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【第4回】葉のトラブル② 葉に斑点ができた、葉が変色してきた

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第4回】葉のトラブル② 葉に斑点ができた、葉が変色してきた

2020/03/17

順調に生育していたのに、いつの間にか葉に褐色などの斑点が付いている、葉の縁が変色してきた、葉の緑色があせてきたなどの症状です。そのまま放置すると斑点の数が増える、変色や退色が拡大して葉が枯れ、野菜そのものが枯れることもあります。

【目次】
被害1. 葉に斑点ができた、葉の縁から変色してきた
 ●犯人:多くは糸状菌(カビ)
   糸状菌の特徴
   糸状菌の防除方法
   [ちょっと雑学]病気になった葉は取り除いた方がいいの?
   [ちょっと雑学]売っている野菜は何で病気にかかっていないの?

被害2. 葉表面に小さな白い斑点ができ、葉の緑色があせる
 ●犯人:ハダニ、コナジラミ
   ハダニの生態
   ハダニの防除方法
   コナジラミの生態
   コナジラミの防除方法
   ハダニの被害とコナジラミの被害の見分け方
   [ちょっと雑学]遺伝子調査で防除薬剤が分かる

被害1. 葉に斑点ができた、葉の縁から変色してきた

犯人:多くは糸状菌(カビ)

どの野菜もこの種の病気にかかります。

〔代表的なもの〕
ナス…褐斑病、トマト…疫病、インゲン…褐紋病、ピーマン…斑点病、スイカ…炭疽病、キュウリ…べと病、イチゴ…じゃのめ病、ホウレンソウ…べと病、ネギ…黒斑病 など。

べと病(キュウリ)

じゃのめ病(イチゴ)

黒斑病(タマネギ)

炭疽病(ニガウリ)

斑点病(ピーマン)

糸状菌の特徴

植物に害を与える糸状菌は多く、梅雨時など湿度の高い時期に繁殖するので6~7月、9~10月ごろに被害を受けやすくなります。葉の中に侵入した菌糸が細胞を殺しながら繁殖するため、死んだ細胞の固まりが褐色などに変色した状態(病斑)として見えます。病原菌の種類や野菜によって、病斑が増えていくタイプと病斑が広がっていくタイプに分かれます。

糸状菌の防除方法

種類は少ないですが、糸状菌ではなく細菌によって葉に斑点を生じる病気もあります。ただ、発生初期で区別することは非常に難しいため、葉に病斑ができたら、まずは糸状菌が原因と考えて防除しましょう。もし数回散布しても病気が広がるときには、細菌に効果のある薬剤に切り替えます。植物の病気には殺菌剤を散布して防除しますが、1回散布しただけでは完治は難しいでしょう。4~7日間隔で数回まいて、病気の拡大を防ぎます。「ベンレート(R)水和剤」、「ダニコール1000(R)」などの薬剤は広範囲の糸状菌に効果があります。

[ちょっと雑学]病気になった葉は取り除いた方がいいの?

葉は光合成を行って養分を作る器官です。できた病斑は最後まで残りますが、少々の病斑なら取らないでください。葉の半分以上がおかしくなった葉は取り除いても構いませんが、できるだけ大切にしてください。

[ちょっと雑学]売っている野菜は何で病気にかかっていないの?

家庭菜園の野菜でも農家の野菜でも、同じように病気の原因になる糸状菌の胞子は風によって運ばれてきます。違うのは殺菌剤を散布する時期です。家庭菜園では病斑が現れてからまきますが、農家は病斑が出る前にまきます。降雨後は湿度が高くなり感染しやすくなりますので、降雨後に殺菌剤をまいて感染を防ぎます。

被害2. 葉表面に小さな白い斑点ができ、葉の緑色があせる

葉の裏面に寄生している虫が汁液を吸うときに葉緑素まで吸い取るため、葉表面からは小さな白い斑点に見えます。被害が拡大すると小斑点が増え、葉全体があせたようになり、枯れてしまうことがあります。

