自分でできる! 植物いきいき! プランターと花壇の土づくり 【第5回・最終回】 めざせ! 究極のオリジナル培養土づくり

これまでご紹介してきた土づくりの材料や知識を総動員して「究極のオリジナル培養土」づくりに挑戦してみましょう!

はじめに

これまでの回でお伝えしてきたように、プランターや花壇など限られたスペースでの園芸こそ、「土」がとても重要な役割を担います。空気(酸素)と水をバランスよく含み、有益な微生物が働いてくれる健康的な土中環境を用意できれば、植物は養分や水分をたっぷりと吸って、生き生きと力強く育ってくれます。

最終回ではまず、土中環境を改善してくれる”名脇役”ともいうべき「もみ殻くんたん」をご紹介します。そして、これまでにご紹介した土づくりの材料や知識を総動員して「究極のオリジナル培養土」づくりに挑戦したいと思います!

土中環境を改善してくれる”名脇役”のもみ殻くんたん

これまでの回で、土壌改良に役立ついろいろな材料を紹介してきましたが、「もみ殻くんたん」はあまり知られていないかもしれません。しかし、その効果は抜群! 知る人ぞ知る、いわば”名脇役”のような存在です。

もみ殻は、稲の籾(もみ)のいちばん外側にある硬い皮の部分で、主成分は、セルロースです。リグニン、ケイ酸なども含む硬い素材のため、微生物に分解されにくく、水をはじく性質があります。

農業では古くからそのまま土に混ぜて通気性や排水性、保水性を高める土壌改良材として利用されてきました。また、畑や通路にマルチング材として敷き、地温の安定や雑草抑制など、土を保護するためにも利用されてきました。

もみ殻(左)、もみ殻くんたん(右)

そんなもみ殻を約400℃でいぶし、ゆっくりと黒くなるまで炭化させた農業資材が「もみ殻くんたん」です。もみ殻くんたんは、土の比重の10分の1という軽さで、一般的には弱アルカリ性。もみ殻の形を保ったままの形状で、無数の微細な孔(20~80μm)があいている「多孔質構造」のため、1gあたり330平方メートルの表面積をもつとされます。これは木炭以上の広さです。

この性質により、少量でも土に混ぜると、通気性、排水性、保水性を改善できるという優れものなのです。

もみ殻くんたんは、天然素材100%の優れた土壌改良剤

もみ殻くんたんのおもな効果

土壌改良
  • 通気性・排水性・保水性の向上
  • 根が伸びやすくなる環境(フカフカの土壌)
微生物のすみか
  • くんたんの多孔質構造は、土壌菌などの土壌微生物のすみかとなり、土の中の生態系を豊かにする
  • 微生物の活性化により、植物の根の健康促進や耐病性の向上に効果がある
  • 連作障害の予防にも最適
病害虫の抑制効果(防虫・殺菌)
  • アブラムシなどが嫌う成分を含み、マルチング効果も期待できる
  • くんたんを作る過程で出る煙には、殺菌・防虫効果があるとされており、燻蒸(くんじょう)効果を期待して、畑やビニールハウスの消毒に活用
炭素固定(カーボンシンク)
  • 炭素を長期間土壌に固定できるため、温室効果ガスの削減にも貢献
保温・断熱・防草効果
  • 冬場の根の冷え対策にも有効(太陽熱を吸収)
  • 特にプランター栽培では、根の温度管理に有効
  • 保水性が高いが、表面は乾きやすい性質のため、雑草の根の成長を不安定にして抑制する
ケイ素の供給
  • もみ殻にはケイ素が含有されており、くんたんにしてもそのまま残る
  • ケイ素は植物の茎や葉を丈夫にするため、病気や倒伏に強くなる
pH調整
  • くんたんはアルカリ性のため、酸性に傾いた土を中和する

混ぜるだけで、土がグレードアップ

もみ殻くんたんの多孔質構造は、土壌微生物のすみ家にうってつけ。土の中の生態系を豊かにし、有益な微生物の活性化により、植物の生育促進や土壌病害の抑制にも効果が期待できます。つまり、「生きた土」づくりの陰の立役者です!

さらに、もみ殻くんたんの「黒色」が太陽熱を吸収し、地温を高める効果も期待できます。春のまだ肌寒い時期などに使用すれば、土の表面に1~3cmほど敷くことで地温が上がり、発芽促進や生育促進効果が期待できます。

乾燥防止、雑草抑制、害虫忌避にも役立つほか、植物の細胞壁を強くするケイ素や、植物の生育を助ける微量要素も含んでおり、使用するメリットはたくさんあります!

