猛暑に負けない!夏野菜の「熱中症」対策マニュアル

猛暑に負けない!夏野菜の「熱中症」対策マニュアル

近年は夏の訪れが早まり、猛暑を乗り切るためには、野菜にもしっかりと「熱中症対策」を施すことが重要です。高温、直射日光、乾燥や水分不足の影響を最小限にするため、家庭菜園での対策を学んで早めに対応していきましょう!

野菜の「熱中症」とは?

野菜の「熱中症」とは、高温、直射日光、乾燥や水分不足の影響を受け、株や実に障害が出ることです。例えば、家庭菜園で次のような症状が見られたら熱中症の可能性があります。

見逃せない「熱中症」のSOSサイン

株がぐったりとしおれている

写真提供:PIXTA

葉が変色して枯れている

写真提供:株式会社サカタのタネ

実が大きくならない・奇形になっている

日焼けで一部が変色したトマト

尻が細くなったキュウリ

熱中症の原因

野菜の株や実が熱中症になってしまう主な原因は、次の三つです。

  • 強い日差しで気温や地温が高くなり過ぎること
  • 強烈な日光が直射すること
  • 日照りによる乾燥と水不足

家庭菜園で野菜が乾燥や水不足の状態にさらされると根が傷んでしまい、正常な発育ができなくなってしまうのです。

熱中症対策のカギは「植え付け時」にあり

せっかく心を込めて育てた野菜を熱中症から守るためには、前述した原因を取り除くことが重要ですが、実は植え付けの段階からできる対策があります。

植え付け時の熱中症対策1:よい苗を選ぶ

まずは、よい苗を選びましょう。苗のよしあしは、その後の成長に直結します。暑さに耐えられる丈夫な株に育てることが、夏を乗り切るための大切な土台となります。

トマト、ナス、ピーマン・パプリカの苗の選び方

「一番花(最初の花)」が咲いているか、「一番花のつぼみ」が付いている苗を選びます。

一番花が付いたナスの苗

キュウリ、メロンなどのウリ科、オクラの苗の選び方

ベストなオクラの苗

もし一番花の付いていない苗しか手に入らなかったときは?

花や蕾のない苗を植えると、葉ばかりが茂り、実の付きが悪くなってしまいます。一番花が付く前の小さな苗しか入手できなかった場合は、次の手順を参考に鉢替えをして、一番花が咲くまで苗を育てましょう。

鉢替えの手順

  1. 人さし指と中指で茎の根元をはさんで逆さまにして、根鉢を崩さないようにポットから苗を抜く。
  2. ひと回り大きなポットや鉢に苗を入れ、園芸用の土を足す。
  3. ジョウロのハス口を使って、鉢底から水が出てくるまでしっかりと水やりする。
  4. 日当たりがよく、風の影響を受けにくい場所に置き、一番花が付くまで育てる。

根鉢に湿り気がない場合は水やりをして、少し時間を置いてから鉢替え作業をする

植え付け時の熱中症対策2:野菜が育ちやすい環境を整える

夏野菜の苗の植え付けに適したタイミングは、4月下旬~5月中旬ごろにかけてです。まだ、地温が高温になっていないこの時期、野菜が育ちやすい環境を丁寧に整えてあげると、格段に根付きがよくなり、暑さに負けない生命力の強い株に育ちます。

