草花をタネから育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
今回は色鮮やかなのに、優しげで風情のあるアスターをご紹介します。栽培は難しくありません。夏に切り花でも活躍する花を楽しみに、タネまきから始めましょう。
和名で「えぞぎく」と呼ばれ、古くから主にお盆の切り花として親しまれてきたアスターは、中国北部を原産地とする一属一種の一年草です。その原産地から、元々は冷涼で乾燥した気候を好みますが、最近の品種は、夏季に冷涼な地域でなくても十分に花を楽しむことができます。
アスターの属名「カリステファス」には「美しい冠」という意味があり、アスターの美しさを言い表しています。中でもサカタのタネ育成のポンポン咲き「あずみ」シリーズは、花色が鮮明でまさに「美しい冠」そのもの。アスターの属名は、このシリーズのために名付けられたのではないかと思わせるほどです。
この他にもサカタのタネ育成のアスターは、それぞれ花形が違い、また開花期もそれぞれ異なることが特長です。
同一時期にタネをまいても、順次違った花形が楽しめ、「ステラ」、「シエナ」、「松本」、「あずみ」の順で開花します。そして「あずみ」シリーズが開花したときには全てのシリーズの花が咲きそろいます。
アスターは温暖地の場合、主に6~7月(秋まき)、7月下旬~9月下旬(春まき)に開花するため、日が長くなると開花する植物と思われています。
確かに長日で花芽を分化しますが、いつまでも長日が続くと開花は遅れます。そして花芽を分化した後には、日が短くなると開花が早まります。日本では夏至を過ぎ、短日になるころから開花が早まるのもうなずけると思います。
数種のアスターを順次咲かせて、切り花やプランターで花壇風に仕立てるなど、思い思いに楽しみを広げてみてください。
古くから夏の切り花として親しまれてきたアスターは、その花形からも仏花のイメージが強い花でしたが、近年の品種改良により、さまざまな花形や花色の楽しめる人気品種に生まれ変わりました。
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明るく鮮やかな花色で咲き進む姿も楽しめる花弁の重ねが厚くボリューム感抜群の大輪咲き。花形の整ったポンポン咲きで、咲き進みながら表情を変えます。「松本」シリーズと同程度のフザリウム耐病性があります。
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花色豊富な大輪咲き人気のロングセラー品種です。分枝性が強く花付きがよいため、ボリュームたっぷりの切り花になります。フザリウム耐病性品種。
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かわいい小花がたくさん咲く小ぶりでキュートな半八重咲きアスター。ピンチ(摘芯)をしなくても自然と枝分かれして、たくさんの花を咲かせます。フザリウム耐病性品種。
発芽適温は20℃前後で、温暖地では春まきの場合、4月上旬~5月下旬がタネまきの適期となります。秋は9月中旬~10月下旬にまきますが、冬越しに防寒が必要で、また開花までに8カ月ほど要しますので、一般には春にタネをまきます。アスターの発芽には空気が十分に必要です。そのため、タネまきには特に通気性のよい用土を使用します。例えば、赤玉土の小粒と腐葉土を半々に混ぜたものをおすすめします。育苗箱か鉢に、あらかじめ湿らせた用土を入れてタネをまき、翌日にタネが隠れる程度の覆土をします。タネまき後、10日ほどで移植可能となります。
タネまき後、すぐ水を与える場合は、軽く湿る程度を心掛け、少しずつ段階を追って水の量を多くしていくのが、きれいに発芽をそろえるコツです。
芽が出て双葉が展開してきたら、十分に光が当たる場所で育てます。適温下でまいた場合は10日前後で仮植えできるので、遅れないよう直径6~7.5cmポットに植えます。ポットに直接まいた場合は、本葉が2枚くらいのときに元気のよい苗を残して間引きをします。この育苗時期に水と肥料が少ないと生育が悪くなり、貧弱な花になってしまうので注意しましょう。週に1度は液肥を与え、肥料切れを起こさないよう管理します。
移植を嫌うので、本葉が2枚くらいの小苗のうちに仮植えする
ポット育苗時の水やりのタイミングは、葉がややしおれかかったころが適期です。アスターは育苗時、思いの外、水と肥料を必要とするので、肥料切れ、極端な水切れを起こさないよう管理します。
極度に乾燥する場所は避け、日当たり、水はけのよい場所に植え付けます。アスターは連作を嫌うため、過去に5~6年植えたことのない場所を選定するとよいでしょう。なお、土壌が酸性の場合は、生育が悪く、病害も出やすくなるので、苦土石灰をまいて酸度の矯正をしておきます。本葉が4~5枚のころが定植適期なので、寒さが和らぐ4月上旬以降に定植します。植え付けの間隔は花壇で15~20cm、プランターでは10cm程度で、深植えにならないよう植え付けます。
開花近くになって強い風が吹くと、株が倒伏しやすくなるので、株の周囲に支柱を立て、ひもを張るとよいでしょう。アスターは倒伏すると短時間で花首が曲がるため、倒れた株は早めに仕立て直しましょう。
1株の開花期間は4週間前後ですが、春のタネまき時期、定植時期を2週間ほどずらしてやると、温暖地では7月下旬~9月下旬の夏じゅう、新鮮な花を楽しむことができます。また、ポットで育てた株でも、水と肥料をしっかり与えることで、十分に花を楽しむことができます。庭植えする場所がない場合でも、育苗箱でよく育つので、挑戦してみましょう。
ポット植えで育苗した状態で開花させることもできますが、水切れ、肥料切れを起こしやすく、花もやや貧弱になります。土の表面が乾いたらたっぷり水を与え、週に1~2度液肥をしっかり与えます。
2018年2月22日更新
菅野政夫(かんの・まさお)
1952年山形県生まれ。神奈川県立相模原公園副園長、サカタのタネグリーンハウス館長。1973年坂田種苗株式会社(現(株)サカタのタネ)入社後、試験場勤務20年以上、オステオスペルマムなど栄養系植物の栽培・育種に携わる。