もみ殻くんたんの使い方

もみ殻くんたんの使い方は簡単。花壇なら、1平方メートルあたり2~3リットルを目安にし、土に均等に混ぜ込むだけで、排水性、通気性、保水性がアップします。鉢植えやプランターなら、用土の10~20%程度を混ぜると、根の張りが格段によくなります。

花壇の場合

鉢植えやプランターの場合

ちなみにもみ殻くんたんは「炭」の一種なので、木炭や竹炭と同じように消臭効果もあります。コンポストを使っている方は、生ごみや落ち葉に混ぜると、微生物の活性化による発酵促進、においの抑制にも役立ちます。

酸度調整が目的なら、石灰資材がおすすめ

もみ殻くんたんはpH8~10のアルカリ性なので、酸性土壌の中和にも多少の効果が期待できます。とはいえ、その効き目はかなりゆっくりですし、使い過ぎるとpHが高くなり過ぎてしまうことも。そこで、すぐに酸度調整をしたい場合は、もみ殻くんたんよりも石灰資材がおすすめです。

日本の土は火山灰土が多いので、酸性に傾きがちです。基本的に多くの植物が好む土壌は、中性~弱酸性の土。ただし、ハーブやオリーブは弱アルカリ性の土壌を好むものが多いため、特に石灰資材などでpH値を調整した方がよいケースが一般的です。

石灰の主成分はカルシウム。その種類はいろいろあり、土の性質を整える「調律師」のような役割を果たす肥料土壌改良材の一種です。

※参考

ホウレンソウやタマネギ、キャベツなどのアブラナ科、トマト・ナス・キュウリなどの果野菜は土が酸性に傾くと根が傷みやすく、成長が不安定になりがちです。

土壌の酸度調整に、よく畑などで使われているのがpH9~10 の「苦土石灰」。植物に必要なマグネシウムとカルシウムを供給する土壌改良材です。苦土石灰は価格も手ごろであることが多く、使いやすい石灰資材なのですが、過剰になると土が締まりやすくなってしまいます。通気性や排水性が悪化する可能性もあるので、使い過ぎは厳禁です。

家庭園芸で使うなら、かき殻などの「有機石灰」がおすすめです。効き目はゆっくりですが、土壌への悪影響がほとんどなく、ほかの石灰資材と違い、土に混ぜてすぐに植え付けができます。天然石灰に健康な土をつくり4種の天然素材をバランスよくブレンドした「天然100%野菜の石灰」を使うのもよいですね!

苦土石灰(左)、かき殻石灰(右)

天然100%野菜の石灰」※サカタのタネ 公式オンラインショップで購入可能。

“究極のオリジナル培養土”をつくってみよう

さて、ここからはいよいよ本連載の集大成、“究極のオリジナル培養土”づくりに挑戦しましょう。

これまでの回で取り上げた土づくりの材料を使って考案した、ブレンドレシピをご紹介します!ベースの用土は、園芸の “万能用土”ともいわれる「赤玉土」(第1回参照)と、無機質の土を “生きた土”に変えてくれる「腐葉土」(同じく第1回参照)。

これに高品質の培養土「スーパーミックスA®(タネまき・育苗用土)」(第2回参照)に含まれる肥料分を元肥として利用します。

そこへ 、効果抜群の土壌改良材「バーミキュライト」(第3回参照)と「パワフルシリカ」(第4回参照)、そして今回ご紹介した「もみ殻くんたん」をブレンドします。

上から時計回りに「もみ殻くんたん(黒色)」「赤玉土(黄土色)」「腐葉土(こげ茶色)」「パワフルシリカ(灰色)」「スーパーミックスA(R)(タネまき・育苗用土)(茶色)」「バーミキュライト(赤茶色)」をブレンド

オリジナル培養土「万能タイプ」の配合レシピ

今回は、多くの植物がよく育つ「万能タイプ」の土をブレンドし、春の花の寄せ植えをつくります(撮影は2月)。

丸型プランター(8号サイズ相当)の寄せ植えをつくるため、4Lのオリジナル培養土をつくりました。一般的に、8号鉢の容量は約5~6Lとされていますが、実際に必要となる土量は、植物の大きさ、根鉢の量、鉢底石の有無などによって変動します(今回の寄せ植えでは、花苗の数が多く、根鉢の体積が大きかったため、実際に使用した土の量は約4Lとなりました)。

[オリジナル培養土の配合レシピ]

材料を全体的によく混ぜて、使用前に湿らせてから1~2日おくと、微生物の働きがより活発になります。

くんたんは全体の10%程度までが目安。多過ぎるとアルカリ性が強くなり過ぎてしまいます。

オリジナル培養土の分量例(参考)

