2018/11/30
店内の棚には種、季節になれば屋外売り場に苗。スーパーの野菜コーナーや直売所でも、しっかりと名前入りで並ぶミニトマト。それが「アイコ」です。皆さまもいずれかの場所で、見かけたことがあるのではないでしょうか。
家庭菜園でも青果としてもすっかりおなじみの「アイコ」は、実は3種類あるのをご存じですか?
赤、黄色、そして2018年デビューのオレンジ色が加わって、ますます華やかになったアイコシリーズをご紹介します。
文:ウチダトモコ
編集:サカタのタネ
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は多数に及びます。
2004年に「アイコ」が誕生し、2008年には「イエローアイコ」が、そしてこの2018年に「オレンジアイコ」が登場し、3色そろったところでめでたくシリーズ化されました。「アイコシリーズの隠れた特徴は、へたが外れにくいことなんですよ」と岡田さん。
つまり、完熟してもバラバラと落果しにくく、無駄がないのがうれしい!
アイコのチャームポイントの帽子(へた)には、こんな縁の下の力持ち的な秘密もあったのですね。
病気にも強いアイコシリーズ
幼苗時から丈夫で、家庭でも種から容易に育てられる「アイコ」。
茎葉の病気にも特に強く、タバコモザイクウイルス、萎凋(いちょう)病、斑点病、葉かび病に抵抗性があります。これは育種の段階で病気に強いことを考慮して、その因子を入れた結果です。よって、栽培中、農薬を使う手間をほとんど省けます。農薬代も減らせ、お財布にも優しい!
抵抗性とは?
サカタのタネでは、温度、湿度、病原体の密度などによる発生条件下にあっても、安定してその影響を受けにくい性質を「抵抗性」と呼んでいます。ただし、「抵抗性」であっても、発生条件の具合や、同じ病原菌であっても新たな系統が発現した際には、病気が発生する可能性があります。
種まきは4月になってから
ミニトマトの発芽しやすい地温は15 〜 38℃ で、特に25 〜 28℃ は最適温度帯です。しかし、低温期に温室などの設備がない家庭で発芽させようとしても難しく、たとえ発芽しても日照が足りず、苗が徒長してしまうことがあります。家庭では無理せず、気温が15 ℃ 以上に安定する4月まで待って種をまくとよいでしょう。
定植は5月の連休から
遅霜の心配がなくなった5月の大型連休からが、苗の植え付け適期。4月に種まきして育てた苗なら、 5月下旬から6月上旬を目安に植え付けましょう。コンテナ植えなら10号以上、プランターなら野菜用の大型のものを選ぶと安心です。
- 菜園、コンテナ植えともに向きます。
- 菜園、コンテナともに向きますが、雨を避けられると裂果を防げます。
菜園なら合掌作り、
コンテナならあんどん仕立てに
- 生育が旺盛なので、菜園、コンテナ植えともに、2〜3本仕立てが向いています。
- 生育は「アイコ」と「イエローアイコ」の中間ぐらい。1〜2本仕立てがおすすめです。
- 生育がやや緩やかで節間が短いため、1本仕立てがベター。
水と肥料はケチケチ作戦で
ミニトマトは乾燥地原産なので、やや乾かし気味に管理するのに向いており、果実も濃く甘くなります。
1段目の花房が小さな果実になったら、緩効性化成肥料を規定量より少なめに施しましょう。液体肥料を利用する場合は、規定倍率より薄めに希釈して使用するとよいでしょう。
こまめに誘引とわき芽摘みを
葉の付け根からわき芽が伸びてきたら、小さいうちに手で摘み取ります。また、葉の下の位置の茎に麻ひもなどを掛けて1回ねじり、8の字になるように支柱に結び留めて誘引します。
●上級ポイント
茎が太くなり過ぎてしなやかさが失われたときや、節間が長く伸び過ぎるときは、あえてわき芽を摘まずに残すと、生育が落ち着き、穏やかに。特に生育速度が速い「アイコ」で効果的です。株の生育をわき芽でコントロールする、上級ワザにチャレンジしてみませんか?
暑い夏をこうして乗り切る!
[ブリーダー編]
育種のワザで耐暑性を高めているアイコシリーズ。暑い夏を乗り切るのは、作業するブリーダーたちだって大変なはず。「そうですね。暑さの中で冷静で正確な判断を下すのはなかなか大変です」と岡田さん。
夏の畑での作業で、工夫していることをお尋ねすると、「必ず帽子をかぶり、首には保冷剤を巻いています。また強光線で目を傷めないよう、サングラスも必須です」とのこと。そして夏以外の季節もジョギングや筋肉トレーニングにいそしみ、常に体力づくりをしているそうです。
とはいえ無理は禁物。家庭では朝夕に短時間でささっと作業したりして、作業への関わり方も工夫してみましょう。「性質が丈夫で、健やかに育てば余計な手間はかかりません。 そういう意味でも、アイコシリーズはおすすめですよ」 (岡田さん)。
そのままでも十分おいしいアイコシリーズ。「こんな食べ方も!」「たくさん収穫できたときはこんなふうに!」というアイデアを、おそらく世界で一番アイコシリーズを食している、ブリーダーに教えていただきました。
なお、生育の速度が速まる夏は、果実の着色がよくても酸っぱく感じることがあります。その場合は収穫後、1〜2日おいてみてください。酸味が抜けて甘さが際立ってきます。保管するには、常温の場所がおすすめ。冷たくして食する場合は、食べる直前に冷やしましょう。
ハヤシライス
ダブル果房で収量が多い「アイコ」。最盛期に採れ過ぎるほど採れてしまったら、ハヤシライスにしてみて。ちょっと割れてしまった果実も、煮込みに使えば無駄になりません。材料を炒めるときに一緒に炒め、出てきた水分を利用すれば、水を加えなくてもよく、奥深い味に仕上がります。もちろん、トマトカレーにも応用できそう。
シロップ漬け
程よい酸味の「アイコ」と、甘みが強い「イエローアイコ」を砂糖を溶かしたシロップに漬ければ、とろける甘さのスイーツに。「アイコ」は果肉がしっかりしていてつぶれにくいので、きれいにできます。砂糖の種類を変えたりハチミツにしたり、煮立てた白ワインを加えたり、アイデア次第でいろいろ楽しめそう。
ドレッシング
「アイコ」を2つ切りにして、オリーブ油、ビネガーまたはレモン汁、塩、こしょう、あればハーブスパイスと混ぜてなじませます。シンプルなサラダにドレッシングとしてあえると、見映えのよい一皿が出来上がります。同じアイコドレッシングをタコやホタテなどとあえても美味!