2019/4/19
カラフルな花と抜群の花付きで、世界的にも広く親しまれているジニア プロフュージョン。
当社が自信を持っておすすめする品種の一つです。
病気や乾燥にも強く、明るい花色が魅力のジニア プロフュージョンについて、ブリーダーに話を聞きました。
品種開発担当者のこと。新しい品種を開発するのがブリーダーの仕事です。開発する品種の目標に合った親の選抜を行います。優れた品種を生み出すために、選抜した親同士を組み合わせます。そのため、1年間で交配する組み合わせの数は多数に及びます。
── まずは「ジニア プロフュージョン」誕生の経緯を教えてください。
佐藤
ジニア属には花が大きく豪華で花色も豊富なエレガンスという種がありますが、うどんこ病や斑点細菌病、黒斑病に弱く、日本やアメリカなどでも夏場に高温多湿になるような場所では枯れてしまうものが多かったんです。
一方で、花は小さくても病気に強いアンガスティフォリアという種があり、エレガンス種と掛け合わせて両者のよいところを持った新たな植物ができないか、ということで研究が進んでいきました。耐病性を持ち、コンパクトな草姿で花がたくさん咲くようなものを研究開発して今に至ります。最初にチェリーとオレンジ、続いてホワイトが開発されました。
── 育種する際にはよいものを選抜されていると思うのですが、それにあたって大変だったことや、狙った通りにできなかった苦労などはありましたか?
佐藤
元々チェリーは高温時に色が薄くなりやすかったのですが、そこからどういう形でフェード(退色)しないものを作っていくかというところで、さまざまな苦労がありました。その試行錯誤を重ねた結果、開発できたのが、「ダブルホットチェリー」です。
また、耐病性や開花性に優れ、かつ花色もよい品種を開発するには長い年月を要します。全てをバランスよく兼ね備えた品種を開発することはとても難しいですね。
── 昨年ガーデナーさんにコンテナ栽培をお願いしたのですが、根張りがすごいなという印象を受けました。 コンテナだと栽培管理は難しいのでしょうか。
佐藤
いや、そうでもないですよ。通常の栽培では5寸(約15㎝)程度の鉢で長期間楽しむのは難しいですが、6月いっぱいまで楽しんだ株を切り戻すと、1カ月後にはまた咲きだし、長期間楽しむことができます。花のない時期ができてしまいますが、切り戻した後の株は芽の数も増えてまとまりもよくなりますのでおすすめです。もちろん、花壇に植えれば根張りがよく株も張りますので非常に見応えのある株になります。
── 佐藤さんが思う、「プロフュージョン」の魅力はどんなところですか。
佐藤
やっぱり強いこと。強健さですね。放っておいても次々と咲いてくれますし、ある程度乾燥にも強いです。栽培のコツなどを聞かれることがありますが、「プロフュージョン」は育て方のコツがいらないところがコツ、でしょうか(笑)。
種からの栽培も難しくないです。種まきは覆土を浅めにして、乾燥させないようにします。地温が20℃くらいある時期では3日程度で発芽しますね。種まきしてから2カ月程度で花が咲いてきます。初めて種から育てる人にも栽培しやすい品種だと思います。
── 一番のお気に入りの「プロフュージョン」はなんですか?
佐藤
思い入れが強いのはレモンです。「プロフュージョン」の中でも特にバランスのよい品種かな、と思っています。
── レモンは、色も鮮やかで性質もよいですよね。
佐藤
そうですね。2016年に神奈川県で開催された第62回花卉品種審査会では、花色や花付きに加え、耐病性や株割れのしにくさなどが評価されて一等特別賞に輝き、さらに農林水産大臣賞を受賞した品種です。さまざまな場所での試作や植栽を見ていても、とても安定感のある品種だな、と思います。
── セルフクリーニング(※)という性質は、これは元々持っていたのでしょうか。それとも、育種で改良を重ねてそういう性質が作られたのですか。
佐藤
元々ある程度は持っていたようですが、その性質を改良しながら維持するために選抜をしています。新しい花が古い花を覆い隠すように咲く系統を選んでいます。
※ セルフクリーニングとは、枯れた花を覆い隠すように次々と新しい花を開花させる性質のこと。
── 花摘みの手間がかからないというのも大きな魅力です。
佐藤
そうですね。「プロフュージョン」は一つ一つの花の寿命が長いことも魅力の一つです。ただ鉢栽培では、古い花は摘んだ方が見栄えも株持ちもいいと思います。花の中心にある筒状花が全体的に黒ずんできた時期を目安に摘むようにするとよいと思います。
── 「プロフュージョン」は長い期間楽しめますよね。
佐藤
暑さに強い夏の花、というイメージが強いと思いますが、暖地であれば霜が降りるまで長く楽しめます。ただ秋には伸びた状態になりやすいので、先ほどお話しした通り、6月中に一度切り戻すことをおすすめします。切り戻しておくことで株が割れにくくなり、11月くらいまでずっと咲き続けますね。
── 栽培の面では特にコツがいらないというお話でしたが、切り戻しのほかに何かありませんか?
佐藤
アブラムシやコナジラミが付くことがあるので、適用薬剤の散布は定期的にした方がよいと思います。
── 水やりの管理はどうですか?
佐藤
乾かし気味がいいです。水を与え過ぎてしまうと草丈が伸びやすくなりますし、株がまだ小さい時期には根腐れの原因になることもあります。
── おすすめの「プロフュージョン」の使い方があれば教えてください。
佐藤
花壇やコンテナにはもちろん向きますが、ハンギングバスケットもおすすめですね。ハンギングバスケットは少ない土で植えるので花壇やコンテナに比べて草丈が伸びにくいです。伸びてしまった枝があっても、切り戻すことで下の節から芽が出てきますので、形が崩れにくく長い間楽しめますよ。
── 最後に、『園芸通信』読者の方に一言お願いします。
佐藤
育てやすい品種なので、気軽に育ててもらえると思います。花色も豊富なので植栽や寄せ植えのイメージに合わせて色を選ぶのも楽しいです。