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【第6回】継続は力なり~収穫までの管理(諸々編)~

【第6回】継続は力なり~収穫までの管理(諸々編)~

2019/05/28

種(タネ)をまく、あるいは苗を植えれば作業は終わりとはいかないのが作物の栽培の特徴なのかもしれません。日々の水やりはもちろんですが、栄養が足りなければ肥料をやり、茎が伸びれば支柱を立て、病気や害虫の予防や防除、除草などさまざまな作業が待ち受けています。ここは腕の見せどころと思えば楽しみでしょうが、地味で面倒な作業ともいえます。いずれにしてもこれらの作業なくして、最後に花を咲かせ、野菜を収穫するというビッグイベントはあり得ません。どうせやるならコツをつかんで楽に済ませましょう。今回はそんな作業のいくつかについてご紹介します。

しゃんとしなさいと言われても~支柱立て~

野生では大きな果実や花をつけることもなく自立できていた植物も、作物として大きな果実をつけるよう人に作り出された果菜類や、切り花用に栽培間隔を想定外に狭められて茎を細くされた草花などは、そのままでは自立できず栽培に支障を来たします。そこで長さ90~210cm程度の竹やスチール製の園芸用の支柱を立て、茎を結び付けます。つる植物は前回、ネットを張って支える方法をすでにご紹介しました。支柱の太さは、草花は直径11mm程度、果菜類は果実まで含めるとかなりの重さがあるので直径16mm程度のものを選ぶとよいでしょう。

1本仕立ての作物は単に支柱を1本立てて結び付けておけばよいのですが、畑に一定間隔で植えるトマトや、つる自体が巻き付いて伸びるインゲンなどは下の写真のような支柱の立て方をします。特に斜めに入れる筋交いの支柱をすることと、横向きの支柱にひもを巻きながら絡ませ縦の支柱を固定していく2つの作業を入れることで台風などが来てもびくともしない支柱を立てることができます。

畑での支柱の立て方の手順

①支柱を立てる位置を決める(トマトなどでは定植位置がそれになる)。
②縦支柱を片側から立てていく。
③反対側の縦支柱も立てる。
④縦支柱の交差部分に横支柱を入れる。
⑤支柱の交差部分を結んでいく(結び方は次の「支柱の結び方の手順」参照)。
⑥縦支柱よりも長めの支柱で筋交いをする。
⑦筋交いを結ぶ。
⑧横支柱の端からひもを巻くように絡め、縦支柱の交差部でひもを一周させ巻き進めていく。
⑨出来上がり。

ここでは支柱を上部で交差させ、そこに横串を差すように支柱を通し固定する合掌型になっていますが、縦2本の支柱を低い位置で交差させればナスやピーマンなどにも応用できます(茎を3本伸ばす3本仕立てでは横方向の支柱は必要ありません)。また、横の支柱からネットを垂らすことでウリ類のネット栽培にも応用できます。一定の規則で作ってあるので、解体も手際よく行えるメリットがあります。

それと、もう一つ大切なのが、支柱同士を結ぶ方法です。結ぶためのひもは環境保全には麻ひもなどがよいのですが、しっかり結べて安価なポリエチレン製のひもも重宝します。このとき、100円ショップなどで売られているものは紫外線ですぐに駄目になるので、スズランテープ(R)など丈夫なひもを選びましょう。結び方は下の写真の通りです。コツは支柱と支柱の間に割りを入れてしっかり締め上げることです。

支柱の結び方の手順

①ひもの準備はまず腕にひもを巻いていく。
②巻いたひもの一方を切ると結束に適した長さのひもが準備できる。
③縦支柱の支柱を結びたい位置にひもを2回巻きつけ内側にひもを通す。このときひもの一端は短めにしておく。
④ひもを引けば巻き結びができる。
⑤短いひもの上に横支柱を乗せ、横支柱の右にひもをかけていく。
⑥左側もひもをかける。
⑦このたすきがけを2回する。
⑧支柱と支柱の間のたすきがけしたひもの上からひもを巻いて「割り」を入れる。
⑨もう1回割りを入れる。
⑩割りの上から結ぶ。
⑪出来上がり。

優しく縛って~誘引~

植物体を支柱やネットにひもなどで結んだり、留めたりすることを誘引といいます。支柱を立てても肝心の作物本体を支柱に結び付けなければ意味がありません。茎を支柱に誘引する際に注意しないといけないのは、支柱は硬く、生身の植物は柔らかいということです。また、茎は成長に伴い太くなります。それらのことを考慮して、ひもなどが成長の妨げにならないよう、一般的には下の写真のように8の字を描くように誘引します。誘引の際のひもはポリエチレン製のものよりも麻などの天然素材の方が片付けた際にそのまま土にすき込むことができて便利です。