犯人:ハダニ、コナジラミ

ハダニはトマト、ナス、キュウリ、ダイズ、イチゴ、インゲンマメ、サトイモなど、多くの野菜を加害します。コナジラミも同様にトマト、ナス、キュウリ、カボチャ、ダイコンなど多くの野菜に寄生します。

ハダニの被害を受けたダイズの葉

ハダニの生態

成虫で体長0.5mm程度という赤色の小さな虫です。主に葉の裏に寄生しているので気が付かず、気付いたときには被害が拡大していることが多いです。おかしいと思ったら白い紙などを葉の下に入れて葉を軽くたたいてください。ごみなどが紙の上に落ちてきますが、その中に幼虫がいれば、たとえ0.1mm程度の大きさでも白い紙の上を動き回るときに気が付きます。

ハダニはクモの仲間なので糸を出すことができ、大発生すると葉と葉の間に糸を張って、巣を作るようにして生活します。成虫で越冬し、一年中活動しますが、夏の高温・乾燥時が大好きです。

ハダニの防除方法

ハダニは水に弱く大雨が降ると一時的に減ります。そのため、葉の裏に散水することはハダニの増殖を抑える方法として有効です。ただし、葉がいつまでもぬれていると病気にかかりやすくなりますので、葉が乾きやすい晴天の午前中に行うとよいでしょう。また、雑草が発生源になることもありますので除草も心掛けてください。

薬剤を使用するなら、「ダニ太郎(R)」などの成虫・幼虫・卵とハダニの全世代に効果のある薬剤を散布して退治します。ただし、ハダニは抵抗性が付きやすい害虫のため、1回しか使用できません。または、「アーリーセーフ(R)」(成分はヤシ油)や「ベニカマイルド(R)スプレー」(成分は水あめ)を使います。これらはハダニの口と鼻に相当する気門をふさいで窒息死させる作用のため、抵抗性は付かず、また食品系の薬剤のため、どの野菜にも安心して使用することができます。薬剤がかからなかったハダニは退治できませんので、かけむらがないように丁寧に散布することが必要です。

コナジラミの生態

コナジラミは黄色を好みます。そのため、黄色の粘着紙に成虫をおびき寄せて退治する方法もあります。コナジラミのように完全変態する害虫は、幼虫や成虫のときは薬剤で退治できますが、卵や蛹での退治は難しいです。そのため、繰り返し薬剤を散布します。長期間効果の続く「ベニカ(R)水溶剤」や「ベニカベジフル(R)スプレー」などの薬剤が使いやすいです。

コナジラミの防除方法

コナジラミは黄色を好みます。そのため、黄色の粘着紙に成虫をおびき寄せて退治する方法もあります。コナジラミのように完全変態する害虫は、幼虫や成虫のときは薬剤で退治できますが、卵や蛹での退治は難しいです。そのため、繰り返し薬剤を散布します。長期間効果の続く「ベニカ(R)水溶剤」や「ベニカベジフル(R)スプレー」などの薬剤が使いやすいです。

ハダニの被害とコナジラミの被害の見分け方

両害虫とも葉の裏に寄生し、汁を吸って被害を与えます。葉の表面から見た症状は一緒です。違いは、被害植物に触れたとき、白い小さな虫が飛び交うときはコナジラミの被害。葉の裏がきれいではなくモヤモヤしており、小さな白いかす(脱皮かす)や赤黒い虫が付いているときはハダニの被害です。

インゲンに寄生したナミハダニ。
クモのように糸を張るので、葉の裏に白いもやがかかったように見える

[ちょっと雑学]遺伝子調査で防除薬剤が分かる

最近はなんでも遺伝子レベルまで調べる傾向がありますが、害虫研究の世界でも起きてきました。例えばタバココナジラミという種類には、外見は同じでも薬剤に対する抵抗性が異なる種類が存在します。そのため、遺伝子を調べて防除薬剤を決めるということも起こっています。

次回は「果実のトラブル① 虫に果実・さやの中を食べられた、キュウリが変形する」をお送りします。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供: 住友化学園芸株式会社

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