地域は限定されていました。でも想像してください、汗の滴る真夏にほかほかのホクホクカボチャが食べたいですか? パリッとグリルで、トロッと冷やしたスープがおいしいですね。
海外では「カボチャ」といえば圧倒的に「モスカータ」、中でもユニーク形状、可食部分が大きい「バターナッツ」が主流です。お隣の韓国ではズッキーニの感覚で若採りする韓国カボチャ(エ・ホバック)が国民的な野菜となって親しまれています。
サカタのタネ
掛川総合研究センター
向井 岳彦
(むかい・たけひこ)
研究農場でさまざまな野菜や花の品種栽培に携わる中で、仕事を通し、野菜や花の消費を拡大させることで、国民の心身の健康増進に貢献できればと考えている。自称、野菜料理研究家。