文
望田明利
もちだ・あきとし
千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花を栽培している。
【第2回】葉に斑点が出たり、変色したりする(害虫編)
2021/01/19
今回は、植物の葉に寄生して汁を吸い、悪さをする虫についてお送りします。
【目次】
被害. 葉に針を刺したような白や黄色の小さな斑点ができて、増えて大きくなる
●犯人その1:ハダニ類
ハダニの生態
ハダニの防除方法
●犯人その2:コナジラミ類
コナジラミ類の生態
コナジラミの防除方法
[ちょっと雑学]名前が変わったコナジラミ
●犯人その3:グンバイムシ
グンバイムシの生態
グンバイムシの防除方法
被害. 葉に針を刺したような白や黄色の小さな斑点ができて、増えて大きくなる
各害虫とも葉裏に寄生して汁を吸います。これらの害虫の被害症状は同じです。虫が葉の汁を吸うときに葉の葉緑素まで吸ってしまうため、白色や黄色の小さな斑点ができます。それが次第に広がっていきます。
●犯人その1:ハダニ類
ハダニはほとんどの植物に寄生します。見分け方は被害植物の葉裏がすっきりきれいになっておらず、白いもの(脱皮かす)や赤いもの(成虫)が付着してもやもやとした見た目になっていることです。被害が進行すると葉が黄変したりして枯れることもあります。
ハダニの被害を受けたパンジー(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)
ハダニの生態
ハダニはクモの仲間で、糸を出し、葉裏をもやもやさせます。幼虫の大きさは0.1㎜、成虫は0.5㎜程度。赤色系が多いことからレッドスパイダーとも呼ばれます。卵から幼虫に成長し、数回の脱皮を経て成虫になり、成虫の状態で越冬します。雄と雌がいますが、雌が交尾して産卵すると雌が産まれ、交尾せずに産卵すると雄が生まれます。水に弱く、夏の高温乾燥する時期が繁殖適期です。そのため、室内や軒下など雨が当たらない場所は被害を受けやすいので、注意が必要です。
小さくて気付きにくい害虫ですが、葉裏がもやもやするような症状が見えたら、葉の下に白い紙を置いて葉を軽くたたいてみてください。葉裏のごみと一緒に紙に落ちてきます。0.1㎜の幼虫でも動くのが見えるので、簡単に気付けます。
ハダニの防除方法
ハダニは水に弱いため、夕立などの強い降雨があると成虫・幼虫は減ります。とはいえ、いつも葉裏に散水していると、葉がぬれていることが多くなり病気にかかりやすくなってしまいます。葉裏に散水するときはすぐ乾くように晴れている午前中に行うとよいでしょう。ただ、卵は防除できません。卵を防除する場合は「ダニ太郎(R)」などの殺ダニ剤を使います。
ハダニの被害を受けたグラジオラス(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)
ハダニは害虫の中では抵抗性が付きやすい虫です。卵・幼虫・成虫を一度に退治する「ダニ太郎(R)」などの殺ダニ剤をよく効くからといって、同じ薬を続けて使用すると効果がなくなります。各植物、年に1度しか使用できないように制限されています。汎用性のある「マラソン乳剤」や「ベニカ(R)乳剤」などの殺虫剤もハダニに効果があります。物理的に窒息死させる「アーリーセーフ(R)」などの薬剤を使用してもよいでしょう。散布するときはかけむらがないように葉裏まで丁寧に散布してください。
●犯人その2:コナジラミ類
ポインセチア、キク、ヒマワリ、クレマチス、フクシャ、ゼラニウム、ランタナなど多くの草花類に寄生します。被害植物に触れると白いハエのような虫が飛び交います。
コナジラミ類の生態
以前はアオキコナジラミ、ツツジコナジラミ、ツバキコナジラミなど庭木の害虫でしたが、1970~80年代にアメリカからポインセチアの穂に付着して侵入したタバココナジラミ、オンシツコナジラミが草花・野菜の害虫として拡大し、被害も多いです。
コナジラミは完全変態する虫ですが、成虫は若い葉を好み、そこで産卵します。そのすぐ下の葉には幼虫、さらに下の葉にはさなぎが寄生します。30℃以上の高温に弱く、20℃台が繁殖に適しています。一部東北地方でも成虫が戸外で越冬する報告もありますが、寒さにも弱くハウス内などで越冬します。
コナジラミの防除方法
成虫や幼虫には薬剤を1度散布すれば退治できますが、卵やさなぎは退治できないので、4~7日間隔で数回連続して散布します。「ベニカ(R)水溶剤」などの薬剤がよく効きます。第1回で書いたように、アブラムシ同様に成虫は黄色を好むので、粘着紙作戦は有効です。
こちらの記事も参考にしてください。
[ちょっと雑学]名前が変わったコナジラミ
平成元年に高知県で見つかったタバココナジラミ。当初は従来のタバココナジラミの新系統とされましたが、異なる新種とされ、シルバーリーフコナジラミと命名されました。しかし、その後紆余曲折があり、現在はタバココナジラミバイオタイプBという名前に戻りました。系統別にアルファベット順にAから付けられ、バイオタイプBより薬剤抵抗性の強い系統が、平成17年に見つかり、タバココナジラミバイオタイプQと呼ばれています。場合によっては遺伝子を調べて、使用薬剤を決めることもあります。
●犯人その3:グンバイムシ
グンバイムシはキク、ツツジ類、サクラなどに寄生します。被害植物の葉裏に点々と黒いものが付着しているのがその特徴です。
グンバイムシの生態
成虫は相撲の行司が持つ“軍配”に似ているため、グンバイムシという名が付いています。成虫の体長は5㎜程度で半透明のはねを持ち、やに状の黒いふんを葉裏に付着させる習性を持っているため、葉裏は点々と黒く汚れていきます。成虫が葉の組織の中などに卵を産みます。ふ化した幼虫は、何回か脱皮して成虫になります。主に成虫で冬を越しますが、卵の場合もあります。
グンバイムシの防除方法
薬剤に対しては弱い虫ですので、代表的な「スミチオン(R)乳剤」や「マラソン乳剤」などの薬剤を葉裏まで丁寧に散布します。
サクラの被害葉(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)
次回は「葉が変色して斑点ができる、枯れる」についてお送りします。お楽しみに。
注釈
防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。
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