除草剤の安全性は?使い方のポイントや種類について解説|コラム

除草剤の安全性は?使い方のポイントや種類について解説 除草剤の安全性は?使い方のポイントや種類について解説

家庭菜園や庭の手入れをしていると、季節ごとに生えてくる雑草に悩まされる方も多いと思います。上手に除草剤を使えば、手作業の負担を減らせます。

本記事では、除草剤の種類や効果、安全性、正しい選び方や使い方のポイントについて解説します。

除草剤の効果とは?

畑に除草剤を散布している人

除草剤とは、雑草の生育を抑制したり枯らしたりして取り除く薬剤のことです。農作物に悪影響を及ぼす雑草を取り除いたり、草刈りなどの手作業では追いつかない範囲の雑草管理を効率的に行えたりすることが大きな特徴です。

また、植物に効果を発揮し、動物や病原菌などにはほとんど作用しません。

除草剤には大きく分けて、下記の2種類があります。

  • 発芽前処理剤:雑草の増加防止に効果的。雑草が発芽する前に土壌中で作用する。
  • 茎葉処理剤:雑草の駆除に効果的。すでに生えている雑草に作用して枯らす。

効果の違いを理解して適切に使い分けると、除草作業の手間を大幅に減らし、家庭菜園や庭の植物の生育環境を守れます。

また、近年は安全性が高く作物や土壌への影響を抑えた製品も増えており、目的に応じて選ぶことで、植物を健やかに育てながら効率的に雑草を取り除くことが可能です。

除草剤の主な種類

さまざまな種類の除草剤

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第3回】農薬の成分は何でできているの?』より

除草剤は、前述した通り「発芽前処理剤」と「茎葉処理剤」に分類されますが、作用の仕組みによっても分けられます。

「光合成の過程を妨げて枯らすタイプ」「アミノ酸合成を阻害するタイプ」「植物ホルモンの働きを乱して成長を止めるタイプ」の3つに分けられ、どのような違いあるか、順に解説します。

除草剤を散布する場所ごとの選び方は、こちらの記事で紹介しています。
ぜひ参考にしてみてください。

光合成の過程を妨げて枯らすタイプ

光合成阻害タイプの除草剤は、光合成のシステム自体に作用して葉緑体内のエネルギー生成を妨げます。

植物は、太陽から受けた光エネルギーを使い、光合成により二酸化炭素と水を酸素とデンプンに変換可能です。光合成が妨げられると、植物は生育に必要な養分(デンプン)を作り出せなくなり徐々に枯れます。

ただ、植物は根などに栄養を蓄えているため、光合成を阻害されてもすぐには枯れません。そのため、光合成阻害タイプの除草剤の効果は、比較的ゆっくりと現れます。

アミノ酸合成を阻害するタイプ

アミノ酸合成阻害タイプの除草剤は、アミノ酸の合成に関わる酵素の働きを阻害することで、タンパク質の生成を止める効果があります。

植物が成長するためには、体内でさまざまなアミノ酸の合成が必要です。アミノ酸が不足すると、植物の生育に必要なタンパク質の生成・供給が止まり、雑草は徐々に弱っていき最終的に枯れます。

アミノ酸合成阻害タイプの除草剤は、人間をはじめとして動物への影響がほとんどない点も特徴です。ペットのいる家庭でも使用できます。

植物ホルモンの働きを乱して成長を止めるタイプ

植物ホルモンの働きを乱して成長を止めるタイプの除草剤は、植物ホルモンの働きを人為的に乱し、過剰な成長促進など異常を引き起こさせます。

植物の成長は、ホルモン量によっても調整されています。微量でも、植物の重要な働きを調節する作用を担う成長に欠かせないものです。このホルモン調整を乱すことで、最終的に植物を枯らします。

また、植物ホルモンを乱すタイプの他に、細胞分裂を阻害するタイプの除草剤もあります。どちらも植物の成長システムそのものをかく乱・阻害して枯らす除草剤です。

除草剤の安全性は大丈夫?

農作物を育てて調査する人、実験器具を使う研究者、顕微鏡をのぞく研究者など、食品や農業の研究に関わる人々と、中央でサラダを食べている女性。

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第5回】農薬ってどんな試験をして販売されているの?』より

除草剤の安全性について、日本では「農薬取締法」によって厳しく管理されています。除草剤として販売する前に、農林水産省による「農薬登録」を受けなければなりません。登録時に人や動物への毒性、環境中での分解性、水質・土壌への影響など、多岐にわたる安全性試験が行われ、基準を満たした製品だけが「農薬登録済み」として販売できる仕組みになっています。

農薬登録されている除草剤は、使用目的や場所(農地・庭・公園・道路など)が明確に定められており、その範囲内で正しく使うことで安全性が確保されています。

家庭菜園で使用する場合も、商品ラベルに記載された使用量や散布間隔を守れば、作物や周囲の植物、動物などに悪影響を与える心配はほとんどありません。

一方、農薬登録を受けていない除草剤(いわゆる「非農薬」「雑貨扱い」の製品)は、登録手続きを経ていないため、国の安全基準に基づく効果やリスク評価は行われていません。そのため、使用できるのは私有地や庭など限定された場所に限られます。

