東アジア植物記 ウリ科帰化植物

2026年、新しい年が巡ってきました。物価高や不安な世相をよそに、日一日と光の時間は確実に長くなっていきます。植物たちは地球の回転がもたらす変化に敏感に応え、春の準備を始めます。私たちも植物のように、心の中に希望の芽を育んでいけたらと思います。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。


さて、原生していた土地から、故意もしくは偶然に他の国に持ち込まれ、その土地で自生(野生化)して世代を更新し、定着した植物を「帰化植物(naturalized plant)」といいます。今回は、ウリ科の帰化植物についてのお話です。

2026年の『東アジア植物記』は、前回に引き続き、中国南部の野生のウリ科植物から始まります。ミャンマーとの国境付近の山地、乾燥した林道を散歩中にウリ科植物を見つけました。

モモルディカ属Momordica sp.

上の写真の植物は、Momordica sp.です。これがウリ科であることはすぐに分かりますが、しばらく同定できませんでした。調べるうちに モモルディカ(Momordica)属の植物だろうと判断しました。この属は、アフリカからアジアにかけて約60種が分布しています。

ツルレイシ(ゴーヤー)

モモルディカ属というと聞き慣れないかもしれませんが、ゴーヤーといえば皆さんもご存じだと思います。ゴーヤー、ニガウリ、ツルレイシなどさまざまな呼び名がある野菜ですが、植物学的には、ツルレイシMomordica charantia(モモルディカ カランティア)ウリ科ツルレイシ属です。

属名のMomordicaはラテン語で「かじる」に由来し、種形容語のcharantiaは「苦い」を意味しています。

これは沖縄で見かけたゴーヤー畑です。腰の高さに棚を作り、このような栽培がされていました。味の好みは分かれるとはいえ、ゴーヤーは夏の家庭菜園の定番であり、緑のカーテンにも利用されます。栽培されているゴーヤーは、原種から品種改良された作物群です。

ゴーヤーの原種はインドや東南アジアに原生する野生のウリでした。私は、原種のゴーヤーを見たことはありませんが、世界各地に食用などとして持ち込まれ、畑から逃げ出して雑草化している様子を見かけます。現在は、熱帯・亜熱帯域のアジア地域以外でも太平洋の島々、アフリカ、南米などの荒れ地や道端に帰化しています。

熱帯域の道端で野生化したゴーヤーは、その環境に適応する過程で小型化や形のばらつきなどの変化が起こり、原始的な姿に近づいていました。

「いったん野菜になった作物が原種に戻る」というわけではありませんが、人の手を離れると原種に近い形質が復帰する傾向があります。それは「先祖返り(atavism)」と呼ばれる現象です。

ゴーヤーは熟すと果実が黄色になり、裂けると赤い仮種皮に覆われた種子が現れます。

これは動物を呼び寄せ、その動物が食べることで、種子散布の役割を果たします。そして、ゴーヤーは熱帯域で容易に野生化しました。このまま温暖化が進めば、日本各地でもゴーヤーの野生化が進むかもしれません。

ウリ科はご存じの通り、キュウリ、メロン、スイカ、カボチャなど重要な野菜が多いです。人里離れた場所に暮らすウリ科植物はそれほど心配ではありませんが、農地の道端や空き地に野生化したウリ科植物が現れると、ウリ科に共通する病害虫の感染源になるかもしれません。そんな心配が現実となっています。

アレチウリ

アレチウリSicyos angulatus(シキオス アンギュラートゥス)ウリ科アレチウリ属。アレチウリは、元々カナダ南東部からアメリカ合衆国の東部・中西部にかけて広く分布していました。それらの地域から輸入されたダイズに、アレチウリの種子が混入していて、日本に侵入したと考えられています。湿った土地を好むアレチウリは、河川敷を中心に農地などにも侵入し、全国的に拡散しています。

それは侵略的雑草として迷惑なだけでなく、ウリ科に共通するウイルス病や細菌病などの感染源(リザーバー)になる可能性があると危惧されています。属名のSicyosは、古代ギリシャ語で「ウリ科植物全般」を指す用語です。種形容語のangulatusは、ラテン語で「角ばった」「稜(りょう、かど)のある」という意味で、果実や茎に角状の突起があることを表します。

アレチウリの葉はキュウリに似て五角形で、花は薄い黄緑色でシックな花です。アレチウリが属する(Sicyos)属は、中南米に分布の中心を持ち、約60種が確認されています。アレチウリは南米から北米に進出したウリ科の植物です。

今回の『東アジア植物記』では、「ウリ科植物はアフリカを起源としている」と述べました。アレチウリが北米原生なのは意外に思われるかもしれません。

古代の地球、古生代後期から中生代初期には南半球にゴンドワナ大陸、北半球にローラシア大陸がありました。ウリ科植物の起源を詳しくいうと、ゴンドワナ大陸要素だったのです。そのゴンドワナ大陸は今のアフリカ大陸、オーストラリア大陸、インド亜大陸、南アメリカ大陸などで構成されていました。それが南アメリカにも多くのウリ科植物が原生する理由なのでした。

次回は、家庭菜園でもおなじみのキュウリ属のお話です。お楽しみに。

小杉 波留夫

小杉 波留夫

こすぎ はるお

サカタのタネ花統括部において、「虹色スミレ」「よく咲くスミレ」「サンパチェンス」などの市場開発を行い、変化する消費者ニーズに適合した花のビジネスを積極的に取り組む。定年退職後は、学校の先生に対する園芸指導や講演活動をしながら、日本家庭園芸普及協会の専門技術員として、自ら開発した「たねダンゴ」の普及活動などを行っている。
生来の「花好き」「植物好き」である著者は、東アジアに生息する植物の研究を楽しみに、植物の魅力を発信中。

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