「畑(露地)」と「鉢植え(プランター・鉢などの容器)」に分けて手順を説明します。

畑(露地)の場合:黒マルチを張り、地温を上げる

1.植え付け2週間前までに堆肥や苦土石灰を施して畝を立て、黒マルチを張る。

黒マルチが太陽熱を吸収して地温が上がり、植え付けた株の生育を促す。※虫がより付きにくい、銀色の線の入った黒マルチを使うのもおすすめ。

銀色のストライプが害虫の飛来を軽減する「家庭菜園用ムシコン®」※サカタのタネ公式オンラインショップで購入可能。写真提供:株式会社サカタのタネ

2.植え付け前日の夕方、マルチに植え穴を開ける(穴開きマルチの場合は不要)。

マルチ用の穴開け器を使うと簡単

穴開けと移植ゴテが一つになった「マルチゴテ」※サカタのタネ公式オンラインショップで購入可能。写真提供:株式会社サカタのタネ

3.ハス口をはずしたジョウロで、植え穴にたっぷり水を注ぐ(雨が降った場合は不要)。

ハス口を外して手を添えると狙いが定まる

4.植え付け当日の朝、ポットの苗にもたっぷりと水やりする。

5.1~3で土を整えた畑に、4のポット苗を午前中の暖かい時間帯に植え付ける(植え付けの方法は、植え付け時の熱中症対策3へ

鉢植え(プランターなどの容器)の場合:大きめの鉢と園芸用の土を用意する

1.根がしっかり張れるように、大型(30~40リットル)、または深型(直径も高さも30cm以上)の鉢と、野菜用の培養土などを用意する。必ず野菜の成長に必要な養分がバランスよく配合された専用の土を使うこと。

初心者でもプロでも使いやすい「花と野菜の培養土 W-SOIL-305」※サカタのタネ公式オンラインショップで購入可能。写真提供:株式会社サカタのタネ

2.植え付け前日、鉢の半分くらいまで土を入れ、たっぷりと水をやる。

3.植え付け当日の朝、ポット苗に水をやり、午前中の暖かい時間帯に植え付ける(植え付けの方法は熱中症対策3へ)。

植え付け時の熱中症対策3:植え付けた場所に適した量の水をやる[

畑は土壌に水分を保持できますが、プランターなどの鉢に入った土は水分を保持できず、水分不足になりがちです。同じ植物の苗でも、植え付けた場所によって水やりの量を変えましょう。これが、水などの吸収力に優れた根を育てることにつながります。

畑(露地)の場合:水をやり過ぎないようにする

1.根鉢を崩さないようにポットから苗を取り出す。

苗は、午前中の暖かい時間帯に植え付ける

2.苗を植え穴に置き、周りに土を足して株を安定させる。

根鉢の上部は埋めないように

3.土の表面を湿らせる程度に水をやる

水圧を弱めるため、ジョウロのハス口は上に向ける

重要!

水をやり過ぎると、常に水が土の浅いところにある状態になり、根が深いところまで伸びようとしません。土の表面近くの水分が少なければ、根は必要な水分を求めて深く伸び、広がって行きます。

猛暑の時期の「乾燥」「水分不足」を乗り切れるかどうかは、土壌の深いところにある水分をどれだけ吸収できるかがカギです。乾湿のメリハリがつくよう水やりの頻度や量を調整し、根が深く伸びるようにサポートしましょう。

鉢植え(プランターなどの容器)の場合:底から流れ出るまでたっぷりと水をやる

1.根鉢を崩さないようにポットから苗を取り出す。

2.土を半分ほど入れた鉢に苗を置き、土を入れる高さを決める。根鉢の表面の高さが、鉢のふちから3~5cmほど下になくるように調整する。

3.苗の周りに土を入れる。このとき、根鉢の上部を土で埋めないように注意する。

土を鉢の縁ギリギリまで入れず、3~5cm下がった隙間(ウォータースペース)を残すことで、水やりの際に土が流れ出るのを防ぐ

4.鉢の下から水が流れ出るまでたっぷり水をやる。

重要!

プランターなどの鉢は、畑と違い吸収した水をとどめておくことができず、根を張れるスペースにも限界があります。下から水が流れ出るまでたっぷり水をやり、根が鉢全体から水分を吸収できるようにしましょう。

植え付け後の熱中症対策4:枝を整理して、実の育ちを助ける

枝や葉が茂り過ぎると、実が育つための養分が枝葉の成長に使われてしまいます。風通しも悪くなり、蒸れると熱中症に……。

健康な実をたくさん収穫するために、野菜の特徴に合った方法で枝葉を整理しておきましょう。「整枝」という作業です。

ナスの例

一番花の下に出たわき芽2本を残し、その他のわき芽は手で摘む

真夏の熱中症対策

梅雨が明けると、いよいよ夏本番。ここまで丈夫な株に育っていても、油断は禁物です。さらに対策をして、熱中症の原因となる強い日差し、気温や地温の上昇、乾燥や水不足から家庭菜園の野菜を守りましょう。

真夏の熱中症対策1:地温の上昇を防ぐ

直射日光が照りつけると地面の温度が上がり、根がダメージを受けます。株元にわらや2~3枚重ねた新聞紙を敷き、直射による地温上昇を和らげましょう。土壌水分の蒸発防止にも役立ちます。

畑の場合:わらや新聞紙を敷いて、麻ひもで押さえる

マルチングの上にわらや新聞紙を敷き、風で飛ばされないように麻ひもを渡してピンで留めます。わらや新聞紙は水を通し、通気性もあるので野菜の成長を妨げません。自然素材の麻ひもはやがて土に返るので、回収せずに使えます。

わらや新聞紙がないときは!?