購入時には、製品の用途や成分表示をよく確認し、目的に合ったものを選ぶことが重要です。

農薬登録されているか見分ける方法を知っておこう

除草剤が農薬登録されているかどうかは、商品ラベルで確認できます。容器やパッケージに「農林水産省登録第〇〇〇〇号」などの登録番号が明記されていれば、農薬登録済みの製品です。

さらに、製品名の近くに「農薬」「除草剤」などの用途区分も表示されています。

一方、登録番号のない製品は非農薬扱いで、使用できる場所が限られます。そうした製品は「農薬として使用できない」という旨が容器や包装に記載されているので、購入時は必ず商品ラベルをチェックしましょう。

除草剤はどのように選べば良い?

エプロンと帽子を付けた女性が、スプレー容器、瓶、袋、計量カップ、スポイトなどさまざまな形状の除草剤について考えている様子

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第4回】農薬を剤型別に分けて、使い方を知ろう』より

除草剤を選ぶ際は、使う場所や目的、除草したい雑草の種類に合わせて選ぶことが大切です。ここでは、使用環境や効果の違いを踏まえ、最適な除草剤の選び方を紹介します。

使用場所や目的に応じて選ぶ

除草剤には「選択性除草剤」と「非選択性除草剤」の2種類があります。

選択性除草剤は、特定の植物だけに作用し、作物や芝生などを傷つけずに雑草だけを枯らすタイプです。畑や家庭菜園、芝地など、他の植物を育てながら雑草を抑えたい場所に適しています。

一方、非選択性除草剤は、接触した植物すべてに作用する強力なタイプで、駐車場や庭の通路、フェンス際など、植物自体をすべて除去したい場所に向いています。使用目的に合わせて使い分けることで、より安全かつ効果的な除草が行えます。

効果別に選ぶ

除草剤は作用部位で「茎葉処理型」「土壌処理型」「ハイブリッド型」に分けられます。

茎葉処理型は、生えている雑草の葉や茎から成分が吸収されて枯らすタイプです。速効性のあるものから、根まで移行して効果を発揮するものまであり、刈り取り後の再生抑制にも使えます。散布後すぐに降雨があると効果が落ちやすいため、天候と散布タイミングが大切です。

土壌処理型は、発芽前後の雑草に土壌表面で作用し、長期間の発生を抑えます。持続性に優れる一方、作物や樹木が根を張っているエリアに散布する場合は、薬害に気を付けなくてはなりません。他にも、傾斜地・砂地・水域などの近くでは除草剤の成分が流されてしまい、効果が薄れる可能性があります。

また、散布後に再び植え付けする際は、商品ラベルに記載の持続期間を確認することも大切です。

ハイブリッド型は、速効性と持続力を兼ね備えたバランス型で、既存の雑草を処理しつつ、その後の発生も抑えます。広い面積や管理頻度を減らしたい場所に適しています。

いずれも周辺作物への影響回避や飛散防止など、使用条件を守ることが重要です。用途・面積・雑草の種類・発生時期などの条件を考慮した上で使用しましょう。

安全に除草剤を使うためのポイントや注意点は?

除草剤は正しく使えば安全で効果的ですが、誤った方法で使用すると植物や環境に悪影響を与えることもあります。ここでは、安全に使用するための基本的なポイントと注意点を紹介します。

1.商品ラベルを必ず確認する

除草剤容器の裏面表示を確認している人

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第11回】農薬のラベルを見よう!②<使用時期、総使用回数、使用方法編>』より

除草剤を使用する前に、必ず商品ラベルの「使用方法」「使用場所」「希釈倍率」「安全上の注意」を確認しましょう。登録番号や適用場所、使用回数の上限なども重要です。

誤った濃度や散布量で使うと、効果が弱まったり、周辺植物への薬害・環境汚染の原因になったりするので注意します。

2.散布時の服装と保護具を整える

薬剤散布前に確認すべき項目として、天気予報の確認、防護服の着用、洗濯物の取り込み、子どものおもちゃの片付け、車の移動、隣家への周知を示したイラスト。

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第8回】農薬を上手に散布する方法と注意点を教えて!』より

散布時は長袖・長ズボンに帽子、ゴム手袋やマスク、保護メガネなどを着用し、作業後は手洗い・うがいを徹底しましょう。

基本的に除草剤は人間を含め、動物には影響がないように作られています。しかし、皮膚や粘膜に付着すると、悪影響を及ぼす可能性もあります。

特に風がある日は薬剤が飛散しやすいため、肌の露出を避けることが大切です。容器は詰め替えずに、購入した容器のまま使いましょう。もし肌に付着したら、すぐに洗い流してください。