材料 万能タイプ ハーブ全般
1L分量 配合
比率
1L分量 配合
比率
①赤玉土(小粒) 400mL 4 500mL 5
②こだわり腐葉土 300mL 3 250mL 2.5
③バーミキュライト 100mL 1 100mL 1
④くんたん
 (もみ殻くんたん)
100mL 1 100mL 1
⑤スーパーミックスA 50mL 0.5 30mL 0.3
⑥パワフルシリカ 50mL
(30~40g)
0.5 20mL
(13~16g)
0.2

※ハーブ類は排水重視の配合にするため、赤玉土を多めにするのがおすすめです。

今回は、「スーパーミックスA®(タネまき・育苗用土)」に含まれる肥料分を元肥として利用します。これに含まれる養分のリン酸は、赤玉土に吸着されると、植物の根から吸収されにくくなってしまうため、あらかじめ分量の腐葉土と混ぜておくと効果的に吸収されます!

「スーパーミックスA®(タネまき・育苗用土)」に含まれる肥料分を元肥として利用

オリジナル培養土づくりの手順

手順1

すべての材料を計量して容器に入れる

もみ殻くんたんは計量カップで量る

手順2

手順1が均等になじむよう、よく混ぜる

下からすくって、よく混ぜるのがポイント

手順3

材料が均等に混ざったら、水をたっぷりかけて1~2日寝かせる。これにより土中の微生物が安定し、「生きた土」で栽培できる

水をたっぷりかけて1~2日寝かせるとよい

植え付けの手順

手順1

鉢底にネットを敷く。底に穴がたくさんある鉢は、水はけがよいので鉢底石を使わなくても大丈夫。ネットの代わりにキッチンの水切りネットを使ってもよい。

キッチン用の水切りネットが便利

手順2

丸型プランターに半分程度の「オリジナル培養土」を入れる

土の量の目安は、容器の半分程度

手順3

なるべく根鉢を崩さないように、ポットから苗を取り出す

軽くポットをたたき、ひっくり返して取り出す

底の穴から指で押し出してもよい

手順4

植え付け中に迷わないよう、レイアウトをまず決めておくのがポイント。苗の根をあまりいじらないようにすると、植物を傷つけずに植え付けられる。

細かいところはピンセットで調整

手順5

「オリジナル培養土」を使った寄せ植えが完成!

よい土を使って、こだわりのプランターや花壇をつくりましょう!

「土づくり」の考え方

オリジナル培養土づくりは、カレーづくりに似ていると思いませんか? どちらも素材の選び方、手間のかけ方によって、仕上がりが変わります。赤玉土、腐葉土、バーミキュライト、もみ殻くんたん……と素材を一つ一つ吟味し、自分好みにブレンドする土づくりは、スパイスからブレンドする本格派カレーに似ていますね。

しかし、初心者の方には、スパイスのブレンドから始めるのはハードルが高いかもしれません。それならば、市販のカレールウに好みのスパイスを“ちょい足し”してアレンジ(園芸でいうと、ブレンド済みの培養土に赤玉土や腐葉土、元肥を加えて自分好みに調整)することからスタートすれば、ぐっと挑戦しやすくなりますよね。私は、どちらの方法も正解だと思います! 無理なく柔軟に、ご自身に合った形で土づくりをしてみてほしいです。

おわりに

土のことを知ると、プランターや花壇(自然の一部をそっと写し取った“小さなお庭”)との距離が、ぐっと近くなります。

土は、自然からの贈り物。難しく考え過ぎなくても大丈夫です。 土のしくみを知った皆さんは「土のソムリエ」であり、素材の個性を生かして配合を組み立てる「土のレシピスト」でもあります!

土や植物と、無理なく楽しく 自分らしいペースで関わり続けていくことは、私たちの「心のタネ」も豊かに成長させてくれます。いつか、必ず皆さんのタネも実りを迎えます。ぜひ、その喜びを味わっていただきたいと願っています。

本連載は、今回が最終回です。これまでご愛読いただき、ありがとうございました。土づくりから始まる、すてきな園芸ライフを楽しんでくださいね!

文:加藤恭子 写真:加藤熊三・サカタのタネ(一部提供)

山田朗子

園芸家・庭人(にわんちゅ)

山田朗子

やまだ・さえこ

自宅の庭づくりをきっかけに園芸・造園の世界へ。造園土木施工の専門教育課程を修了したのち、植木屋、造園の現場、バラやハーブ、寄せ植えの分野で実務経験を積む。自然をお手本としたナチュラルな植栽を得意とし、庭のお手入れ、寄せ植えなど、植物に関わる幅広い仕事に携わりながら、園芸講座の講師としても活躍中。肩書の“庭人”は、「“庭に関わる人”として、庭と人とをつなぐ」という園芸家としての原点に由来する。

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