・専用シートを使う

敷わらの代わりとなる専用資材は、オンラインショップやホームセンターなどで入手できます。耐久性があり便利です。

乾燥、雑草、泥跳ねを防止し病害虫を予防する「ワラのかわりシート」※サカタのタネ公式オンラインショップで購入可能。写真提供:株式会社サカタのタネ

・段ボールを使う

適当な大きさに切った段ボールを敷きましょう。段ボールは厚みがあり、水が染み込みにくいため、土の乾燥には注意が必要です。

・緑肥を植える

畑なら、ソルゴーやエンバクなどの緑肥作物(畑にすき込むために育てる作物)を植えるのもよいです。畝の周りや空きスペースに種をまいて育て、伸びたら刈り取り、そのままわらの代わりとして敷くこともできます。

畑の空きスペースに植えたソルゴー

鉢植え(プランターなどの容器)の場合:レンガなどの台を用意して、鉢をのせる

レンガなど台になるものを用意し、鉢を浮かせるように置きます。こうすれば、地面からの熱が直接伝わらず、風通しもよくなります。台は、すのこ、木の棒、発泡スチロールなどでも構いません。乾燥が気になる場合は、鉢に入った土の表面に新聞紙を掛けておきましょう。

真夏の熱中症対策2:水のやり方を工夫する

水やりのタイミングは夕方のしおれ具合を見て判断しますが、水やりのときは以下のポイントを意識しましょう。

水は、早朝か地温の下がった夕方にやる

水やりは、日の出後すぐの早朝か、地温の下がった夕方にします。地温が高くなっている日中に水をやると水が温まってしまい、根が傷む原因になるからです。

水は、土全体に行き渡るようにやる

水は主に、根の先端にある「根毛」から吸収されます。株元だけに水をやったのでは、広がった根の先端にある根毛まで届きません。土全体に行き渡るように水をやりましょう。

根元だけの水やりでは、根毛が水を吸えない!

日中の炎天下で葉や茎に水をかけない

どんなに葉や茎がしおれていても、日中の炎天下では水をかけないようにしましょう。葉や茎にかかった水分が温まると蒸れてしまい、かえって株を傷めることにつながります。

日中の炎天下で葉や茎への水やりは、蒸れの原因になってしまう

畑の場合:根の深さで水やりの頻度や量を調節する

野菜が必要とする水の量は、野菜の種類によって異なります。野菜に合わせて調節しましょう。

キュウリ

根が浅く水切れしやすいので土の表面が乾いたら水をやる。

ナス、ピーマン・パプリカ、オクラ、マクワウリ、トマト

根が深く広く張るので、1週間以上雨が降らなかったときや、株がぐったりしおれているときに水をやりましょう。

畑の場合:ペットボトルを使い、根の先端を狙って水をやる

底を切り取ったペットボトル(500ml)を、株と株の間に設置します。株元から少し離れた位置から給水することで、深く広がった根の先端に直接、水を届けられます。地表から水分が蒸発することもないため効率的です。また、マルチフィルムを張っていると後からの水やりが困難ですが、この方法ならマルチをめくる手間も省けます。

