文・写真
加地一雅
かじ・かずまさ
株式会社エクステリア風雅舎代表。1987年、苗の育成から個人邸の庭のデザイン、施工、メンテナンスまで行う風雅舎を設立し、現在に至る。草花が自然風に咲くナチュラルガーデンを啓蒙、普及されるべく奮闘中。
執筆者の加地先生は2017年12月にご逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。皆様の園芸知識向上にこの連載を役立ててほしいとのご家族様のご意向から、文章はご執筆当時(2016-2017年)のまま継続して掲載をさせていただくことになりました。時代を感じさせる部分があるとは思いますが、お含みおきの上ご覧ください。
【第10回】庭にコンテナを効果的に取り入れよう
2016/10/11
コンテナガーデンが人気です。手軽でどこにでもセットできるのが、人気の秘密でしょう。今回はコンテナをより効果的に見せるノウハウと風景への溶け込ませ方の話です。コンテナがより魅力的に映ること請け合いです。
-ポイント1- ウエルカムを表現する玄関先のコンテナ
コンテナを効果的に使うなら、まずは玄関先へ飾ろう
コンテナが一番実力を発揮するのは、玄関先でしょう。自宅の顔の部分であり、道行く人たちにも楽しんでもらえる、公共サービスができる場所でもあります。玄関先ですから歓迎の意味も込めて、コンテナ全体にウエルカムの雰囲気が漂うよう、明るさ、楽しさを表現したいものです。
植栽には何色を使っても構わないのですが、白や黄色の花を混ぜると明るく引き立って見えます。そして可能であれば、大きめのコンテナがおすすめです。なぜなら、花を長期にわたり元気に咲かせ続けるのに、十分な土の量が必要だからです。さらに、数鉢が組み合わさり寄せ鉢になると、かなり力を発揮して玄関先を彩ってくれるでしょう。
上の写真は事務所の玄関先のコンテナガーデンです。建物に向かって順々に腰高のテラコッタのコンテナを配置し、後ろと真ん中にブルーベリーや常緑ヤマボウシを植えて高さのあるボリューム感を出しています。下の写真は住宅の玄関先のコンテナガーデンです。華やかになるように5鉢の寄せ鉢にしました。黄色とブルーがお互いを引き立てあっています。
植物を選ぶ時は、まず玄関が東西南北どちらに向いているのか、日当たり具合をチェックします。その日照条件で育つ植物を選びます。そしてその中から表現したい植物を使うようにします。その逆は、育たない植物が混じる恐れがあるのでご注意ください。
-ポイント2- 庭の中のしつらえとしてのコンテナ
庭に雰囲気を醸し出すひと鉢を添えてみよう
コンテナガーデンはいろいろな表現ができます。小さなコンテナに小型の山草を植えて可憐さを楽しんだり、珍しい植物を植えて苦労して育てて、咲いた時の感動を味わったり、大きなコンテナでたくさん咲かせてゴージャスさを楽しんだりと、庭の中でしつらえとしてあしらった風景が展開できます。
例えば上の写真のように、コンテナはたくさん並べたらよい訳ではなく、飾る場所との関係性で決まるので、ひと鉢で十分な場合もあります。さらに下の写真では、しつらえとして事務所入り口のポストの脇に古びたイスを置いて、その上にアイアンのコンテナを配置しスノードロップを植えて、早春を楽しんでいます。
庭の中でコンテナはいろいろな役割を果たしてくれます。それぞれの場所に立って、ここにコンテナがあったらいいな、と感じたならば、ぜひ、そこにコンテナをしつらえてください。コンテナが入ることによって、雰囲気がグッとよくなりますよ。
下の写真は庭の雰囲気を変えたひと鉢です。白筋アマリリスの逸品は、じっくり楽しみたいもの。花の咲いたひと鉢がテーブル周辺の風景をキュッと引き締めています。その次の写真はペンションのウッドデッキの上にセットされた、斑入り葉のアイビーゼラニウムの鉢の例です。このひと鉢はアイアンのスタンドの上に置かれ、枝垂れながら赤い花をいっぱい咲かせ、一枚の絵になる風景をつくっています。
-ポイント3- テラスやデッキなどで育てて楽しむコンテナ
コンテナと置き場所を選んで、野菜も果樹も育ててみよう
コンテナは実用面でも役に立ってくれます。ハーブや野菜、果樹もしっかり育てられます。庭がなくとも、そこがテラスやウッドデッキなどの人工地盤であっても、コンテナは植栽を実現してくれます。
上の写真のようにウッドデッキを花で彩るにはコンテナが効果的です。ウッドデッキはコンテナをじかに置くと、鉢の直下部分が腐りやすくなります。写真では鉢置き台やスタンドを使って育てていて、問題ありません。高さが出ると、見やすくなり、しかも植物にとっては風通しもよくなり、元気に育ってくれます。
下の写真はハーブや野菜のコンテナの例です。1つ目は大きめの空き缶にハーブ類を寄せ植えしたコンテナです。ハーブはフレッシュなものをパッと使いたいものです。キッチンからすぐの場所にコンテナがあると便利ですね。
最後の写真は木製の大型コンテナの例です。地面から高い位置に植わっているので、しゃがむこともなく作業しやすくなっています。しかも植物は深く根が伸びるので、元気によく育ってくれます。柑橘(かんきつ)などの果樹も長い年月の栽培が可能です。このようにコンテナも鉢にとどまらず、板を使うと、自在に望む大きさや形に加工することができます。板はウリンなど高耐久性の材木がおすすめで、さらに内張りにシート材を張ると、コンテナをより長期に維持できると思います。
ただし、直射日光が最低4~5時間は当たらなければ植物が育ちませんので、コンテナの置き場所はよくチェックしましょう。収穫まで楽しむコンテナであれば、長期間の栽培となり地力が求められるので、質のよい培養土に植えなければなりません。もし古土を使うのであれば、良質の堆肥や腐葉土を混ぜて改良してから植えつけます。
コンテナでの栽培はいつでもどこでも、すぐに始められるガーデニングです。自分の感性を総動員して、コンテナのあるすてきな空間をつくってみませんか。
次回は「庭に樹木を上手に取り入れよう」を更新予定です。お楽しみに。