3.天候と風向きを確認する

散布は、風の弱い晴れた日に行うのが理想的です。

風が強いと、薬剤が周囲の植物や隣家に飛散するおそれがあり、雨が降っていると流されて効果が薄れます。散布前に天気予報を確認し、風速2m以下、散布当日と翌日も降雨の心配がない時間帯を選びましょう。

4.散布後の立ち入りと管理に注意する

除草剤散布後は、一定時間(当日から翌日)は立ち入らないようにしましょう。

特に、ペットや子どもが立ち入らないよう注意が必要です。柵で区切るなど、物理的に入れないようにすると安心です。

5.周囲の植物や環境への配慮

除草剤は除去したい雑草だけでなく、近くの樹木や作物にも影響を与えます。特に非選択性タイプは根や茎からも吸収されるため、散布範囲に注意が必要です。

また、水源の池などの近くでは、除草剤の流入による環境への影響も考慮し、使用を避けましょう。

6.保管と廃棄のルールを守る

除草剤散布後の注意点として、散布液を使い切る、器具はよく洗って決めた場所に保管する、手洗いやうがい・顔を洗う、当日は散布場所で子どもやペットを遊ばせないことを示したイラスト。

園芸通信『教えて!望田先生! 農薬のいろは【第8回】農薬を上手に散布する方法と注意点を教えて!

除草剤は直射日光や高温を避け、子どもの手の届かない冷暗所で保管します。

容器が破損したり、他の薬剤と混ざったりすると危険な場合があるため、開封後はしっかり密閉して使用期限内に使い切りましょう。

使用後の容器は、水洗いして、自治体の指示に従い再利用できないよう処分するのが安心です。噴霧器も水洗いして、他の用途に使わず、除草剤散布専用として保管します。

残った薬剤や洗浄水は、排水口や川などに流さず、商品ラベルに従って処理しましょう。

おすすめの除草剤を紹介

除草剤の効果や使用方法を理解したところで、おすすめの除草剤を紹介します。

「クサクリア®」茎葉処理剤/非選択性除草剤

「クサクリア(R) 」茎葉処理剤/非選択性除草剤

水で薄めるタイプの除草剤で、ジョウロで散布可能です。

雑草の葉から吸収されて根まで枯らすため、散布翌日から種まきや植え付けができます。スギナやササなど、しつこい雑草にも対応しています。

「草退治メガロング®シャワー」茎葉処理剤/非選択性除草剤

「草退治メガロング(R)シャワー」茎葉処理剤/非選択性除草剤

希釈不要のシャワータイプなので手軽に使えます。

約6カ月効果が持続し、雑草を抑制。駐車場・通路などの広範囲で「雑草を一掃したい」場面に適しています。

「カダン除草王 ザッソージエース」茎葉処理剤/非選択性除草剤

「カダン除草王 ザッソージエース」茎葉処理剤/非選択性除草剤

浸透性の高い最新の除草成分を使用。しっかりと付着して、根まで枯らしてくれます。

土壌に落ちると速やかに分解されるため、木の根元などに生えた雑草を駆除する際にも便利です。

「マイターフ シバニードロング粒剤」発芽前処理剤/選択性除草

「マイターフ シバニードロング粒剤」発芽前処理剤/選択性除草

芝生やその周りの狭い範囲など、細かく雑草管理したい家庭菜園の“隙間”に使いやすい粒剤タイプです。

最長で約6カ月効果が持続し、一年生のイネ科雑草やカタバミなど、さまざまな雑草に効果を発揮します。

「グリーンスキット®シャワー」茎葉処理剤/選択性除草剤

「グリーンスキット(R)シャワー」茎葉処理剤/選択性除草剤

畑の畝間や果樹・庭木の下、花壇などで使用でき、野菜や果樹、庭木、草花など52の作物(適用作物名数)の周りで使える除草剤です。

作物周辺の雑草だけピンポイントで退治できるため、雑草を枯らしてから、種まきや苗の植え付けができます。

「草退治E粒剤」発芽前処理剤/非選択性除草剤

「草退治E粒剤」発芽前処理剤/非選択性除草剤

除草効果が最速3~7日で表れ始め、約6カ月もの長期間にわたって雑草の発生を抑えてくれます。

2種類の有効成分が一年生雑草の発生を予防するため、しつこい雑草を根から枯らします。低温でも効果を発揮するため、一年を通じて使用できる除草剤です。

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まとめ

除草剤は、正しい種類選びと適切な使い方を守れば、家庭菜園や庭の管理を効率的に行えます。

使用目的・場所・雑草の種類に合った除草剤を選び、商品ラベルの指示に従い安全に扱うことが大切です。

また、使用時には散布に適した服装に整える、周辺環境に配慮する、保管や廃棄のルールを守るといったことへの注意も必要です。目的や環境に合った適切な除草剤を活用して、健やかな植物の生育環境を整えましょう。

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