鉢植え(プランターなどの容器)の場合:1週間に1度くらいのペースで水の代わりに液肥を与える

鉢植えでは、水分と一緒に養分も流れ出てしまいます。1週間に1度くらいのペースで水の代わりに液肥を与え、養分を補いましょう。

真夏の熱中症対策3:直射日光をさえぎる工夫をする

植物の成長には光合成が欠かせませんが、強い直射日光が当たると、実が日に焼けたり、硬くなったりします。直射日光が当たらないように環境を整えましょう。

遮光ネットや遮光フィルムを利用する

トマトなど雨よけを設置している場合は、遮光率50%程度の遮光ネットや遮光フィルムを雨よけの上から張ると効果的です。

株の葉を利用して光を遮る

日焼けしやすいナスやトマト、葉が大きなオクラやマクワウリなどは、枝葉を利用して、直射日光を遮れます。

ナスのわき芽を伸ばせば日陰ができる

真夏の熱中症対策4:猛暑・酷暑の時期は、基本的に肥料はやらない

猛暑・酷暑が続くと野菜は成長が止まります。「生育が悪いのでは?」と勘違いして必要以上の肥料をやってしまうと、野菜内部の養分バランスが崩れ、奇形果などの原因になります。

真夏の熱中症対策5:葉が茂り過ぎたら整枝する

葉は、適度な日陰をつくってくれますが、茂り過ぎると風通しが悪くなり、病害虫も発生しやすくなります。

葉が茂り過ぎているときは、まず、内側に伸びている茎や葉を取り除きましょう。その後、混み合っている部分の枝を整理します。実の付いた枝ごと切り戻すのも方法の一つです。

枝ごと収穫したナス。こうすると新たなわき芽が伸びて収量が増える

暑さに強く育てやすい品種を選んで熱中症対策

暑さに強く育てやすい品種を選ぶことも、大切な熱中症対策です。サカタのタネの人気シリーズ「おうち野菜」から、家庭菜園でおすすめの野菜を紹介します!

細長くてトロっとした食感が魅力の長ナス『夏豊作®

おうち野菜® 長ナス『夏豊作®』写真提供:株式会社サカタのタネ

<おすすめポイント>

  • 暑さに強い
  • 病気に強い
  • 生育旺盛
  • たくさん収穫できる
  • 長く収穫できる
  • 家庭菜園で育てやすい

フルーティーで甘いパプリカ『ぱぷりーな®』(レッド、イエロー、オレンジ)

おうち野菜® パプリカ『ぱぷりーな®』写真提供:株式会社サカタのタネ

<おすすめポイント>

  • 暑さに強い
  • たくさん収穫できる
  • 長く収穫できる
  • コンパクトに栽培できる
  • 実の色がカラフル

柔らかくて味のよいオクラ『満天®

おうち野菜® オクラ『満天®』写真提供:株式会社サカタのタネ

<おすすめポイント>

  • 暑さに強い
  • 草丈が短く管理がラク
  • 真夏にたくさん収穫できる
  • 家庭菜園でも育てやすい

すっきりと爽やかな甘みのマクワウリ『すっきりメロン』

おうち野菜® マクワウリ『すっきりメロン』写真提供:株式会社サカタのタネ

<おすすめポイント>

  • 丈夫で病気になりにくい
  • 生育旺盛
  • たくさん収穫できる

まとめ

家庭菜園では、野菜の熱中症を防ぐためにも、まずは暑さに負けずに育つよい苗を選び、根が深く広く張るように植え付けましょう。「おうち野菜®」シリーズには、暑さに負けず元気に育つものが多いのでおすすめです。

株が大きくなってきたら直射日光が当たらないように管理して、地温の上昇や土壌水分の蒸発を防ぎましょう。畑での栽培は水をやり過ぎないこと、プランターなどの鉢植えでは底から水が染み出すくらいたっぷり水をやることもポイントです。

毎年、厳しい暑さで家庭菜園の野菜がうまく育たず、悔しい思いをされている方も多いのではないでしょうか。今年の夏は、ご紹介した熱中症対策を参考にして備え、ぜひたくさんの新鮮野菜を収穫してくださいね!

写真提供:株式会社サカタのタネ

文:まつもとのぶこ 写真:麻生健洲(一部提供 株式会社サカタのタネ、PIXTA)

麻生 健洲

麻生 健洲

あそう けんしゅう

千葉大学園芸学部を卒業後、高校で野菜、養液栽培、生物工学などを教える。退職後は書籍の執筆・監修をしている。著書に『だれでもできるはじめての野菜づくり決定版』『新版 だれでもできるベランダで野菜づくり』(ともに家の光協会)がある。趣味は、ネイチャーフォト、絵画、自然散策。

Instagram https://www.instagram.com/78ponta/

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