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【第3回】葉のトラブル① 虫に葉を食べられた

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第3回】葉のトラブル① 虫に葉を食べられた

2020/02/18

葉が食べられた症状は目立ちます。一番多いのはケムシ、イモムシと呼ばれるチョウやガの幼虫の被害で、被害周辺にケムシやイモムシなどの虫が見つかれば、この虫が食べたためと分かります。しかし、よく探してもそれらしき虫が見つからないということはありませんか? 食べられ方によって加害害虫が推測できます。

【目次】
被害1. 主に葉の縁から食べられている
 ●犯人:ヨトウムシ
   ヨトウムシの生態
   ヨトウムシの防除方法
   [ちょっと雑学]ヨトウムシの種類

被害2. 葉に穴が開いた(数mm~10mm程度の穴)
 ●犯人:ウリハムシ、キスジノミハムシなどのハムシ類
   ウリハムシ、キスジノミハムシの生態
   ウリハムシ、キスジノミハムシの防除方法
   [ちょっと雑学]親子で植物を加害

被害3. 葉が不規則に食べられている
 ●犯人:バッタ類
   バッタ類の生態
   バッタ類の防除方法

被害1. 主に葉の縁から食べられている

犯人:ヨトウムシ

ヨトウムシは、昼間は土中などに隠れ、夜間に活動して食害します。
ほとんどの野菜が被害の対象となるので、野菜類の大害虫としてよく知られています。家庭菜園では特に結球するキャベツやハクサイの被害が目立ちます。

ヨトウムシの被害にあったハクサイ。
被害が進行すると葉は食べ尽くされ、葉脈だけが残る無残な姿になる

ヨトウムシの生態

春の4~6月ごろと秋の9~10月ごろの年2回発生し、蛹の状態で土の中で越冬します。成虫は古い葉よりは若い葉の裏にまとめて卵を産み付けます。そして孵化後の幼虫は葉の表皮を残して葉肉部分を食べます。その部分を葉の表面から見ると、緑色の部分がなくなっているので透けて見えます。葉の裏には3~4mm程度の生まれたての幼虫が群生しています。若齢の幼虫は緑色で、脱皮を繰り返し、大きくなるにつれ灰褐色~黒褐色の体色になります。昼間は土の中に隠れ、夜間に活動して葉を食害するヨトウムシ(夜盗虫)になります。老齢幼虫は体長4cm程度まで大きくなり、成長するにつれ食べる量も多くなるため、被害が拡大します。

ヨトウムシの防除方法

葉の裏を調べて卵を探すのは大変です。見つけるポイントとしては、葉のところどころが透けたようになった葉には孵化後の幼虫がいる可能性が高いので、注意しましょう。また、成虫が産卵しないよう、トンネルを作り防虫ネットで侵入を防ぐのも有効です。(作り方は連載第2回参照)

防除薬剤は野菜類全般に使用できる「ゼンターリ(R)顆粒水和剤」が有効です。これは有機農産物にも適応している薬剤です。ただし、成虫になるとチョウやガになるケムシ、イモムシにしか効果がありません(ハチやハムシの中には幼虫の姿が似ている種類がいるので注意)。この薬剤は野菜類の収穫前日まで安心して使用できます。

[ちょっと雑学]ヨトウムシの種類

ヨトウムシにもいろいろおり、トウモロコシなどイネ科植物を食害するアワヨトウ、ヨトウムシと同様に多くの野菜を食害するシロシタヨトウ、ハスモンヨトウなどの種類もいます。その中でハスモンヨトウは背面の左右両側に黒斑紋があり簡単に見分けられます。

被害2. 葉に穴が開いた(数mm~10mm程度の穴)

犯人:ウリハムシ、キスジノミハムシなどのハムシ類

成虫ははねがあり飛んで逃げていきます。

ウリハムシはカボチャ、キュウリ、メロン、ズッキーニなどのウリ科野菜に被害を及ぼします。

キスジノミハムシはダイコン、ハクサイ、カブ、チンゲンサイ、コマツナなどのアブラナ科野菜に被害を及ぼします。

ウリハムシの被害にあったズッキーニ

ウリハムシ、キスジノミハムシの生態

ハムシ類は甲虫類でコガネムシを小さくした体形で体長2~10mm程度です。「幼虫が葉を食害する種類」と「成虫が葉を食害する種類」がおり、体の色もさまざまです。
ウリハムシは地域によってはウリバエとも呼ばれています。成虫は体長8mm前後の黄色い虫です。年1回繁殖します。成虫で越冬し、春に産卵して初夏ごろに土の中で孵化し、成虫となります。回りながら葉の表面を浅く輪状に食害し、1cm程度の円形の穴が開きます。多発すると葉がぼろぼろになります。

キスジノミハムシはノミのように飛び跳ねるためキスジトビハムシとも呼ばれています。成虫は体長2~3mmで、黒色で左右に黄色の帯状の筋があります。成虫で越冬し、年数回発生します。春から秋まで成虫が見られます。食害されると葉に1mm前後の小さな穴があきます。

ウリハムシ、キスジノミハムシの防除方法

両種とも見つけ次第、虫捕り網などで捕まえて捕殺します。飛んで移動してしまうので、市民農園など多くの人が家庭菜園を楽しんでいる場所では、トンネルを作って防虫ネットを掛けるようにしましょう。防除薬剤では「ベニカ(R)水溶剤」などの薬剤を、虫の活動が鈍い早朝にまいて退治します。

[ちょっと雑学]親子で植物を加害

チョウ目の害虫はケムシ、イモムシなどの幼虫のときは植物を食べますが、成長してチョウやガになってからは植物に害を与えません。ところが、ハムシなどの甲虫類は幼虫でも成虫でも植物に害を与えます。ウリハムシ、キスジノミハムシとも幼虫は土中で根を食害し、成虫は葉を食害します。

被害3. 葉が不規則に食べられている

若い葉が被害を受けやすく、“虫食い状態”といわれるように葉がところどころ食べられます。食べられた形や大きさもさまざまです。

犯人:バッタ類

飛び跳ねて移動し、キャベツ、ダイコン、オオバなどの植物を食害します。

バッタ類の生態

コオロギや、スズムシなどきれいな音色で鳴く虫もバッタの仲間です。自然界では植物の葉を食害しています。卵で越冬し、6~7月ごろに孵化します。小さいときは食べる量も少ないため被害は目立ちませんが、音色が聞こえるころになると被害が目立つようになります。

コオロギなどは夜に動き回りますが、昼間よく見かける種類は細長い体のオンブバッタです。親が子どもを背負っているような状態でいることが多いですが、実際はオスがメスの背に乗っている状態で動き回っています。

バッタ類の防除方法

見つけ次第、捕殺します。バッタ類の登録のある薬剤は少なく、アブラムシ、ケムシなど多くの害虫に登録のある薬剤を散布して様子をみます。

次回は「葉のトラブル② 葉に斑点ができた、葉が変色してきた」をお送りします。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供:住友化学園芸株式会社

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