2018/05/22
キャベツの理想的な品種と聞いて、どんな品種を想像しますか。病気に強くて、作りやすい品種。収量が高くて、品質がよい品種。とにかくおいしい品種。どれかが欠けても、理想的とはいえませんよね。これら全ての条件をバランスよく持ち合わせている品種が、「新藍」です。
そんな理想的なキャベツ「新藍」のよさをもっと、もっと知ってほしくて、ブリーダーにお尋ねしてみました。
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は数百にも及びます。
「新藍」は、キャベツに欠かせないさまざまな条件を、余すところなくバランスよく持ち合わせているのが一番の魅力です。
耐病性に優れる
萎黄病に抵抗性、黒腐病と根こぶ病に耐病性がある。これらが発生しやすい水はけの悪い場所でも安心して作ることができる
また、「新藍」は、キャベツの生育に欠かせない外葉ができるのと比較的同時期に、結球が始まる「結球充実型」。このタイプはおおよそ球の形ができてから内部が充実していくため、環境適応力が高いのも特徴。
抵抗性と耐病性
当社では、温度、湿度、病原体の密度などによる発生条件下にあっても、安定してその影響を受けにくい性質を「抵抗性」と呼び、また、この「抵抗性」に比べて影響を受けやすいと判断されたものを「耐病性」と呼んでいます。
ただし、「抵抗性」であっても、発生条件の具合や、同じ病原菌であっても新たな系統が発現した際には、病気が発生する可能性があります。
形よく、そろいもよい
「結球充実型」の「新藍」は肥大力も抜群。そのため、非常にバランスがよく整った球に仕上がる。扁平形で、尻とがりなどの形状の乱れが少なく、よくそろう。均一性に富むので収穫しやすく、また、出荷の際の箱詰めもしやすい。
食感がよく 、甘くておいしい
みずみずしさをたたえるが、肉質はしっかり。また、歯切れがよく、よくかみ砕ける。食感は滑らかで、キャベツにありがちなゴワゴワした舌触りが少ない。芯まで甘みがあり、青臭さはほどんど感じられない。生食はもちろん、さまざまな調理、漬物などの加工用にも向く、オールマイティーを可能にする品種。
● 「新藍」のおいしさをチャートで表現してみると……
おいしさが評判の「新藍」ですが、その独特のおいしさを言葉にするのはちょっと難しいもの。そこで一般的なキャベツと食べ比べ、味覚をチャートで表してみました。
「新藍」は作りやすいのも長所の一つ。「新藍」ならではの栽培ポイントをご紹介します。
1. 適期に種をまき、苗を徒長させないように注意する
- ● 夏まきで種まきが早過ぎるとチップバーンが発生しやすい傾向にある
- ● 夏まきで種まきや定植が遅れると結球不良になったり、寒さによるストレスで球の内部にアントシアン色素が発生し、紫色に変色したりすることがある
- ● 苗が徒長すると苗床で立枯病が発生したり、定植時の植え傷みの原因になる
2. 定植時は、十分な株間をキープ。目安は条間55〜60cm、株間30〜45cm
定植の準備は前日、屋外に出して風を当て、軽くストレスを与えてやると、苗がしっかりし、活着がよくなる。なお、株間は地域の平均にならい、極端に密植させないように注意する。
3. 速効性化成肥料を使い、必要に応じて追肥する。ただし、過剰施肥、特に窒素過多に注意
窒素分が多過ぎると拮抗作用により他の微量要素を吸収できなくなり、最終的に生理障害を引き起こす。特に「新藍」では、内側の葉先にカルシウム欠乏症によるチップバーンが出るので注意したい。
4. 内部がしっかり充実したのを確認し、適期収穫を心掛ける
- ● 収穫が早過ぎると内部が充実しておらず、スカスカの球になってしまう
- ● 収穫が遅れると球が割れてしまう
5. 病害虫防除(コナガ、ヨトウガ、ハイマダラノメイガ、オオタバコガなど)
農薬の使用量を軽減させるなら早期防除とともに、フェロモン誘引剤などの利用も効果的。農薬使用量を減らすと、栽培者の経済的負担、作業負担を減らせるとともに、消費者への安全にもつながりやすい。
サクサクおいしい「新藍」「藍天」「冬藍」の三兄弟は、それぞれ種まき適期と収穫期が違うので、上手に組み合わせれば、長期間にわたってこのおいしさを楽しむことができます。歯切れのよさとみずみずしさが自慢の、こだわりの三兄弟キャベツだけが名乗ることができるブランド名、それが「スイートらら」です。
文:ウチダトモコ
編集:サカタのタネ