文・写真
三橋理恵子
みつはし・りえこ
園芸研究家。一年草・多年草をタネから育てる研究をしている。著書に『三橋理恵子の基本からよーくわかるコンテナガーデン』(農文協)、『イラストで学ぶ、はじめてのガーデニング』(角川マガジンズ)などがある。
※タネのまき時などは神奈川県横浜市における栽培に基づいて記載しています。
【第16回】観賞用野菜を花壇で使う
2016/04/26
今回はフラワーガーデンに使う野菜の話。個性的な野菜たちを花と一緒に植えて、観賞用として楽しむ方法だ。イギリスで10年以上前より花壇に野菜を積極的に使うようになってから、ひときわ注目を集めるようになった。花壇ではちょっと異質な素材だし、存在感もある。花壇の多様性を引き出すには絶好だ。野菜といっても種類は豊富。多くは葉と実に分けられる。
葉菜類は、主にカラーリーフの役割をする。私のイチオシは紫キャベツ。いつも「レッドルーキー」という品種を育てている。ハボタンに似ているがトウ立ちしにくく、より観賞期間が長い。なにより紫色の葉の表面が虹色に輝き、とても美しい。草花にはない草姿も花壇では目を引く。生育がよいと大きく育つので、下葉をかいて好みの形に仕立てている。
観賞に向く葉菜類の定番といえば、スイスチャードかもしれない。フダンソウの仲間だが、葉脈が赤色やピンク色、黄色に色づき、とてもカラフルだ。葉が赤銅色になるタイプもある。草花と寄せ植えにしてもいいし、スイスチャードだけ大鉢に植えても映える。
レタス類などサラダ用の野菜も、葉の形や色が豊富。花壇の前面などによく使われる。生き生きとした若い葉は生命感にあふれている。思わず「おいしそう」と声に出したくなる。
このほか私がよく植栽に加えるのが、ケール。もともとケールの葉は青みがかっているが、私が育てるのは葉が縮れている園芸種。質感も見た目もユニークで、とても育てやすい。昨年の秋もたくさんタネをまいて、この春のホワイトガーデンのアクセントに使っている。
コンテナでもカラーリーフ代わりに使える野菜は活躍する。私はふだん直径30cm以上の大鉢に、ルッコラやスイスチャードなどの葉菜類を植えている。庭の中央に置くと、なかなかすてきなグリーンとして庭を引き立ててくれる。フラワーガーデンといっても、花ばかりではバランスがわるく、葉ものは活躍の場が多い。ちょっと珍しいものが植栽に混じっていれば、魅力もそれだけ増す。観賞用といってももちろん、適用を守った薬剤の使い方をすれば、食用にもできる。食卓に並ぶ自家用野菜。これも育てるモチベーションを上げてくれる。
果菜類では、観賞価値のある珍しい品種のものがおすすめだ。探せば花壇のアクセントになりそうなものがたくさんある。例えばナスなら、白ナスや紫に白い斑の入るものなど。トウガラシはもともと観賞用の品種がたくさんあるが、私がよく使うのが「鷹の爪」。先がツンととがった赤い実が秋の花壇によく映えるし、最後には収穫もできる。果菜類は大型に育つものも多いが、花と合わせるので、草丈の伸びすぎるものや茂りすぎるものは向かない。例えばトマトを植栽に加えたいなら、わい性種がいい。
一般的には観賞用で、食用に向かないカラフル野菜もある。おもちゃカボチャがよい例だが、観賞用のキュウリもある。こちらは、スルスルとよくつるが伸びる。カラフルでいろいろな形の実がなって面白い。
話はそれるが、観賞用の葉もので、夏によく茂るのがサツマイモの園芸種のイポメア。葉がライム色や赤色だが、これも実は野菜。秋には地中でサツマイモができる。以前、花壇を片づけようと掘っていたら、大きなサツマイモが収穫できてびっくりしたことがある。
花壇で野菜たちを使う時は、花たちに添わせるようにする。そのため野菜として育てる時よりも、やや株間を狭くするのがポイントだ。やや小ぶりに育てたければ、早く植えずにポットで育ててから植えると草丈を抑えられる。タネから育てるなら、まきどきを少し遅くするとよい。
これらの野菜は、主に食用に売られているタネや苗だが、この中から観賞用のものを探すのも楽しみのひとつだ。私は園芸カタログのタネのページをめくる時は、草花だけでなく、野菜のページも入念にチェックする。あくなき探究心は野菜のフィールドにも及んでいる。
魅力的な観賞向きの野菜は、イタリア野菜に多い。タネも売られていて、いろんなタイプが育てられて楽しい。時折、野菜たちにナスタチウムやビオラなどの食用にできる花たちやハーブを合わせて、ポタジェ風に仕立てることもある。試したことのない植栽の組み合わせにいろいろトライしてみたい。これも次の花壇作りの原動力になっている。
※葉や花、実を食用とする場合は、タネ袋の説明をよく読み、食用と表記されていることをご確認のうえ、収穫してください。
次回は「しあわせな春花壇」を取り上げる予定です。お楽しみに。