誘引の手順(写真はミニトマト)

① 茎にひもをかける。
② ひもを交差させて支柱へ8の字を描くようにひもの両端を持っていく。
③ ひもを支柱に1回回す。
④ ちょう結びをして誘引終了。

また、最近は簡単に留められ、再利用が可能なプラスチック製の留め具もあります。

留め具

枝を整えることで果実のつきがよくなるんです~整枝~

枝数を減らしたり、枝分かれを促したりすることで作物の生育を調節して収量を高めるための作業を整枝といいます。代表的な整枝にはわき芽かきと摘芯があります。わき芽かきは葉の付け根から出るわき芽を摘み取る作業をいいます。わき芽を取り除くことで枝分かれを抑え、必要な茎に養分を集中させることができます。例えばトマトは、わき芽を取り除いて1本の茎に果実を集中的につけて肥大を促します。

摘芯は、茎の先端の頂芽を摘み取ることで、一定以上の高さに草丈を伸ばしたくない場合、あるいはわき芽の成長を促したい場合に行います。例えば、ウリ科野菜は、葉のわきから出た子づるや孫づるに雌花がつきやすい性質があることから栽培の初期に親づるの頂芽を摘芯して、子づるや孫づるを伸ばします。同様にトルコギキョウなども花茎が伸び始めてきた初期に頂芽を摘み取ることでわき芽を伸ばして花数を多くします。

花や果実のつき方は、品目や品種ごとに異なるので着果(花)習性に従って整枝します。

摘芯(メロン)

整枝(わき芽かき)の手順(写真はトマト)

① わき芽をつまむ。
② 左右どちらかに曲げる。
③ わき芽が若ければ、これだけでわき芽は取り除くことができる。

植物だってご飯は毎日欲しいのね~追肥~

元肥の肥料分は1カ月程度で作物に使われ、あるいは雨水などと一緒に流れ出るなどして欠乏してきます。また、株が大きくなるにつれて必要な養分の量が増えてきます。これらの理由で肥料を後から補うことを追肥といいます。最近では一生分の養分を元肥に全て入れてしまう方法もありますが、ここでは一般的な追肥の施し方についてお話しします。

肥料に含まれる窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)などの成分は水に溶けて根の先の方で吸収されます。根は伸びているので、追肥は株元から離して施すのがポイントです。品目ごとに必要な量をタイミングよく施すことが大切です。

例えば固形肥料を施す際は、ただ表面にバラバラと施しても、肥料が転がったり、飛んでしまったり、また窒素分が空気中へ逃げてしまうなど無駄になることが多いです。そこで、追肥したら肥料は土と混ぜるようにします。畑では畝の片側や通路に肥料を施してクワなどで耕す中耕をすると、土中に空気が入るほか、表土周辺の根が切られ、新根が生えることで根端付近での肥料成分の吸収がしやすくなります。また、耕すことで除草の効果も期待できます。畑での追肥の施し方は、下の図のように栽培する作物や方法により異なります。

畑での追肥方法

① 畝の片側から畝面や肩や通路に施す。
  ダイコン、トウモロコシ、エダマメ、キャベツ、ブロッコリーなど、畝に1列に一定間隔の株間を取って栽培する作物は、1回目は肩に、2回目は通路に追肥を施す。
② 畝の両側から畝面や肩、通路などへ施す。
  トマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの果菜類で、1畝に2列ずつに植え付けていく場合、通路の両側から、成長とともに根が伸びるので、植え付け間もないころは株の周りに、2回目は肩の付近に溝をつくり施肥し、3回目は肩にといった具合に少しずつ株から離して施す。マルチを敷いている場合はマルチを剥がして施肥し、施肥後はマルチを戻す。
③ ベッド面にばらまく。
  タマネギや育苗時のネギなどは上からばらまき、土をふるいなどを使ってかけて覆土する。
④ 株間に施す。
  レタス類、キョウナ、チンゲンサイなどの葉菜類、カブ、ラディッシュなどの小型の根菜類は株間に施し三角ホーや棒などで肥料と表土を混ぜるようにする。

