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【第10回】茎がしおれた、茎の色が変わり枯れてしまった

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも家庭菜園で多品目の野菜を栽培している。

【第10回】茎がしおれた、茎の色が変わり枯れてしまった

2020/09/15

今まで順調に生育していた野菜が、茎や根のトラブルによって、生育がなんとなくおかしくなり、葉がしおれたり褐変して枯れてしまったりします。茎や根のトラブルは、株全体が枯れるという致命的な影響を与えることも多いので注意が必要です。今回は茎の症状についてまとめました。

【目次】
被害1. キュウリやメロンの茎が変色した、割れた、茎葉が枯れた
 ●犯人:つる枯病/つる割病
  つる枯病/つる割病の特徴
  つる枯病/つる割病の防除方法
  [ちょっと雑学]いろいろな植物に悪さをするフザリウム菌

被害2. アスパラガスの茎葉 が枯れてしまった
 ●犯人:茎枯病
  茎枯病の特徴
  茎枯病の防除方法

被害3. トマトなどの茎葉が枯れてしまった
 ●犯人:疫病など各種の斑点病

被害4. トマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの茎が枯れた
 ●犯人:白絹病/菌核病

被害1. キュウリやメロンの茎が変色した、割れた、茎葉が枯れた

犯人:つる枯病/つる割病

キュウリやメロンなどウリ科の野菜によく見られます。

つる枯病のキュウリ(枯死株の地際)

つる枯病/つる割病の特徴

糸状菌(かび)によって起きるつる枯病やつる割病は、葉が白くなるうどんこ病同様、ウリ科植物の代表的な病害です。いずれも病気にかかった茎葉などの残骸に付着し土壌中に生存しています。

つる枯病は、降雨や水やり時の水や、土の跳ね返りによって病原菌が茎に付着して発病します。茎の地際部が常に濡れている状態のとき、例えば梅雨期などの多湿な条件下で被害が多発します。葉も感染し、灰色~褐色の斑点を生じ、病斑が広がるとV字形の大型斑点になります。

つる割病の病原菌はフザリウム菌です。酸性土壌や窒素成分を多く与えたときに発病しやすくなります。病原菌は根から侵入します。被害当初は、日中は葉がしおれるものの夕方には回復するため、水不足と勘違いしますが、数日後には褐変して枯死してしまいます。

つる枯病/つる割病の防除方法

つる枯病、つる割病とも土壌中に病原菌が残りますので、被害を受けて枯れた残骸は放置せず、畑から持ち出して処分します。また、発生した場所ではウリ科植物の連作は避けてください。

つる枯病対策は、降雨時などの土の跳ね返りを防ぐために敷わらを株元に施し、株元が乾きやすいようにします。地際部の茎が被害を受けやすいので日ごろから注意して観察します。茎の一部が変色した初期ですと、病斑部を削り取って「トップジン(R)Mペースト」という薬剤を塗布します。葉や茎には「トップジン(R)M水和剤」や「ベンレート(R)水和剤」を散布します。

つる割病は傷ついた根から病原菌が侵入しますので、根が腐らないように高畝で育てる、センチュウや虫によって根が傷つけられないように注意します。発病後、初期のうちでしたら「ベンレート(R)水和剤」を株元周辺の土にまきます。

[ちょっと雑学]いろいろな植物に悪さをするフザリウム菌

つる割病の病原菌であるフザリウム菌にはたくさんの種類があります。その種類によって、寄生植物と病名が異なります。キャベツなどアブラナ科植物では萎黄病、トマト・ナスなどでは萎凋病、エダマメなど豆類では立枯病や根腐病と呼ばれています。これらについては、次回の第11回で詳しく説明します。

被害2. アスパラガスの茎葉が枯れてしまった

犯人:茎枯病

多くの野菜で発生します。アスパラガス栽培をしているとよくかかりますが、発病初期での対応がポイントです。

茎枯病のアスパラガス

茎枯病の特徴

糸状菌(かび)によって起きます。高温多湿の状態が続くと発病しやすく、梅雨が始まる6月から11月ごろまで発病します。発病初期は茎に水染みのような斑点ができ、それが拡大して全体が枯れてしまいます。特にアスパラガスは草丈が高く、茎が弱いため風などで倒れやすく、倒れた茎葉は土に付着するなど濡れた状態が続くので注意が必要です。一度発生すると茎に病原菌が残り、翌年も発生しやすくなります。

茎枯病の防除方法

アスパラガスは毎年収穫できるので、水はけの悪い場所には植えないか、水はけがよくなるように土壌改良してから植えます。前述した茎に水染みのような斑点ができ始めた初期のうちですと「ダコニール1000」「ベンレート(R)水和剤」を散布することで簡単に退治できますので、日ごろから注意して観察してください。

また、窒素成分過多だと軟弱に育つので、肥料にも気を付け、茎が倒れないように支柱などで支えてください。病気に気が付かず、病気が進行して枯れた茎は切り取って焼却します。冬季は枝が枯れますが、発病した株は地上部に出ている茎をバーナーなどで焼いて越冬病原菌を退治します。

被害3. トマトなどの茎葉が枯れてしまった

犯人:疫病など各種の斑点病

第4回の「葉のトラブル② 葉に斑点ができた、葉が変色してきた」で、多くの糸状菌によって葉の斑点や変色のトラブルが起きると説明しましたが、葉だけでなく茎も被害を受けます。その部分は茶褐色から黒褐色の病斑ができ、病斑が茎を一周すると道管などが侵され、水分の移動ができなくなり、病斑の上部の茎葉が枯れたりします。
防除の際は、葉だけでなく茎まで丁寧に薬剤を散布してください。

疫病が発病したトマトの茎

被害4. トマト、ナス、ピーマン、キュウリなどの茎が枯れた

犯人:白絹病/菌核病

トマト、ナス、ピーマン、キュウリ、メロン、フキなどの茎が枯れたり、株元に白いかびがまとわりついたりする症状が見られます。両病害とも第7回で説明した通りです。白絹病は、地際部に接した果実や茎が被害を受け、菌核病はさらに接していない果実や茎まで被害を受けます。

白絹病で地際部に白い菌糸が発生したナス

次回は「病原菌による根と地際のトラブル」をお送りします。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

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