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【第6回】果実のトラブル② 果実に斑点ができた、変色した、など

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第6回】果実のトラブル② 果実に斑点ができた、変色した、など

2020/05/19

前回に続き、家庭園芸で人気のトマトやキュウリなどに起こりやすいトラブルを挙げていきます。今回は果実に斑点ができたり、変色してしまったりする被害を中心に見ていきましょう。

【目次】
被害1. 果実に斑点ができる、変色する、腐ってしまった
 ●犯人その1:各種の斑点性の病気
 ●犯人その2:尻腐れ症
   尻腐れ症の防除方法

被害2. 果実の表面がかさぶた状になる、茶色に変色する
 ●犯人:ホコリダニ、アザミウマ類
   ホコリダニ、アザミウマ類の生態
   ホコリダニ、アザミウマ類の防除方法
   [ちょっと雑学]アザミウマのさなぎは動き回る!?

被害3. 果実がスポンジ状になる。マメが大きくならない
 ●犯人:カメムシ
   カメムシの生態
   カメムシの防除方法
   [ちょっと雑学]エダマメに悪さをするカメムシいろいろ

被害1. 果実に斑点ができる、変色する、腐ってしまった

犯人その1:各種の斑点性の病気

トマト、キュウリなどに多いのが各種の斑点性の病気です。本連載第4回目の「葉のトラブル②葉に斑点ができた、葉が変色してきた」にて、原因は多くの糸状菌と解説しました。これらの病気は、葉だけでなく果実にも起こり得ます。生態や防除方法は第4回の内容を参照してみてください。

犯人その2:尻腐れ症

ミニトマトでは現れにくいのですが、大玉トマトの成長点(先端のお尻の部分)が黒く腐ってくるので、初めて見ると上記の斑点性の病気のように思われます。しかし、発生原因は病原菌ではなく肥料成分のカルシウム欠乏によるものです。

尻腐れ症になったトマト

尻腐れ症の防除方法

発生した果実は取り除きます。カルシウムは、畑土や市販されている培養土には十分な量が含まれています。しかし、根が弱ってくるとカルシウムを吸収しにくくなるので、株元に敷わらなどをして根を保護します。応急処置として、「トマトの尻腐れ予防スプレー」など、カルシウムの入ったスプレー剤を葉に散布し、葉からカルシウムを吸収させます。

被害2. 果実の表面がかさぶた状になる、茶色に変色する

犯人:ホコリダニ、アザミウマ類

ナスの果実表面がかさぶた状になります。チャノホコリダニかアザミウマ類(ミナミキイロアザミウマが中心)のどちらかの被害です。

チャノホコリダニの被害を受けたナス

ミナミキイロアザミウマの被害を受けたナス

ホコリダニ、アザミウマ類の生態

ホコリダニはとても小さく、体長は0.2mm程度と、肉眼で見ることは難しいダニです。枯れ葉・枯死した植物や茶、クローバーなどに寄生して越冬します。多くの植物に寄生し、特に新芽部分を好みます。新芽に寄生すると、新葉は変形・萎縮し、成長点が芯止まりの状態になります。アザミウマは体長1~2mm程度の細長い虫です。葉に寄生しますが花を好み、果実も被害を受けます。最近はミナミキイロアザミウマなどの侵入害虫(外来種)の被害が目立つようになりました。汁液を吸って害を与えますが、他の吸汁性害虫と異なり、植物に傷をつけて吸うため、その部分が茶色などに変色して残ります。

ホコリダニ、アザミウマ類の防除方法

いずれも小さな害虫のため、虫の姿が確認しにくく、被害症状で判断することになります。一概には言えませんが、新葉部分が萎縮し、芯止まりの症状もあって果実がかさぶた状のときはホコリダニ。不規則に茶色に変色したり、ケロイド状になったりするときはアザミウマによる被害が多いです。防除薬剤は、ホコリダニには「モレスタン水和剤」、アザミウマには「ベニカ(R)水溶剤」などが有効です。

[ちょっと雑学]アザミウマのさなぎは動き回る!?

アザミウマは成虫が葉の中に産卵します。幼虫と成虫は葉や花や果実を加害しますが、さなぎは土中にいます。“卵⇒幼虫⇒さなぎ⇒成虫”と完全変態しますが、完全変態する他の害虫はさなぎのときは動き回りません。ところがアザミウマのさなぎは植物に加害することはないものの、動き回ることができるのです。

被害3. 果実がスポンジ状になる。マメが大きくならない

犯人:カメムシ

トマトやエダマメで発生します。

カメムシの生態

カメムシのサイズや体色は多種多様です。多くは六角形の虫で、触れると特有の悪臭を放ち、手に付くため「ヘコキムシ」などと呼ばれます。種類によって異なりますが、年1~3回程度発生します。秋に成虫が室内に飛び込んでくることがありますが、あれは越冬場所を探しているのです。普通は落ち葉の下や樹皮下、壁の隙間などで成虫のまま越冬します。春先から活動を始め、成虫、幼虫ともにトマトやエダマメの汁液を吸って加害します。果実が被害を受けると、その部分から腐ってきたり、へこんだりします。トマトでは汁液を吸われた場所が透けたようになります。エダマメではさやができるころに汁液を吸われると、さやの成長が止まって落下します。マメの肥大時期に汁液を吸われると、変形したマメや褐色に変色したマメになります。

カメムシの被害にあったミニトマト。中がスポンジ気泡のようになっており、外からは気泡の部分が変色してまだらに見える。

カメムシの防除方法

草丈が高くなるトマトでは無理ですが、エダマメでは寒冷紗などの防虫ネットを掛けるのが有効です。発生したら、「ベニカベジフル(R)スプレー」や「ベニカ(R)水溶剤」などの薬剤を散布して退治します。

[ちょっと雑学]エダマメに悪さをするカメムシいろいろ

エダマメのカメムシといえば、5mm程度の大きさの虫で、枝に数珠つながりのようにびっしりと付く、マルカメムシが目立ちます。マルカメムシは枝から汁液を吸っていますので生育は悪くなりますが、さやや中のマメには影響を与えません。体長が10~15mm程度のホソヘリカメムシ、イチモンジカメムシ、アオクサカメムシなどがさやを加害します。

次回は「果実のトラブル③ 果実にかびが発生した」をお送りします。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供:住友化学園芸株式会社

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