草花をタネから育て、芽が出て、やがて花が咲く。この上なく楽しいことです!
今回は長期間鮮やかな花色を楽しませてくれるジニア(百日草)をご紹介します。栽培は難しくありません。初めてでも失敗の少ないジニア、夏の開花を楽しみに、タネまきから始めましょう。
夏から秋を華やかに彩ってくれるジニアは、メキシコを原産地とするキク科の春まき一年草です。日本には江戸時代に入ってきており、夏の高温下でもよく咲くため、お盆を中心とした仏花として古くから利用されてきました。和名のヒャクニチソウ(百日草)は、花弁がカサカサになるまで枯れずに残って咲き続けるところから名付けられました。ジニアという属名は、人体の眼球の虹彩について詳細に描写した最初の人物である、ドイツの医学教授ヨハン・ゴットフリート・ジンの名前に由来しています。
ジニアはメキシコのある教授がスペインの伯爵夫人に送り、経緯は不明ですがドイツに渡りました。ジン教授は大学の周囲に咲く花について記述しており、そこにジニアについて書かれていたのです。この花を「ジニア」と命名したのは、植物分類学を確立したことで有名なリンネです。32歳という若さで亡くなった医学教授のジンから、この名を付けたといわれています。
ジニアは当初、一重の小さな見栄えのしない花でしたが、今では飛躍的に品種改良が進みました。中でもサカタのタネ育成の「プロフュージョン」シリーズは、1999年にAASのゴールドメダルに輝いた画期的な品種で、世界中から高く評価されました。
今ではこうしてジニアが世界中の人々の目を楽しませていることをジン教授が知ったら、きっと目を細めて喜んだことでしょう。さあ、瞳にまばゆく映えるジニアの花々に思いをはせ、タネまきから楽しんでみてください。
暑さと日照りに強く、開花期が長く、また多くの耐病性を持つジニア。近年、サカタのタネが開発した「プロフュージョンシリーズ」をはじめ、さまざまな花形と豊富な花色を持つジニアは、春まき草花の代表種です。
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豊富な花色を花壇で楽しみたいすっきりした一重咲き品種。コンパクトな株で開花を始めるため、開花期が長いです。病気に強く、乾燥や暑さにも強いため、丈夫で育てやすい。プランターやテラコッタでも長く楽しむことができます。
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花色の美しさと華やかさを堪能ボリュームたっぷりの華やかな八重咲き品種。コンパクトな株で開花を始めるため、開花期が長いです。病気に強く、乾燥や暑さにも強いため、丈夫で育てやすい。プランターやテラコッタでも長く楽しむことができます。
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存在感たっぷり!花径約10cmの大輪咲きまるでダリアのような、存在感のある大きな花が数多く咲きます。高性種なので切り花にもおすすめです。
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コンテナを明るくする人気種半球形のコンパクトな草姿に、カラフルな八重の花をたくさん咲かせます。
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ハンギングや寄せ植えにもおすすめ耐暑性が抜群で、一重の可憐な花がたくさん咲きます。ハンギングバスケットにもおすすめ。
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目の覚めるような華やかな二色咲きメキシコの華やかな帽子のような、黄色と緋赤色の二色の蛇の目咲きです。
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育てやすく次々と咲き続ける、かわいいポンポン咲き花弁が重なる半球形の花は小輪でも存在感抜群。切った後の芽吹きが早く、カラフルな彩りが楽しめる混合種です。真夏の暑さに強く丈夫で作りやすい品種です。
ジニアのタネは草花のタネとしては大きい方で、とてもまきやすいものです。4~6月がまきどきですが、25℃前後でよく発芽するので、温暖地では4月中旬以降に、寒冷地では5月上旬以降にまくことをおすすめします。タネは大きいので育苗箱にすじまきし、5mm程度覆土し、乾かさないよう管理しましょう。発芽するまでは7日前後です。
5~6cm間隔に浅くまき溝をつけ、すじまきにして5mmくらい覆土する
低温には弱いので早まきは避け、なるべく北風を避けられる暖かい場所に育苗床を作っておきます。また温度が低いと発芽日数が長くなり、生育がふぞろいになるので注意します。タネは4月中旬~6月上旬までまくことができるので、数回に分けてまいてみましょう。
発芽してきたらよく日に当て、水やりはやや控えめにします。本葉が2~4枚になったら直径6~7.5cmポットに1本ずつ植え替えます。育苗用土は赤玉土5、腐葉土かピートモス4、くん炭1の配合土を使います。植え替え後、ポット内に根が回り始めたころから週に1度液肥を与え、しっかりした株作りを心掛けます。
本葉が2~4枚出たらポットに1本ずつ植える
育苗時期の乾燥、肥料不足は、生育が著しく劣り、病気も発生しやすくなります。適温に気を付け、乾いたら十分に水をやり、定期的に液肥を与えます。鉢上げ後、十分に活着した状態で株の勢いがよいころ(本葉が7~8枚くらい)に、芽先をハサミか手で摘み取ると分枝数が増し、ガッチリした株になります。わき芽の真上を摘んでください。
日当たりと風通しのよいところを好みます。土質はさほど選びませんが、低湿地、乾燥地は避けてください。しっかりと株張りさせるためには、有機質に富んだ水はけのよい土地が適し、堆肥、腐葉土をすき込んでよく耕します。植え付け間隔は高性種で約30cm、中~わい性種は約25cm、小輪種(リネアリスなど)は約20cmに植え付けます。連作すると立枯性の病害が出やすくなるので、毎年違う場所に植えます。
ポットに根が回ったら定植する。根づいたら株元に置き肥を与える
ジニアは開花・生育期間が長いので、肥料不足になると花付き、生育が劣り、病気も発生しやすくなります。定植後は月に1度追肥を与えます。特に鉢やプランター植えの場合、肥料不足と水不足に注意してください。
ジニアは日が長い時期(長日期)は開花が遅れますが、その分重ねのよい花が咲き、生育も旺盛で充実した株張りになります。一方、短日では開花が促進され、花付きも多くなりますが、植物全体が小さくなります。充実した株張りの花を楽しむなら4~5月まきがおすすめです。また短日で開花が促進する性質を利用し、6~8月にまいて夏の終わりから秋に開花させることもできます。株張りは小ぶりになりますが、気温が低下していく秋の花色は一層さえてきれいです。
秋に開花させる場合は、温暖地では8月上旬までに、寒冷地では7月上旬までにタネをまきます。遅くなると貧弱な株張りになり、重ねも薄くなるので、時機を逃さないようにします。タネまきから開花までは品種によって差がありますが45~60日程度です。
2018年3月22日更新
菅野政夫(かんの・まさお)
1952年山形県生まれ。神奈川県立相模原公園副園長、サカタのタネグリーンハウス館長。1973年坂田種苗株式会社(現(株)サカタのタネ)入社後、試験場勤務20年以上、オステオスペルマムなど栄養系植物の栽培・育種に携わる。