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【第6回】葉が膨らむ、葉にコブができるなど変形する

望田明利

もちだ・あきとし

千葉大学園芸学部卒。住友化学園芸研究開発部長として、家庭園芸薬品や肥料の開発普及に従事。現在は園芸文化協会理事、家庭園芸グリーンアドバイザー認定講習会講師などとして活躍中。各種園芸雑誌等に病害虫関係の執筆多数。自らも自宅でさまざまな種類の草花を栽培している。

【第6回】葉が膨らむ、葉にコブができるなど変形する

2021/05/18

今回は、葉が膨らんだり、コブができてしまう、草花・花木の美観を損ねる症状を引き起こす病害虫について解説します。

【目次】
被害1. 葉が膨らむ、葉にコブができる
 ●犯人その1:もち病
  もち病の特徴
  もち病の防除方法
 ●犯人その2:アブラムシ
  アブラムシの生態
  アブラムシの防除方法
 ●犯人その3:タマバチ
  タマバチの生態
  タマバチの防除方法
  [ちょっと雑学]フシアブラムシとタマバチのコブの見分け方

被害2. 葉にイボ状の突起物ができる
 ●犯人:タマバエ
  タマバエの生態
  タマバエの防除方法

被害1. 葉が膨らむ、葉にコブができる

●犯人その1:もち病

サツキ、ツバキ、サザンカやツツジ類に発生します。若い葉や新芽が肉厚になり、餅のように不整形に、または円形に膨れてくる病気です。

もち病に感染したツバキ(写真提供:住友化学園芸株式会社)

もち病の特徴

春先(4~6月ごろ)に発生することがほとんどですが、まれに秋にも発生することがあります。もち病に侵された葉は、初めは光沢のある緑色、淡桃色などをしていますが、次第に白いかびに覆われて干からびてきます。大発生することはありませんが、異様な形態になるため、非常に目立つ病気です。

もち病の防除方法

白いかびは胞子です。発病したと分かったら、白くなる前に摘み取って焼却します。前年に発病したら予防として、新葉が出るころに「サンボルドー」などの銅水和剤を散布します。

●犯人その2:アブラムシ

アブラムシは名前の付いている種類だけで700種類以上。ほとんどのアブラムシは新芽や新梢、あるいは葉裏に群生して汁を吸い、加害します。中には葉を巻いたり、虫コブをつくる種類もいます。例えばサクラの葉の表面に長さ20~30㎜、幅7㎜前後の淡黄色~淡紅色をした楕円形の袋状の虫コブができているとします。これはサクラフシアブラムシによるものです。美観が損なわれることが一番の被害です。

サクラフシアブラムシの被害を受けて虫コブができたサクラ(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

アブラムシの生態

アブラムシの一生は、春から秋までは、雌の成虫は卵ではなく雌の幼虫を直接産み、雌だけで繁殖を繰り返します。また、群生状態で密度が高くなったり、温度変化などで生育環境が悪くなったりすると、有翅のアブラムシを産み、移動します。温度が低くなると初めて雄が生まれ、芽の基部などに産卵して越冬します。

サクラに害を及ぼすサクラフシアブラムシの例では、葉裏に寄生したサクラフシアブラムシが汁液を吸い、その刺激により葉に異常が起こり、コブができます。コブのでき始めからしばらくはアブラムシはコブの中で生活していますが、5月に入るとコブから出て他の植物(ヨモギなど)に移動します。

アブラムシの防除方法

春先、新芽が出そろった状態のときに薬剤散布を行い、コブができないように予防します。コブができ始めると薬剤がかかりにくくなるので、葉の中に薬剤が浸透する「GFオルトラン(R)水和剤」などが効果的です。直接虫に薬剤がかからなくても、中から薬剤を吸えば退治できます。薬剤を吸った時点で退治できますので、予防としても使用できます。効果は2週間程度持続します。

サクラコブアブラムシの被害を受けたサクラ(写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集)

オカボノクロアブラムシが寄生し、虫コブができたアキニレ(写真提供:住友化学園芸株式会社)

●犯人その3:タマバチ

5~8月にかけて、バラの葉裏に大きいもので10㎜程度の断続的なコブをつくります。コブは、初めのうちは淡緑色で次第に赤っぽくなってきます。バラハタマバチがつくった虫コブです。タマバチといえば、クリに寄生するクリタマバチがよく知られていますが、最近はバラでの被害も目立つようになりました。

バラハタマバチがつくったコブ(写真提供:住友化学園芸株式会社)

タマバチの生態

多くの種類のタマバチは、植物の芽や葉などにコブなどをつくって暮らしています。赤くなったコブは1カ月ほどで落下しますが、幼虫はその中でコブの内壁を食べて生育し、そのまま越冬します。春先にさなぎからふ化した成虫は3㎜程度の小さなハチです。

タマバチの防除方法

虫コブを見つけたら取り除いて焼却します。春はアブラムシ、ハバチなど他の害虫も多く発生しますが、「スミチオン(R)乳剤」、「ベニカ(R)水溶剤」などの薬剤を定期的に散布してそれらの害虫を駆除しておくと、バラハタマバチも一緒に防除できます。

[ちょっと雑学]フシアブラムシとタマバチのコブの見分け方

両方ともコブをつくる虫です。フシアブラムシとタマバチ、どちらの虫でできた虫コブかは簡単に区別することができます。コブを切ったときに中が空洞だとフシアブラムシの被害、詰まっていたらタマバチの被害です。フシアブラムシの場合、コブのでき始めはコブの中に生息していますが、1~2カ月後には他の植物に移動していなくなります。タマバチの場合は虫コブの中が詰まっており、でき始めたころに中心部分を切ると中にウジムシ状の幼虫がいます。

被害2. 葉にイボ状の突起物ができる

犯人:タマバエ

さまざまな植物に寄生しますが、キク科の草花に寄生することが多く、この場合は葉に3~4㎜程度の細長いイボ状の突起物ができる症状が現れます。キクヒメタマバエが寄生したためで、茎が被害を受けると曲がってしまいます。

タマバエの生態

成虫は体長2㎜程度のコバエ、ふ化した幼虫は葉に侵入して突起物をつくります。一年中発生するといわれていますが、春先の4~5月ごろの被害が目立ちます。タマバエにもいろいろな種類がいます。バラの例では、コブはつくりませんが新葉が折り畳まれたまま葉が開かなくなる症状を引き起こすバラハオレタマバエという種類がいます。

タマバエの防除方法

タマバエは弱々しいコバエです。ヨモギなどキク科の雑草が発生源といわれているので、雑草除去に気を配ってください。4~5月ごろはアブラムシなど他の害虫も発生しますので、それらの害虫退治を行っていれば一緒に退治できます。

次回は「茎が折れる、垂れ下がる」です。お楽しみに。

注釈

防除薬剤は病害虫の効果だけで記載しております。使用の際は適用作物をご確認の上、ご使用ください。

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