私はこれまで、多くの植物や花を見てきました。植物好きの私にとって、それらはどれも興味深く、愛すべき存在です。
その中でも印象に残っている花の一つがウンナンボンテンカです。花は白色で、中心部が濃いマゼンタ色にぼかし状に染まり、その鮮やかな色彩とコントラストは見事でした。
しかし、花は美しいのですが、茎葉とのバランスがあまりよくありません。観賞植物として見ると、どこか惜しい印象も受けます。天は二物を与えないものなのでしょうか。

チャノキ
雲南省昆明から直線距離で約500km、勐海(もうはい)という地域にチャノキCamellia sinensis(ツバキ科ツバキ属)の原生を見に行った時のことです。そこは北緯21度20分付近、北回帰線の内側に位置する熱帯の高原で、ミャンマーとの国境に接し、多民族が暮らす地域です。

勐海南糠山(もうはいなんのざん、Menghai Nankuangshan)は標高約2000mのなだらかな山塊で、大きな照葉樹が生い茂り、その適度な日陰の下に2〜3mの茶樹が自然に繁茂していました。私が見た茶樹の生育標高は1500mほどだったと思います。
高木によって生み出される半日陰の環境。そして低地の熱い空気が山を登る際に冷やされ、生じる霧。茶樹は、こうした環境の中で生育しているのです。

上の写真に見える低木のほとんどが茶樹であり、葉の大きさや皺(しわ)、色合いなど、さまざまなタイプの茶樹が原生しています。薄暗い照葉樹林の中で大きな木が倒れるなどで林道が作られると、地面に陽光が届きます。すると茶樹よりさらに小さな樹木や草本が生育する環境が生まれます。

ウンナンボンテンカ
ウンナンボンテンカUrena lobata var. yunnanensis(ウレナ ロバータ バラエティ ユンナネンシス)アオイ科ボンテンカ属。漢字では「雲南梵天花」と書きます。属名のUrenaは「とげを持つ」を意味するラテン語に由来し、この植物の果実にあるカギ状のとげを指します。ボンテンカ属は、アオイ科の中では7種ほどが知られている比較的小さな属です。

ハイビスカスを小さくしたようなウンナンボンテンカの花容は、直径3cmほど。その色合いと中心部のぼかしが日の丸のような配色でとてもかわいらしいお花です。
アオイ科の花が1日しか持たないことはよく知られていますが、ウンナンボンテンカの花も同様に短命です。まさに「花の命は短い」のでした。

なぜウンナンボンテンカをはじめ、アオイ科植物の花は短命なのでしょうか。
それは、多くのアオイ科植物が熱帯から亜熱帯に原生し、昆虫など花に介在する生物の密度が高いことが主な要因と考えられます。
また、暑い環境では花から水分を失いやすくなります。そのため、みずみずしい花を長時間維持するのではなく、短時間で機能を終える戦略をとっているのでしょう。

ウンナンボンテンカは、1〜2mほどに育つ落葉低木です。この地域は乾期と雨期に分かれた気候で、乾期には主茎だけを伸ばします。一方で、雨期になると周囲の植物が爆発的に伸長するため、それらと競争しながら枝を伸ばします。その結果、このような木姿になるのだと考えられます。

ウンナンボンテンカの母種は、オオバボンテンカUrena lobataアオイ科ボンテンカ属です。
種形容語のlobataは、「裂片のある」「浅く裂けた」を意味するラテン語で、葉の形状に由来すると考えられます。
ボンテンカ属は、アフリカの乾性疎林帯に分布の中心があり、その地域を起源とする一群とされています。そこから熱帯地域へ広がり、やがて汎熱帯(はんねったい)に広がったと考えられています。

その一系統であるウンナンボンテンカは、雨期と乾期がある照葉樹林帯の雲南省や四川省、中国、ミャンマー国境地帯へ進出しました。そして、花径約2cmとやや小型の花は、中心部が濃紫色を帯び、淡紅色から濃いローズへのグラデーションが特徴的な、変種として分化したのです。

一方で、ヤノネボンテンカという植物があります。ヤノネボンテンカPavonia hastataアオイ科パボニア属の植物です。
花だけを見ると、ウンナンボンテンカによく似ています。しかし、ヤノネボンテンカは、アオイ科に属しながら南米のブラジル、ボリビア、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイに原生している、ボンテンカ属とは別系統で進化した植物であることを覚えておきましょう。
ヤノネボンテンカは耐寒力があり、日本では関東南部まで帰化するほど丈夫な低木です。
次回は、アオイ科フヨウ属のお話です。お楽しみに。