一方でコンテナ栽培の追肥は至って簡単です。基本は必要量をばらまき、土と混ぜ、水をやる、これだけです。

ちなみに液体肥料(液肥)は速効性はピカイチですが、土中に長くとどまってくれません。そこで液肥は、薄く希釈したものを水がわりに毎日施した方がよいのです。

コンテナでの追肥方法(写真はズッキーニ)

① 株元から離して肥料をばらまく。
② 棒などで肥料と土を混ぜる。
③ 最後に水やりをする。

一番お百姓さんの気分になれる作業かも~土寄せ(培土)・増し土~

土寄せ(培土)は株元に土を寄せる作業です。キャベツ、ブロッコリーなどは、成長に伴って株がぐらつくのを防ぎます。ダイコン、長ネギ、ジャガイモなどでは土を寄せることで収穫部分を大きくあるいは多くしたり、あるいは寒さ対策にもなります。他にも台風後に流された土を寄せたり、土でマルチや防虫ネットの裾を押さえたりするために行います。この作業にはクワや三角ホー(キツネグワ)を使います。

土寄せ(ジャガイモ)

コンテナ栽培では時間がたつと土が沈むので、必要に応じて土を足す増し土をすると新しい根が伸びて追肥の効果を高めることができます。長ネギでは増し土を数回行うと葉鞘が白く長く伸びコンテナでも立派な長ネギが作れます。

増し土(長ネギ)

雌しべに花粉が付かないと果実はできんのです~受粉・授粉~

植物(被子植物)の雌しべの先に花粉が付く現象のうち、風や虫などによって自然に起こる場合を「受粉」といい、人が行う場合は花粉を授けるので「授粉」といいます。低温期や梅雨時、施設栽培では訪花昆虫の活動が悪くなる、あるいは風が吹かないなど受粉しにくくなります。最近は環境の悪化によるミツバチなどの訪花昆虫の減少なども問題になっています。そのような場合に人が雌しべの先に花粉を付ける授粉を行えば確実に果実をつけることができます。

人工授粉(スイカ)

授粉は主にスイカ、メロン、カボチャなどのウリ科野菜、トマト、ナス、ピーマン類などのナス科野菜で行います。スイカ、メロン、カボチャでは、時間がたつと花粉の受精能力が低下するので午前9時ぐらいまでに授粉を完了させます。キュウリは受粉しなくても果実が肥大する単為結果の性質があるので、授粉作業は必要ありません。

また、トマトは花粉が空気中に舞って受粉する風媒もするので、下の写真のように支柱などを棒でたたくなど振動を与えることでも授粉させることができます。

振動による授粉(トマト)

受粉しないときは奥の手で~植物成長調整剤による結果~

トマト花房へのホルモン剤処理(トマト)

受粉しなくても結果させ、肥大させた果実を収穫するために、トマト、ナス、ブドウといった植物の花や蕾などに植物成長調整剤を処理することをホルモン処理といいます。トマトは極端な低温(13℃以下)や高温(32℃以上)では受精できなかったり、正常な花粉ができにくかったりします。この場合、振動による人工授粉も効果がありません。このような場合は1つの花房に2~3花咲いたら、規定濃度に薄めた4-CPA剤(商品名「トマトトーン」ほか)などの植物成長調整剤を噴霧します。このとき食紅を混ぜておけば赤色が目印になり、処理した花が判り分かります。

また、ナスは低温期に花粉形成が悪くなり、受粉しても受精せず単為結果するものの果実は大きくならず、がくだけが大きくなってしまい、果実が石のように硬くなる「石ナス」が発生します。このような場合も、植物成長調整剤を噴霧すると果実を肥大させることができます。

またジベレリンは、ブドウ果実の無種子化・果粒肥大促進、いわゆる種(たね)なしブドウの生産に欠かせません。

収穫物は厳選して~摘蕾・摘花・摘果~

パプリカの摘蕾(花)(第1花(A)と第2花(B)の開花節の花を全て摘む)

果菜類は、果実や子実がたくさんつくと株の勢いが弱まり収量が減ります。これを防ぐ目的で、蕾を摘む摘蕾、花を摘む摘花、それに若い果実を摘む摘果をします。ピーマンやパプリカ、キュウリなどは生育初期に株を充実させるために、それ以外の果菜類も含め、収穫する果実に栄養を集中させる、あるいは長く収穫するために栽培中継続して行います。

摘花・摘果は、花でも行います。続けて花を咲かせるため、開花の終わった花がらを、また果実がついてしまった場合にはそれも摘み取ります。

次回もお楽しみに。

JADMA

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