草花をタネから育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
今回は元気いっぱいでまばゆい個性派ぞろいのヒマワリをご紹介します。栽培は難しくありません。夏の太陽の下で輝く花を楽しみに、タネまきから始めましょう。
真夏の強い日差しの下、どこまでも明るく元気に咲き誇るヒマワリは、主に北アメリカを原産地とする春まき一年草です。ヒマワリの属名であるヘリアンサスとは「太陽の花」という意味で、その黄色く大きな花から太陽を連想したのでしょう。
また、太陽の動きに従ってその方向に回る不思議な花といわれ、「太陽に付いて回る花」、つまり「日回り」と呼ばれるようになりました。確かにヒマワリの一種である「シロタエヒマワリ」は、太陽の動きに従って回るという報告はありますが、通常のヒマワリは太陽の動きを追って回ることはなく、開花前の成長期で、花首が柔らかい蕾のころだけに多少見られる現象のようです。
ヒマワリは夏を代表する花ですが、品種改良が進み、一年中切り花が出回り、すっかり生活の中に溶け込んでいます。このたびサカタのタネが育成した「ビンセント」シリーズも切り花用ヒマワリとして、通年安定した品質を保つ画期的な品種。『ひまわり』の絵で有名な画家「ビンセント・ヴァン・ゴッホ」の名から命名された「ビンセント」は、色鮮やかで育てやすい魅力的な花です。通年楽しめるヒマワリですが、最も輝きを増すのは、やはり夏をおいてほかにありません。今年の夏は思い思いのキャンバスにヒマワリの花を描いてみましょう。
夏の青空に似合うヒマワリは子供から大人まで人気の花。さまざまな品種があるので、作り比べても楽しいですね。
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上を向いて咲きます。
花首が硬く、花束やアレンジで使いやすいです。 -
草丈25~50cmのミニヒマワリ「サンタスティックシリーズ」。草姿がしっかりして、葉色が濃い緑の力あふれるヒマワリです。花壇でもコンテナでも分枝よく、次から次へと花を咲かせます。無花粉種、分枝系。
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草丈25cm程度で花を咲かせる、世界最小クラスのミニヒマワリ。サカタのタネが長年かけて開発した自慢の品種です。無花粉種。
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大輪のヒマワリがキュッと小さくなったようなお手ごろサイズです。場所を取らないので、ベランダでのプランター栽培にもぴったり。1本立ち系。
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鮮やかなレモンイエローと中心のグリーンとの対比が美しい人気品種です。分枝系。
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花色は明るいオレンジで中心部が黒褐色の、ヒマワリらしい品種です。茎が硬く真っすぐに伸び、花粉が出ない中輪一重咲きで、切り花に向いています。
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鮮明な黄色の花は無花粉で花持ちがよく、長く楽しめます。分枝も多くボリューム感が出ます。
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先端が明るい黄色をした巨大な花を1輪咲かせます。ロシアでは一般的に多く栽培されているのでこの名前が付きました。
花のタネの中では大きい方で、とてもまきやすいタイプです。発芽適温は20~25℃で、温暖地・暖地では4月中旬~6月中旬、寒冷地では5月以降にまきます。定植する場所の用意ができていれば、直まきができます。その場合、高性種は30~40cm間隔、花壇用、切り花用の中高性種は20~25cm間隔に2~3粒ずつ点まきし、約1cm覆土します。直まきできない場合は、直径7.5~9cmポットにタネまき用土を入れ、1ポットに2~3粒ずつまきます。
カタログには花色、花の形、大きさ、花の咲き方、草丈、分枝系、1本立ちといった情報が写真と共に掲載されています。これらの情報を基にイメージして、タネまきの場所を選定します。分枝系は比較的開花期間が長いので、同じ品種を一列にまいて、垣根代わりにするのもおすすめです。
タネまき後、1週間ほどで発芽するので、この間は水を切らさないように管理します。発芽後はよく日に当て、本葉が出始めたら週に1度、水やり代わりに薄めの液肥を与えます。本葉が4~5枚になるまでに、元気のよい苗を1本だけ残すように間引きます。
本葉が出始めたら弱い苗を間引く
発芽後、本葉が展開する時期は生育旺盛になるため、鉢土の表面が乾いてきたらたっぷり水を与えます。乾かし過ぎると極端に生育が悪くなります。また肥料不足も老化の原因になるので、定植までは週に1度、薄めの液肥を与えて管理します。特に、「ビンセント」シリーズは生育旺盛のため、水切れに注意してください。
ヒマワリはあまり土質を選ばずに育つ丈夫な草花ですが、極端に乾燥するような場所は避けます。日当たり、水はけのよい肥沃な場所が適地です。ポットにまいた場合は、ポット内に根が回ったら早めに定植します。植えつけ後、十分に活着するまでは、用土が乾いたら水やりをします。生育が早く肥料切れを起こしやすいので、月に1度追肥をします。ただ、ヒマワリは吸肥力が強いので、やり過ぎに注意しましょう。特に「ビンセント」は、花形が乱れる場合があるので、肥料過多にならないように。
ポットの底に根が回ったら定植する。子葉が土に埋まらないように植え付ける。
追肥は、化成肥料を月に1度与える
定植する場所が硬かったり、やせているところでは、根の張りが悪く、株も貧弱で倒れやすくなります。堆肥、腐葉土、元肥などをすき込んで肥沃な土にします。ヒマワリは草丈と同じくらいの根が伸びるため、定植場所は40cmの深さまで耕し、十分に軟らかくしておきます。
庭植えの場合、梅雨明け後の晴天が続いて表土が乾き過ぎると、下葉が落ちることがあります。乾燥防止に敷わらをするか、腐葉土を表土から3cmほどの厚さにまきます。乾きがひどいときはたっぷりと水を与え、鉢やプランター植えの場合は、週に1度薄めの液肥を与えます。
ヒマワリは高温乾燥には比較的強い植物ですが、小さい鉢では根量が制限され乾きやすいので、直径24cm以上の大きい深鉢で育てると安心です。切り花にする場合には、通常の定植間隔より密に植えると、花も上向きになり株姿もスリムになります。また、通常より肥料と水を少し控えめに。ヒマワリの花は、花弁が一度には開きません。1カ所から順次開花するので、その開く瞬間を観察してみましょう。
2018年3月22日更新
菅野政夫(かんの・まさお)
1952年山形県生まれ。神奈川県立相模原公園副園長、サカタのタネグリーンハウス館長。1973年坂田種苗株式会社(現(株)サカタのタネ)入社後、試験場勤務20年以上、オステオスペルマムなど栄養系植物の栽培・育種に携わる。